おととい、何気なく本棚から「無常の使い」(石牟礼道子、藤原書店)を手に取った。購入したが頁をめくることはしていなかった。 23名の亡くなった方への弔辞になるのか、贈る言葉になるのか、故人との思い出になるのか、それらを集めた本である。 弔辞や哀悼文というのは、書いた人の人柄がよく滲んでくるものだと思う。私は好んでこの種の文章を読む。書いた人の死生観がにじみ出てくるし、亡くなった方のそれとの通い合い、響きあいに共鳴する。また故人や親族を慮ってか、言葉遣いが丁寧で細やかであることが多い。言葉が過剰にならず、過不足なく練った文章が多いことも好感が持てる。 石牟礼道子のこの本も、石牟礼道子から見た故人の…