亡《な》き影や いかで見るらん よそへつつ 眺《なが》むる月も 雲隠れぬる 父帝の昔のままのお姿が幻に見えた。その時の源氏の君の歌 〜亡き父上は どのように御覧になっていらっしゃることだろうか 父上のように思って見ていた月の光も 雲に隠れてしまったよ 【第12帖 須磨 すま】 父帝の御陵に来て立った源氏は、 昔が今になったように思われて、 御在世中のことが目の前に見える気がするのであったが、 しかし尊い君王も過去の方になっておしまいになっては、 最愛の御子の前へも姿を お出しになることができないのは悲しいことである。 いろいろのことを源氏は泣く泣く訴えたが、 何のお答えも承ることができない。 …