第4話:貸金庫番号871番 東京帝都銀行・本店営業部。その地下にある貸金庫室――。 そこに今日も静かに座るのは、貸金庫番・笹倉博史。定年後も嘱託としてこの地下を預かる、誠実一筋の男である。 数ヶ月前のある日、彼はその姿をモニター越しに見た。帽子を深く被り、眼鏡で顔を隠した女性が、貸金庫番号871番を利用していた。 当初、笹倉はただの“雰囲気のある人”くらいにしか思っていなかった。しかしその日、ふと彼女が帽子を脱いだ瞬間――その姿がモニターに映し出された。 「……?」 誰もが知る国民的女優だった。 舞台に、映画に、連続ドラマ。華やかなスポットライトの下に生きてきた、完璧なまでの美貌と演技力。 笹…