「大災害を扱った作品」の第四弾は、柘植久慶『近未来ノベル 東京大地震2023』(PHP文庫、2012年)。東京湾直下型地震と房総沖プレート型地震が連動して起こり、東京湾に10メートルを超える大津波が発生します。想定外の事態が次から次へと起こるなかでの人々の行動とは? 主人公は設定されておらず、さまざまな状況下における多くの人たちの悪戦苦闘が描かれています。 [おもしろさ] 人々の狼狽と恐怖 本書の特色は、東京を中心とした「多くの地域で非常に多くの人たち」を登場させ、彼らが直面する大地震・大津波の恐ろしさ、被害が拡大していくなかでの人たちの恐怖心・行動を浮き彫りにしている点にあります。安楽純・首…