小説家(1920年(大正9年)〜1995年(平成7年)) 青森市生まれ。 京都帝国大学卒業。 1948年(昭和23年) デビュー作『刺青殺人事件』が江戸川乱歩の推挙により「宝石選書」の1冊として出版され、日本探偵作家クラブ賞第2回長編賞の候補となる。1950年(昭和25年)『能面殺人事件』で第3回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)長編賞受賞。
三尺の墓:高木彬光 1958年(昭33)東京文芸社刊。 1961年(昭36)12月、雑誌「小説倶楽部」臨時増刊号に「三尺の墓」のみ再掲載。 高木彬光の生み出した探偵のうち最も有名なのは神津恭介だが、別の私立探偵、大前田英策の活躍する作品も少なくない。大前田という苗字は江戸時代の上州(群馬)の有名な侠客、大前田英五郎に由来し、その子孫だという。(それ以上の詳細は控える) 表題作の「三尺の墓」の他に「二十五歳の赤ん坊」など5つの中短篇を収める。血筋を反映して人情に篤い大前田の個性を軽妙なタッチで描いている。広い意味での「身代わり」トリックが頻用されている。また凡人からすれば一見何事もなく結着したと…
白鬼屋敷:高木彬光 1958年(昭33)桃源社刊。 江戸の荒れ果てた屋敷に隠された海賊の財宝をめぐる伝奇小説。口入れ屋の津乃国屋に寄食する浪人神崎安兵衛は夜道で若い女を黒頭巾の男から救う。女の身元は不明のまま、その懐中に持っていた二枚の黄金銭が多くの勢力から狙われているのに気づく。商人に身をやつした大泥棒、悪知恵の旗本、幻術使いの美剣士、妖艶な女賊、八丁堀の与力など大勢が入り乱れる争奪戦となる。その相関図だけでもかなり入り組んでいた。からくり屋敷の仕掛けのネタは伝奇小説に頻繁に使われるが、大抵は抜け穴とか地下牢など月並みな効果しか出てこない。この作品では主人公の剣の腕前が優れてはいるものの、敵…
死神博士:高木彬光 1950年(昭25)5月~ 雑誌「少年少女譚海」連載。 1951年(昭26)偕成社刊。 高木彬光の生み出した名探偵神津恭介(かみつ・きょうすけ)の活躍する少年少女向けの探偵活劇。ある夜に大学病院の外科部長が謎の女によって拉致され、死んだばかりの人間の脳髄を蝋人形に移植するという手術を強要される。この最初の設定からもSFじみた悪魔的発想を感じさせる。これを発展させると死神博士の命令に絶対服従するロボット軍団のような蝋人形たちがうごめくはずなのだが、物語の途中からは薬品による生身の人間の精神コントロールへと手法が変化していく。少年少女たちの活躍も盛り込まれ、怪人の身代わりや変身…
悪魔の口笛:高木彬光 1952年(昭27)7月~1953年(昭28)7月、雑誌「少女世界」連載。 1960年(昭35)ポプラ社刊、少年探偵小説全集第4巻所収。 戦後創刊された少女向け雑誌「少女世界」に連載された。この時期は少年少女向けの読物の全盛時代であり、文豪も大衆作家も探偵作家もこぞって普通の作品の他に子供向けの物語を次々に書いていた。 高木彬光の生み出した名探偵神津恭介(かみつ・きょうすけ)がここでも活躍するが、謎解きよりも探偵活劇だった。離島に隠された海賊の秘宝の在りかを示す地図を追い求める謎の怪人Xの一味との抗争。その離島で育ったヒロインの少女は同居する叔母夫婦とともに危機にさらされ…
~"首なし"ならぬ"胴なし"~ 高木彬光 新装版『刺青殺人事件』光文社 刺青殺人事件新装版 posted with ヨメレバ 高木彬光 光文社 2013年10月08日頃 楽天ブックスで探す Amazonで探す hontoで探す ebookjapanで探す あらすじ 主要登場人物 特徴 この小説に向いている人 この小説に向いていない人 まとめ 追記①この小説が好きな方にオススメ 人形はなぜ殺される あらすじ 野村絹枝の背中に蠢く大蛇の刺青。艶美な姿に魅了された元軍医・松下研三は、誘われるままに彼女の家に赴き、鍵の閉まった浴室で女の片腕を目にする。それは胴体のない密室殺人だった――。謎が謎を呼ぶ事…
