双子 パウル・クレー私の部屋の壁には、この絵が長い間かかっている。ほかにも、ピカソのピエロとか、ルオーのピエロとか、クレーの天使像とかがあるが、この絵は唯一特別な存在だ。絵の中の二人が、私と兄以外には見えないからだ。兄は認知症で、もう幼児のようになっている。若いころには、色々な面で面倒を見てもらった。その恩義は一生忘れない。それだけに不憫で仕方がないのだが、この絵を見ていると、ふたりで今も一緒に生きているという実感が湧く。クレーはまるで、「人間という存在は、常に“二つでひとつ”である」という真実を、静かな、でも、嵐の中を共に歩むような情景で描いている。「双子のカルマ」とは、二つの魂が、互いの成…