アリデ・ラードから旅に出た薬草研究科のルマーロとウェッピィの親子は、広大なミントグリーン色の湖を船で渡った。ヴァルゴウルを囲む山脈を東から北へ迂回する路。この路は薬草研究科のルマーロが歩いた事の無い旅路だ。世界地図も存在しないこの世界では、自分自身の過去の経験と知識と、知り合った人々から得た情報以外に何かを探す宛は無い。名前さえ知らない、何の手がかりも無い男を探すには、行った事の無い場所を歩く以外考えられない。 船から降りたルマーロ親子は、馬の手綱を引いて岸辺を歩いた。ルマーロは馬に跨ると、ウェッピィの手を引いて後ろに座らせた。「じゃ、行くよウェッピィ」 遠くにおぼろげに家並みが見える。「まず…