一人居《ゐ》て 眺めしよりは 海人《あま》の住む かたを書きてぞ 見るべかりける 須磨と都‥ 離れ離れになっていた時に描いた源氏の絵を見た紫の上 (源氏の君に by 紫の上) 〜私 一人 都に残って嘆いていた時よりも、 海人が住んでいる干潟を 絵に描いていたほうがよかったわ 【第17帖 絵合 えあわせ】 夫人は今まで源氏の見せなかったことを恨んで言った。 「一人居《ゐ》て 眺めしよりは 海人《あま》の住む かたを書きてぞ 見るべかりける あなたにはこんな慰めがおありになったのですわね」 源氏は夫人の心持ちを哀れに思って言った。 「うきめ見し そのをりよりは 今日はまた 過ぎにし方に帰る涙か 中…