古橋文乃のケース 朝起きると、やはり、いつもよりも特別な朝のように感じた。 今朝は、卒業式の朝、だ。月並みだが、長いようで短かった高校三年間の最後の日。感傷が少しもないと言えばウソになる。さて、濃淡はあったのか、と問われると。高校一年生、二年生だって、たくさんの思い出があるものの。やはり、高校三年生の一年間の濃密さには、敵わないだろう。そんなことを考えながら、ばたばたと朝の準備をしていると、お父さんに今日の卒業生代表の答辞がんばれよ、と声をかけてもらった。ロールパンをもごもごと食べながら、わたしはとびっきりのウインクとVサインで返す。 パンを牛乳で流し込むと、慌ただしく家を後にする。お父さんに…