東京の暑さもいっかな治まらない8月下旬、一昨日(27日)は池袋サンシャイン劇場に「呪縛の家」のお芝居を観に行きました。 原作は、高木彬光の探偵小説。名探偵・神津恭介が活躍する長編作品を、ジャニーズジュニアの方々が出演してお芝居にしたものですね。監督は、これまでもミステリー作品を朗読劇に仕立てて一定の評価を得て来た、野坂実氏。私はとある関係者の方にチケットを調達していただき、ありがたくも素晴らしい席で鑑賞させてもらいました☆ 久しぶりどころか、もう20年近く(?)足を向けていなかったサンシャイン・ビル。JR東池袋駅から地下通路で直結するようになったことも知らなかった。便利になりましたね~。池袋駅…
皆さん、最近本を読んでいますか? わたしはおじさんなのでKindleなどタブレットだとなかなか読み進みづらく、もっぱら紙の本を好みます。小学生の頃は学校で一番沢山本を読むくらいの多読派でした。主にSF系が多く空想癖のある夢見がちな少年だったわけです。 わたしの今年の目標の一つに、「できるだけ本を読む」というものがありますが、今年は冊数でいえば15冊程度しか読めていません。買ったり、図書館で借りたり。最近は本を読む習慣のある人は減ってきているようですが、読書には次のような効果があります。 語彙力、文章力が養われる。教養や知識が身につく、仕事に役立つ知恵を得られる、想像力が豊かになる、コミュニケー…
1957年(昭32)9月~1958年(昭33)5月 雑誌「読切俱楽部」連載 1958年(昭33)東京文芸社刊。「女自雷也」「魔像往来」「妻恋坂の決闘」など7篇所収。 高木彬光の剣客物の時代小説。江戸の両国橋の袂で自分の命を売るという商売をする浪人・青貝進之丞は目に留まらぬ早業の剣の使い手である。話を切り出す依頼人はいずれも何らかの企みを抱いており、進之丞をうまく言いくるめて加担させようとする。単なる殺しの請負では何の面白味もない。その騙しのからくりを読み解くのが話の本筋になる。それにしても簡単に人を斬殺してしまうのはあまり気味のいい感じはしない。いかに人生に対して虚無的であれ、人が生き続けるに…
1955年(昭30)東京文芸社刊、タイトルは『復讐鬼』 1960年(昭35)浪速書房刊、『神秘の扉』 神奈川県の海沿いの田舎町に建つ広荘な洋風建築の松楓閣に暮らす富豪の朝比奈家に次々に起きる失踪事件。古文書の整理に雇われた秘書、群司の眼を通して丁寧に語られるその不気味さに満ちた屋敷の空気は迫真的に感じられる。 目次の見出しを紹介したから即ネタバレだと非難するのは過敏過ぎる気がするが、この作品は明らかに黒岩涙香の2つの傑作「幽霊塔」と「白髪鬼」の骨格を借用したことがわかる。いずれも江戸川乱歩によってリライトもしくは改作されたもので、この高木作品は言い方が悪ければ「三番煎じ」になる。あるいはオマー…
本作「人形はなぜ殺される」は「りら荘殺人事件」「獄門島」と並ぶ日本古典推理小説の名作という噂に間違いのない傑作でした。「顔のない死体」「見立て」「アリバイ」等、様々な要素のある推理小説です。 「日本三大名探偵」の一人である神津恭介の推理小説を初めて読みました。1955年の小説と70年近く前の推理小説です。時代背景のギャップはありますが、文章は読みにくいとは感じませんでした。三人称の作者の地の文が「この後、あのような凄惨な事件が起こるときは誰も知るよしがなかった」(意訳)のような熱く仰々しいのはご愛嬌。 本作は神津恭介が最も苦戦した事件の一つのため、神津恭介の天才名探偵っぷりは味わえなかったのが…
(本書のトリックのほか、S・S・ヴァン・ダイン、ジョン・ディクスン・カー、横溝正史の代表長編のトリックを明かしていますので、未読の方はご注意ください。) かつて、我が国の本格ミステリといえば、横溝正史の『獄門島』(1947-48年)と高木彬光の『刺青殺人事件』(1948年)が双璧だったように思う。 それは確かに、日本が世界に誇る奇想ミステリとして、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』(1934年)、夢野久作の『ドグラ・マグラ』(1935年)、中井英夫の『虚無への供物』(1964年)という破格の三作があったが、本格ミステリとしては、横溝、高木に加えて、坂口安吾の『不連続殺人事件』(1947-48年)で…
