金を散ずるは易く、金を用ゐるは難し。金を用ゐるは易く、人を用ゐるは難し。人を圧するは易く、人を服するは難し。 大町桂月の筆による。 短いながらも、登張竹風に「国文を経(たていと)とし漢文を緯(よこいと)として成ってゐる」と分析された、桂月一個の特徴的な文体を、よく表徴したものだろう。 先日の記事に盛り込もうかと思ったが、ついに適当な場所がなく、お蔵入りを余儀なくされた。 で、改めて「蔵」の中を見廻すと。――どうもこういう、いずれ使おうとぶち込んだまま、ついに機会を見出せず、いたずらに時を重ねてしまった標語詩句の類というのが、結構な数に上っている。 このまま後生大事に抱えていても、ついに日の目を…