清廉居士、糞真面目、単純馬鹿、自粛厨、野暮天、潔癖症的正義漢――。 呼び名は多岐に及ぼうが、ここでは敢えて「確信犯予備軍」と、そういう区分けをしてみたい。 実に厄介な連中だ。 昭和五年の七月である、久米正雄が大衆向けに麻雀指南を施す運びと相成った。ラジオを通じて、電波に乗せて、『麻雀と人生』と銘打った斯道の講義を試みたのだ。 宣伝に凝っただけあって、前評判は上々である。 放送開始時刻たる、六日の午後六時にちゃんとラジオの前に座れるように多くの中年男性が予定調整に勤しんだ。 ところが前日、すなわち五日午後八時。局の電話が鳴り響き、応対すればどうだろう。 「久米の野郎を殺してやる、首を洗って待って…