奈良県桜井市、山の辺の道の山裾に静かに佇む庵がある。玄賓庵(げんぴあん)と呼ばれる真言宗の寺は、石畳の参道と白壁に囲まれた門が印象的で、門をくぐれば日常の喧騒が遠のき、凛とした空気が流れている。 中学・高校が真言宗の宗教学校だったので、ちょっと親しみを覚える。 平安時代の高僧、玄賓僧都(げんぴんそうず)が修行を重ね、晩年を過ごした場所と伝えられている。玄賓は河内国弓削氏の出で、桓武・嵯峨天皇に信任されるほどの人物だったが、権勢や俗事を嫌い、三輪山の麓に隠棲した。一族から道鏡のような権力僧が出たことを恥じ、世を離れて修行に専念したと上田秋成は記している。 玄賓の庵はもともと三輪山の檜原谷にあった…