広野に立つ一本の欅の大樹。誰の手も入らず自然のままに育ち 伸び伸び枝葉を繁らせている。 青葉は陽の光を受けてキラキラ輝き、超然とした姿には 神々しさすら感じさせる。 天を衝く大樹の全枝青葉かな 追記 最近家の脇の欅を伐採した。樹齢60年以上の大木で クレーン車と数名の職人が2日がかりで処理を終えた。 欅造りの屋敷という言葉を記憶しているが、欅は 建材として優れ、値段も非常に高いと聞く。
緑濃き小さな葉の密集して繁る中に赤いザクロの花。 全てが実になれる訳でもなく、結構な数の落花が見られる。 花の尻の部分が膨らんでいて重く、石畳の上に落ちて 弾むのを目にした。 花柘榴落ちて弾んで寂しかり 追記 ザクロの歴史は古い。数千年前に今のイラン付近で栽培 されるようになり、その後インド、エジプト、ギリシャ ヨーロッパ方面へと広がっていったようだ。日本へは 3世紀ごろ持込まれたとされている。
沈々と更け行く夜、時をり微かに聞こえる何かの落ちる音。 山桃が沢山の実をつけている。朝になれば山桃の木を 囲むように落ちた熟した実を目にすることになる。 山桃の夜ひと夜落ちて車座に 追記 ヤマモモは日本や中国が原産地と言われる。 低山の尾根など乾燥した痩せ地で森林を構成する 重要樹種の一つとされている。 木の実は甘酸っぱく、暗赤色になった頃が食べ頃。
ムツゴロウは初夏の季語。干潟に生息し、熟練の漁師が カギ針で引っ掛けて獲る様子は毎年のようにTV等で放映 される。 ムツゴロウは生きたまま調理しないと極端に味が落ちるそうだ。 ムツゴロウ泥に曇らぬ目のつぶら 追記 ムツゴロウを詠み込んだ句を探したが、何故か 見当らなかった。あのユーモラスで少々グロテスクな 姿が、俳人の興味を引かないせいかな?
ソメイヨシノはたわわに実った実をバラバラ落とし始めた。 これをサクランボと思って口に入れると決まって後悔する。 人の口に合わなくてもヒヨドリには大好物。 お腹一杯になる迄せっせと丸呑みしている。 桜の実おちて踏まれて道を染め 追記 この季節ソメイヨシノや大島桜の熟れた実を鱈腹食べた ヒヨドリが駐車中の車に落とすフンには多くの人が 悩まされる。特に乾いたフンは落とすのに苦労する。 これに静かに耐えてゆくのが日本人。
日本原産のガクアジサイは花序の周囲にプロペラのような 花をつける。 これに対して全体がこんもり盛り上がるタイプを 手鞠咲きと呼んでいる。 「額咲き」や「手鞠咲き」、日本の園芸人の感性を想う。 額の花昔は空を飛んでいた 追記 ガクアジサイは房総半島以南の海岸線に自生している由。 華やかな「手鞠咲き」に比べると「額咲きは」控えめだが 高貴な奥ゆかしさを感じる。
小雨の降り続く大川河口、一羽のはぐれ鵜がしきりに 潜水を繰り返している。 暫く見ていたが浮かび上がった時 魚を銜えている姿は見られなかった。水中で飲み込んで いるのか、それとも不漁なのか・・・・ 鵜の潜る水の濁りや走り梅雨 追記 鵜の一回の潜水時間は25~26秒が多い。 5~6km離れた御猟場から飛んで来ている模様。 鵜の肉は不味く、羽も利用価値がないとされ、 鵜にとってはラッキーでした。
雨の季節の入った。当分の間はジメジメした空気に 耐えなければならないが、たまの陽射しは濡れた青葉を 一層美しく見せてくれる。 雨雫あお葉の色に濡れている 追記 雨雫と言えば流線形を思い浮かべる。空気抵抗の 最も少ない形とされるが、飛行物体が音速に近づくと 衝撃波なるものが生じ、流線形では役に立たないそうだ。 水滴の流線形も自然界の中だけの事になろうか。
小雨に打たれるアジサイの花は悲しむ女性にも似た しっとりとした情感が漂う。 江戸時代には縁切寺法という制度が有り、女性が縁切寺に 逃げ込めば離婚が成立した由。 曲がり角はみ出している濃あぢさゐ 追記 TVのプレバトで知られる夏井いつきさんの句 「紫陽花や夢の男の嗄れ声」 こんな句を詠むんですねー TVでは何時も毒舌を吐きまっくている方が・・・・
東側はコンクリートの高い塀に遮られた空地に 葛が持ち前の旺盛な生命力を発揮して、盛んに 蔓を伸ばし勢力圏を拡大している。 葛若葉西日だけなら西を向く 追記 与えられた条件の中で、如何に生き抜くか。 少々大袈裟だが、植物を見ていると彼等は正に この事を実践している事に気付く。 尤もこれでは発展も進歩も無いとする考え方もある。 心の平和は前者に分が有りそうだが・・・・