喫茶店を舞台にした漫画は、たいてい店のほうが動かない。カウンターがあり、扉があり、誰かがそれを開けるまで一話が始まらない。『珈琲いかがでしょう』は、その順番をひっくり返すところから出発する。店が客を待つのではなく、店のほうが街に出ていって、人のいる場所に車を停める。 目印はタコのマークだ。移動珈琲屋の名前も「タコ珈琲」。珈琲の店として思い浮かべる佇まいからは、この一点ですでに少しずれている。木彫りの看板でも豆の絵でもなく、タコである。 店主の青山一は、注文を受けてから豆を挽く。相手を見て、その人に合った一杯を淹れる。版元の紹介文がわざわざ「一杯ごとに」と書き添えているとおり、ここに作り置きはな…