霧は深く、濡れた空気が頬にまとわりつく。 ドミノは肩にかけたバッグの紐を握り直し、古びた標識を見上げた。 WELCOME TO THE MIRESTATE 赤く剥げた板に、白文字だけが異様に残っている。 まるで「戻るなら今のうちだ」と囁くように。 彼女は鼻で笑った。 怖がるほど、もう後ろには何も残っていない。 湿った風が髪を揺らし、遠くで鳥が鳴く。 道は細長く伸び、霧の向こうに沈んでいた。 家とも廃墟ともつかない建物が、沈黙のままこちらを見ている。 ここが―― マイヤー州(The Mirestate) 彼女がずっと電波越しに語り続けてきた“どこか”ではなく、 今、ようやく足を踏み入れた“現実”…