「けいおん!」第六話(含ネタバレ)

昨日ようやく上げた第五話レビューの舌の根も乾かぬうちに第六話のレビュー。
なんか昨日はその第五話レビューを書くだけでほぼ一日を費やしてしまった感がある。
そして今日もまた、このレビューを書くために一日が費やされたw


なお、過去の放映回についてのレビューはこちら。

第一話感想
第二話感想
第三話レビュー
第四話レビュー
第五話レビュー

1〜2話については、漠然とした感想の体をとっています。

アバンタイトル

オーディエンスの拍手が鳴り響く中、厳かに幕は上がる。
暗い場内とは対照的に、煌々とした照明のステージ。


普段の制服とは違う、ステージ衣装を身にまとい、
それぞれの楽器と共に立つ唯、律、紬、そして澪。
発足以来、今日の日のためにやってきた、自信と緊張感。


その四人を客席最後尾から見守る顧問、山中さわ子
幼少期からの親友が、初めて何かに取り組んだ結果を見守る生徒会役員、真鍋和


ステージの外から四人を支えてきた二人に見守られながら、
両親に貰ったのであろう名が示す通り、演奏を律するドラムを操る彼女が、
王座の上で、二本のスティックを打ち鳴らす。


それが、始まりの合図。


桜高祭、開催。

ついに学園祭の日が訪れた。
校門にはデコレートされたゲートが立ち、校外からも人が訪れる。
出店が立ち並び…って、なんか着ぐるみカフェ的なものがあるらしいですがw


前回第五話では、最後の唯の台詞から、この学園祭の三日前の段階で終わったことがわかるが、それから三日が過ぎ、彼女らがどうしているかといえば…?


校舎内もまた華やぐ中、ギグバッグに収めたベースを背負い廊下を歩いてゆく澪さん。
ついに訪れたライブ本番の日に、色々思うところがあるらしい。「関係者以外立ち入り禁止」のロープが張られた音楽室への階段を、関係者である彼女は上っていく。

澪「唯たち…もう来てるかな…」

そしていつもの音楽室の扉を開けるが、そこには誰もいない。


ここでサブタイトルコール。

(しわがれ声)「はい、いらっしゃいらっしゃい、安いよ安いよ〜」
澪「この声…」

もちろん、声の主は前回練習のしすぎで声が枯れてしまった唯さん。
何やら妙な格好でホットプレートの前に立っている。

澪「ちょっと、唯!」
唯「あ、澪ちゃん!…やきそば?ちょっと待ってね」
澪「なんでそうなる…そうじゃなくて!
  今日本番だろ? 目一杯練習しておこうよ」
唯「ごめんね。私も練習したいんだけど、朝一はクラスの当番になっちゃって…」

一応本番の時間帯は出られるように配慮したらしいが、当番だけは抜けられないらしい。
そんな話をしているところで電源のブレーカーが落ちる。口々に不平をもらすクラスの連中の言葉から、既に何回か落ちているらしい。その後のやり取りなどから、一応各クラスへの電源容量制限とかある模様。


唯はひとまず置いておき、律ちゃんとムギちゃんはと様子を見に行くと…

澪「ねぇ律、本番前の練習やっておかない?」
律「ごめん、今無理。ほら、こんなに並んでるんだからさ」
澪「誰か、代わってくれる人いないの?」
律「はぁ…私がこの企画の言いだしっぺだからね。最初くらいはやっておかないと」

やはり事情は似たようなもの。ちなみに二人のクラスはお化け屋敷らしい。律の台詞からすると、澪も二人と同じクラスの模様。で、ムギちゃんと話をするために中に入る澪さん。言うまでもなくこういうのは苦手な彼女だが…この時のBGMが水木しげるのアレのようで良い。あと、高校の学園祭にしては、お化け屋敷の内装オブジェに凝りすぎですw こんな造形が出来る人間がクラスにいるんかいw 将来の進路はレインボー造形あたりですかw

そしてムギちゃんは幽霊役。結局澪さんは中でパニックに。


本番前にできるだけ練習しておきたい、という思惑とは逆に、各クラスでの当番という事情があり、なかなかそうもいかない他の三人。


…ところでその昔、漫画「究極超人あ〜る」で、どこのクラスの出し物も「お化け屋敷」か「喫茶店」ばかりで、その独創性の無さに生徒会長西園寺まりいが発狂するという話があったが、この辺の事情って今も大して変わらんのかな?



