イラスト・北谷凜 いつのまにか「あの本くらい読んでおかなきゃ」というせりふを聞かなくなった気がする。戦前戦後を通じて人々の憧れと気後れをかき立ててきた「教養」は、どこへ行ったのか。 ■知の対話へ、いまこそ読書 大澤聡さん(批評家) 本を読むことで教養を形成するという価値観は、近代だからこそ成り立っていたのかもしれません。 インターネットによってあらゆるものが可視化された現代では、世界は無限に広がっていて、全てを把握するなんて無理だと事前にわかってしまっています。 しかし手に入る情報が限られていた時代には、必読リストを読破すれば世界の全てがわかるはずと思い込めました。冊数が限られ、頑張ればゴール…