色違いは持て囃される。 みんな奇妙なのが好きだ。 明治十五年の晩夏、北海道増毛郡別苅村にて、ひとりの漁夫が白いナマコを引き揚げた。 白皮症とは独り哺乳類のみならず、棘皮動物に於いてさえ観測されるものらしい。たちまち大騒ぎになった。 抑々からして造化の神の悪ふざけにより誕生(うま)れたみたいな形状(かたち)をしているのがナマコ。 (Wikipediaより、ナマコ) ただでさえわけがわからないのに、かてて加えて雪をも欺く白さとあってはもう、もはや、一周まわって神々しさすら感ぜられるに違いない。 当時の相場からいって、干しナマコの一斤が、だいたい五十銭であった。 ところがたった一匹の白いナマコが出現…