編集 9月25日誕生日の全国35万人の皆さんおめでとうございます (拙句) 男郎花 野性の味と臭ひあり 雅舟 【花】オトコエシ(オミナエシ科) 【花言葉】野性味【短歌】山の家の人訪ねゆく車窓よりオトコエシ雪のように咲く見ゆ 黄色のオミナエシ(女郎花)に似ていますが、オトコエシは白くてたくましい感じがします。友人を訪ねるバスの車窓から、真っ白に咲いているのが見えました。 【季語】 男郎花【俳句】 はしなくも気丈といはれ男郎花 今井 君江 月山の空のまろさやをとこへし 小宮山 勇 うすやみに高さのありてをとこへし 小原 啄葉【三行詩】女郎花・男郎花 レディーファースト 男女共同参画・お花畑 【万葉…
引用元:moviewalker.jp ストーリー・解説 登場人物・キャスト 感想 予告 ストーリー・解説 「ミッドサマー」「ヘレディタリー 継承」の鬼才アリ・アスター監督と「ジョーカー」「ナポレオン」の名優ホアキン・フェニックスがタッグを組み、怪死した母のもとへ帰省しようとした男が奇想天外な旅に巻き込まれていく姿を描いたスリラー。 日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボーは、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想…
十月も駒込での開催となります。日時:10月13日(第ニ日曜日)午後2時より場所:豊島区駒込地域文化創造館第四会議室(東京都豊島区駒込2-2-2【4階】)読書会テキストは 『人形はなぜ殺される』高木彬光/光文社文庫 他 人形はなぜ殺される (光文社文庫) 作者:高木 彬光 光文社 Amazon
103.高木彬光『人形はなぜ殺される 新装版』(光文社文庫) →〈高木彬光コレクション〉。校正用初版本の加筆修正を採った決定版。「罪なき罪人」「蛇の環」を併録。二階堂黎人による巻末エッセイ、山前譲による解題。人形はなぜ殺される 新装版 高木彬光コレクション (光文社文庫)作者:高木 彬光光文社Amazon
本書は先月「神津恭介への挑戦」を紹介した、高木彬光の「恭介平成三部作」の第二作。前作で東洋新聞の社長令嬢清水香織が登場し、恭介を伊東の別荘から意見現場に引きずり出すようになったとの設定である。前作ではあまり目立たなかった香織自身の捜査活動だが、本書(1993年発表)では十分な活躍を見せてくれる。 というのも、彼女自身が第一の事件の現場に居合わせ、犯人を追いかけていくのだから。東京のDホテルではその日、このホテルチェーンのオーナーでもある財閥河島家の長男幸一の結婚披露宴が行われていた。新婦は香織の大学時代の友人裕美、大学卒業後モデルの仕事をしていたスタイルの良い美人だ。幸一は10歳ほど年上で、バ…
(ドラマ),伊藤蘭,岸本加世子,南果歩,夏樹静子(原作),井沢元彦(原作),斎藤澪(原作)販売会社/発売会社:(株)ベストフィールド(TCエンタテインメント(株))発売年月日:2020/09/30JAN:4571317713618【中古】 平成・女の事件シリーズ コレク【この商品の詳細を楽天で確認】取り扱いショップブックオフ 楽天市場店 ■ISBN:9784309417905★日時指定・銀行振込をお受けできない商品になりますタイトルカチカチ山殺人事件 新装版 伴野朗/著 都筑道夫/著 戸川昌子/著 高木彬光/著 井沢元彦/著 佐野洋/著 斎藤栄/著ふりがなかちかちやまさつじんじけんおとぎばなし…
