「あいつは、まだ狂ってるのか」緑色の山高帽をかぶった小人がいった。 「ちゃんとした一人格ではないな」そう灰色の男がこたえた。「しかしまあ、奴はどこかにはいる。それはまちがいない」 *** 何におびえているのか? 自身の影に、自分でつくりだした混乱に、である。人間はいつのまにか浪費しつづけなければ生きていけないようになってしまった。欲望が文明をそだて文明が欲望を加速させ、欲望は永久機関のようにふるまい、何か大切な、とっておかないとならないものが、どんどん消費されて、あとには何ものこらない。 いっぽうで、動植物は消費はしてもかわりに何かしら生みだして、それをサイクルにする。われわれはこのサイクル化…