咲きてとく 散るは憂《う》けれど 行く春は 花の都を 立ちかへり見よ 王命婦(おうみょうぶ)が東宮に変わって代作した歌🪷 〜咲いたかと思うと すぐに散ってしまう桜の花は悲しいけれども 再び都に戻って来て春の都を御覧ください。 【第12帖 須磨 すま】 咲きてとく 散るは憂《う》けれど 行く春は 花の都を 立ちかへり見よ また 御運の開ける時がきっとございましょう。 とも書いて出したが、 そのあとでも他の女房たちといっしょに悲しい話をし続けて、 東宮の御殿は忍び泣きの声に満ちていた。 一日でも源氏を見た者は 皆不幸な旅に立つことを悲しんで惜しまぬ人もないのである。 まして常に源氏の出入りしていた…