太田俊明[2021]『沢村栄治 裏切られたエース』,文藝春秋(文春新書1300) 沢村栄治の球は,本当に“ホップする球”だったのか――沢村の儚く短い人生とともに,ここに焦点を当てた伝記。これを証明するために,著者の検証方法が,褒める意味で,実にネチっこい。検証結果はさておき,著者の学生時代の野球生活で,3回“ホップする球”を打席で見てきた経験が,分析に説得力を持たせている。 栄治の妻・優に関するエピソードに関しても,一人娘の美緒さんに直接インタビューしてきたところが,興味深い。取材の年月が「2020(令和2)年9月」と書かれているので,コロナ禍の間隙を縫って,愛媛県松山市まで足を運んだのだと思…