介護の現場にいると、「譲る」という行為を日々目にします。席を譲る、食事の順番を譲る、言葉を譲る、思いを譲る――。 一見すると些細な場面の積み重ねですが、そこには人間の深い優しさや、互いを思いやる心が確かに存在しています。 けれど、「譲ること」って、いつも簡単にできることではありません。 たとえば、職員同士の連携がうまくいかなかったり、時間に追われて気持ちに余裕が持てなかったりすると、「どうして私ばっかりが譲らなきゃいけないの?」という気持ちが顔を出します。私自身、そんな思いに飲み込まれそうになるときがあります。 けれど、ある日、こんな場面に出会いました。 ある入居者様同士のトラブルがありました…