父は骨董収集が趣味で、私は子供の頃から古い食器に囲まれて育ってきた。 私たち家族が日常に使っていた食器の多くはそれなりの価値があったのだと思う。しかし父はたとえそれらを子供の私たちが壊しても叱ったり、残念がったりすることは決してなかったのである。 “形あるものは壊れていくものだから仕方がない”、彼はそう話して淡々としていたが、でも私たちが物をぞんざいに扱うとき、彼は私たちを厳しく叱った。彼の場合それは物を大事に扱うことを私たちに教えたかったという意味もあったのだろうが、それよりも子供たちに美しい身のこなしを身につけさせたいという気持ちの方が強かったような気がする。 人の一つ一つの所作から、その…