【源氏物語716 第22帖 玉鬘16】 やっとおとどが口を開いて、 「奥様はどうおなりになりました。 長い年月の間夢にでもいらっしゃる所を見たいと 大願を立てましたがね、 私たちは遠い田舎の人になっていたのですからね、 何の御様子も知ることができません。 悲しんで、悲しんで、 長生きすることが恨めしくてならなかったのですが、 奥様が捨ててお行きになった姫君のおかわいいお顔を拝見しては、 このまま死んでは後世《ごせ》の障《さわ》りになると思いましてね、 今でもお護《も》りしています」 おとど の話し続ける心持ちを思っては、 昔あの時に気おくれがして知らせられなかったよりも、 幾倍かのつらさを味わ…