場面は再び唯さんのクラス。相変わらずホットプレートの前で焼きそばを作る彼女の元に、幼馴染の和さんがやってくる。ちなみに和さんは生徒会役員。腕章をつけて警官みたいな帽子をかぶってます。学園祭ともなれば、校内治安維持のため生徒会の皆さんも気が抜けないといったところか。

唯「…和ちゃん!」
和「唯、その声大丈夫なの?」
唯「部活で練習しすぎちゃっただけだから大丈夫だよ」
和「今日が初ステージでしょ? 3時からだっけ?」
唯「うん」
和「じゃあ、まだ結構時間あるし、練習しておきたいんじゃないの?」

クラスの現場から離れられず、練習に入れない唯さんを案じる和さん。今の担当が終わったら練習にいくつもりという唯さんにここはもういいから練習に行けと言う。
他のクラスメイトの手前、現場を離れてよいものか迷う唯さん。しかし、クラスメイトたちは暖かく彼女を練習に送り出す。



唯さんはその後、他のメンバーにも声をかけるべく、おばけ屋敷受付の律ちゃんに会いに行く。

唯「律ちゃん!」
律「あぁ」
唯「澪ちゃんたちは?」(しわがれ声)
律「…まだ、声治んないなぁ」
唯「うん、ちょっとイガイガする…」
律「あ、『ごっつぁんです』って言ってみてよ!」

律ちゃんは唯さんのしわがれ声で遊びはじめる。
二人で力士ごっこにしばし興じるわけだが、なにやってんだw
なんかギャラリーが出来た挙句引いているのに気づき、本題に戻る唯さん。

唯「あ、そうだ、澪ちゃんたち…」
律「ごめんごめん…ムギはこの中だけど、澪は部室にいるんじゃないかな」
唯「はやく練習いこうよ」
律「…そうだな。あと少しであたしもムギも交代になるからさ。先行っててよ」
唯「わかった!」

一足先に部室に向かう唯さん。律ちゃんはもう少しで受付から解放されそうな感じ。それでも、机の上のシャープペンをスティックに、軽くリズムを取ってみる。

ステージ前最後の練習

お化け屋敷から開放され、部室にやってきた律ちゃんとムギちゃん。
音楽室への階段を上ろうとしたところで、先に行ったはずの唯さんが音楽室の前で室内を覗いているのを見つける。

律「…何やってんだ?」
唯「(しぃ〜っ)」(指を口にあて、静かにしろの合図)

唯に促されるままに音楽室を覗き込む二人。

律「…ずっと、練習してたんだろうな」
紬「…うん」

そして、律ちゃんは…

律「(勢いよく扉を開け)待たせたな、澪!」
紬「一人にしてごめんなさい」
唯「あたしも練習するよ」(しわがれ声で)
澪「みんな…遅いぞ!?」

ようやく最後の練習が始められそうだ。

合わせ終わって…

律「よぅし! まあまあなんじゃない?」
紬「うん。バッチリだった」

四人で最後に合わせてみたところ、なかなかの出来映えの様子。皆の演奏は問題ない。残る懸念は、直前に急遽決まった澪のボーカルだけだ。当の澪はまだ不安を隠せない様子。


…と、そこに乱入してくる顧問のさわちゃん。

さわ子「みんな、いるわねー?」
唯「先生、どうしたんですか?」
さわ子「フフッ…不本意ながらも軽音部の顧問になったことだし、
   何か手伝うことないかーって思って…
   衣装作ってきましたー!」
律「ノリノリだーッ!?」

…どう見ても「不本意ながら」には見えないんですが。やたらと楽しそうだなおいw
まぁ、「顧問になった経緯」は不本意なものであっても、さわちゃん自身桜高軽音部出身者というのを考えると、古巣の後輩達の晴れの舞台に心が躍るのもわかる。


