嫌いではないけど、そんなに好きでもないものが「さかな」です。 食卓に魚料理が並ぶ率が高かった子供の頃。 海に近い町に暮らしていたので、魚の鮮度がバツグンでした。 懐かしいのは贔屓の魚屋さん。 母が毎日のように大将お勧めの魚を買うもんだから、母と魚屋のご夫婦は旧知の友人のようでした。 今日は良いのが上がったよ!と電話をもらうこともあれば、店頭で「今日はこれいいよー、これ最高にうまいよ!」と女将さんが言えば、「じゃあそれ半身は刺身、残りは塩焼きで」なんて、魚を前にピンポンのような小気味よい会話が飛び交っていたものです。 そこは、黒いゴム長を履き、黒いゴム製の長いエプロンをして、威勢よく魚をさばいて…