元禄16年3月8日。夕暮れ頃、紙屋利兵衛が14、5になる僕を用事で東の方へ遣わした。七間町通り、杉ノ町と桜之町の間で町人が多く集まり、大人も子どもも群れていた。この者たちがこの僕を捕らえて散々に叩いていたぶった。僕はかろうじて帰って伏せってしまった。そのため他の小僧と六尺(下僕)1人を遣わすと、又人が集まって来て小僧をいたぶった。六尺はこのいたぶった男を肩に乗せ、馳走所の辺りまで連れて来たが、2、30人が追いかけてきて六尺とともに叩いて帰って行った。利兵衛向いの町奉行同心坂武兵衛の僕がこれを見ていた。このことを武兵衛に告げると、すぐに利兵衛を呼んで尋ねた。利兵衛は確かに叩かれたけれどどちらが悪…