色に出して見せないのであるが、 源氏はそのほうを見た時に、 夫人の心の平静でないのを知った。 「もう着る人たちの容貌《きりょう》を考えて 着物を選ぶことはやめることにしよう、 もらった人に腹をたてさせるばかりだ。 どんなによくできた着物でも物質には限りがあって、 人の顔は醜くても深さのあるものだからね」 こんなことも言いながら、 源氏は末摘花《すえつむはな》の着料に柳の色の織物に、 上品な唐草《からくさ》の織られてあるのを選んで、 それが艶な感じのする物であったから、 人知れず微笑《ほほえ》まれるのであった。 梅の折り枝の上に蝶《ちょう》と鳥の飛びちがっている 支那《しな》風な気のする白い袿《…