第3話:貸金庫番号526番 東京帝都銀行・本店営業部。地下1階、貸金庫室――。 そこに座る貸金庫番_笹倉博史は、今日も静かに顧客が映るモニターを眺めていた。地味な仕事。だが、彼は知っている。ここに潜む"異常"を。 貸金庫番号526番。ここの利用状況が、どうにも引っかかっていた。 原則、貸金庫を開けるのは本人か、事前に登録された代理人だけ。カード、暗証番号、そして専用の鍵――この三つが揃わない限り、開けることはできない。厳格なルール。厳重なシステム。 だが、526番は原則を逆手に取り、本人になりすまし、何人もの人が利用する。 同じ男が二度続けて来る。その次は、まったく別の男が来る。二度続けて来る…