9、赤い王道 大阪から東京方面に向かう新幹線のぞみ号のグリーン車の中。先ほどまで陽気に話していたQと船橋。さもするとそれは他の乗客にとっては迷惑だったかもしれないが、日曜の割にはすいていたこともあり、周りには人がいなかったのが幸いだった。その二人が急に声を潜めて話し始めた。もし周りで二人の話に聞き耳を立てている人がいれば、ひょっとしたら身を乗り出したかもしれないほどの声で、Qは船橋に語りかけた。 「船橋さん、実はねえ、その太田さんも最初は新社長公募で応募してきたんだけど、やはり前例に漏れず、数ヶ月で無理だと判断したんだと思うんだよね。たぶん……」 「やめちゃったんですか?」 「普通の人だったら…