●『復讐鬼』 高木彬光 偕成社 読了。 扉には「大デューマ原作」とある。ダルタニヤン物語の第二部を、高木彬光が子供向けに分かりやすくリライトしたものである。大きめの活字で約三百ページの本なのだが、完訳は文庫版で三巻になるというから、かなり省略されているはずである。第一部を読んだことはないけれども、本書の記述によれば、第一部でダルタニヤンと三銃士とが稀代の悪女ミラディを成敗した。その息子モードントが親の仇として復讐を誓い、ダルタニヤン達を付け狙っているというのが、題名の謂れである。 クロムウェル軍との戦いで窮地に立たされているチャールズ一世を救うべく、イギリスに渡って活躍するダルタニヤン一行。一…
X上の記録 こういう流れで。安彦先生のイエスは何度読んでも味があるというか考えさせられるんだけど、ユダとのやりとりめっちゃ好き pic.twitter.com/0Q4XnT6hKF— IngaSakimori/人工知能戦争2035 (@IngaSakimori) August 23, 2024 安彦良和「イエス」より、ユダのメシア論 あるアスリートが語った、「神に感謝する」という言葉について。https://t.co/cNBZ9HvMdb pic.twitter.com/VDHtVLxDuK— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 20…
しばらく前に紹介した高木彬光「七福神殺人事件」では、作者も主人公神津恭介教授も年齢を重ねていた。作者の体調不良もあり、かの作品(1987年)で恭介のシリーズは終了となるはずだった。しかしTVドラマ「神津恭介の殺人推理」の放映(恭介役は近藤正臣)もあり、人気のあるキャラクターを出版界が放っておくはずもない。作者がデビューのころから付き合のある人が「今度出版社を作ったから何か書いてくれ」と言ってきて、少し体調の戻った作者は「平成三部作シリーズ」を書くことになる。1991年発表の本書が、その第一弾である。 年齢は書かれていないが、恐らくは70歳前後だろう恭介と、同級生の松下研三だけでは華がない。作者…
ジョン・ディクスン・カー著/和爾桃子訳 ☆☆★ 創元推理文庫やっぱり海外ミステリーは合わないなぁ、と再確認させられた。 名前が覚えられないということは、キャラクターが描かれていないのと同義であり、それはすなわち、誰が怪しいのか、というスリルすら抱けないから、ミスリードされようもなくそもそも五里霧中なのだから、犯人が分かった後の驚きもない。本作は館で首切り殺人が起こった中に探偵もワトソンもいた、アリバイ崩しものでもあるのだが、当然、誰がいつどこにいた、というイメージも抱けない。 バンコランは、予審判事ということで、日本でいえば、高木彬光の近松検事シリーズみたいなものか。その容貌はカバーイラ…
★ 『新青年』趣味24号の通販が始まりました。以下の場所で扱っています。 どうぞ、よろしくお願い申し上げます。 ・書肆盛林堂 seirindousyobou.cart.fc2.com ・文生書院 www.bunsei.co.jp ・日本の古本屋 www.kosho.or.jp ・アマゾン https://www.amazon.co.jp/dp/B0DBLF4YPW/ ・『新青年』趣味 24号 表紙 西山彰 ”この人も『新青年』!” 特集 ユーモアと『新青年』 この人も『新青年』! Contents(A5判・376ページ) 特集1 ユーモアと『新青年』 『新青年』に見られる小酒井不木のユーモア …
●都内某所で、横溝正史読書会が開催された。課題図書は「本陣殺人事件」と、A・A・ミルン「赤屋敷殺人事件」である。ミルンは、特に横溝正史訳の論創社版に限定している。それぞれ単独で語るもよし、両者の関係を語るもよし、という会である。参加者は十名。さらに特別ゲストがお二方お越しいただいた。ここでまず最初におことわり。以下のみっつの観点で、省略した部分が大量にある。 ・一般公開なので、犯人や終盤の展開など、ネタバレ部分は全て省略。 ・当日は各社から出ている様々な「赤屋敷」が持ち寄られて、それらを比較しながら訳の違いについて語り合った。だが、課題図書は論創社版のみである。読書会の趣旨は作品自体の観賞であ…