『非在』鳥飼否宇 「やったぜ、人魚の撮影に成功した!」 自然への愛と憧憬と 鳥飼否宇の名前を知ったのは、書店に置いてあった光文社の既刊目録による。『昆虫探偵』が初めて知った彼の小説(未読)で、当時はその内容からキワモノ扱いしていたものである。 しかし、よく行く古書店で本書を見たとき、当初受けた「キワモノ」という評価が崩壊していくのを感じた。鳥飼は自然観察を得意とする作家で、本書には彼が持つ自然科学の知識と自然観察で得た経験、そしておそらくは彼の趣味と思われる民俗学・文化人類学的な学術ペダントリーが横溢している。特に本書の場合、設定も相まってそうした知識が内容にリアリティーを与えていて、個人的に…