小さな頃、母に連れられて訪れた公園。 まだ薄暗い早朝、木々の枝には色とりどりの提灯が飾られ、 甘い香りが漂っていた。 それは、桃の節句を祝うための飾り付けだった。 幼い私は、鮮やかな桃の花に目を奪われた。 ピンク色の花びらは光を受けて輝き、 まるで宝石のようだった。 私は母の手に抱かれ、その花びらをそっと触った。 柔らかい感触と甘い香りに、心は喜びでいっぱいになった。 母は、そんな私を見て微笑んだ。 「これが桃の花よ。女の子の節句のお祝いなの。」 「ママ・・・。」 「そうあなたの名前と同じ名前。桃の花よ。」 その日以来、桃の花は私にとって特別な存在となった。 毎年、桃の節句が近くなると、 あの…