「どうしてだれが私に言ったことかも覚えていないのだが、 あなたのほうの大臣がこのごろほかでお生まれになったお嬢さんを引き取って 大事がっておいでになるということを聞きましたがほんとうですか」 と源氏は弁《べん》の少将に問うた。 「そんなふうに世間でたいそうに申されるようなことでもございません。 この春大臣が夢占いをさせましたことが噂《うわさ》になりまして、 それからひょっくりと自分は縁故のある者だと名のって出て来ましたのを、 兄の中将が真偽の調査にあたりまして、 それから引き取って来たようですが、私は細かいことをよく存じません。 結局珍談の材料を世間へ呈供いたしましたことになったのでございます…