しかし、本番直前の緊張がたかまる中、もともと目立つのが苦手な澪さん、さらに目立つステージ衣装を持ち出され、その不安と緊張が最高潮に。

澪「あ…あんな服着て歌うの…? 大勢の前で…?」(ガタガタ震えながら)
律「ちょっとタイミング悪かったかな…」
さわ子「ふむ…これはお気に召さなかったか…
   私の昔の衣装はどう?」
澪「あぁっ! やっぱりさっきの服着たくなってきたー!」

…さわちゃんが取り出したのは、前回第五話の回想シーンに登場した、カルトがかったステージ衣装。音がするところを見ると、何やら金属パーツが多そうw というか、悪魔崇拝とか土着信仰的なモチーフのバンドとか、最近表に出てこないよなぁ…なんてことを言うと、クラウザーさんSATSUGAI されそうなのでやめておこうw


そこに律ちゃんが、そんな衣装は澪でなくても恥ずかしいとストップをかける。しかし、唯さんとムギちゃんは喜んでさわちゃんの持ってきた衣装を着ていたりするが…このときムギちゃんが着ているのはナースで、唯さんはスク水。原作どおりだが、なんでまたそんな衣装をw


結局緊張のとけないままの澪さん。そんな澪さんに、

さわ子「澪ちゃんだってわからないようにメイクしてあげようか!?」(デスボイス)

相変わらず合宿のときのテープによる呪縛が解けない模様。
そしてさわちゃんは場を掻き乱すだけ掻き乱し、去っていく。

唯「あーっ! 私、今ので全部忘れちゃったよー!」
紬「練習しよ? それしかないわ!」
律「そうだ! 練習だ! …何もなかった、何もなかったんだ…」

澪さんは相変わらず追い詰められたまま、Aパート終了。


機材搬送

ここから B パート。

律「じゃあこれ、講堂まで運んどいて」
唯「ほぉい…うぐっ」
律「はは…重いから気をつけてね」

第二話でも登場した Marshall MG15CDR を運ぶよう唯さんに指示する律ちゃん。パネルに並ぶ、7つのダイヤルが特徴的。第四話の Peavey MAX 158 もよく描けてたけど、これも細部までよく描けてる。

参考:http://www.y-m-t.co.jp/marshall/mg.html
上記サイト内の「MG15CDR」にて製品紹介を確認できる。

出力15[W]のギターアンプだが、会場の収容力が高校の講堂程度なら充分か。先日処分価格7,980円で同 Marshall の MG10CD を買ったけど、10[W]のこいつでも最大にすりゃ近隣一帯の迷惑になるには充分な音量を出せる。


アンプを受け取り、澪の様子を尋ねる唯さん。律ちゃんの話では、今の状態で機材運びをやらせるとえらいことになるので、他のことをやってもらっているらしい。


各クラスの出店で華やぐ廊下を、唯さんはMG15CDRを重そうに抱え、ふらつきながら運んでゆく。その隣を余裕の表情で他の機材を抱えながら追い抜かしていくムギちゃん。最初に抱えて運んでいるのは何やら黒い箱のようなもの。ギターアンプは今唯が運んでいるので、ベースアンプか?


唯さんが一旦 MG15CDR を足元に下ろし腰をいたわっている間にムギちゃんは一往復し、次の機材を運んでくる。この娘、意外と力持ちです。だから第四話の合宿話で 17[kg] もある、KORG TRITON Extreme 76key を「肩にかけて運ぶ」なんて真似ができるわけでw


再び足元の MG15CDR を持ち上げ、唯さんが輸送を再開したときに、ムギちゃんは次の荷物、律ちゃんのドラムセット YAMAHA Hipgig のキックドラムを汗一つかかず運んでくる…


…はて、YAMAHA Hipgig は、「ドラムセット全体をコンパクトに収納して持ち運びを容易にする」というユニークなコンセプト(最近だとZENNのDCD100NAあたりが同様のコンセプトだったりするが)を持つドラムセットであるはずなんだが、なんで一個ずつ運んでるんだ? まとめてから運べば二回の輸送で済むのに。まぁいいや。

参考:楽器・オーディオ関連製品 - ヤマハ - 日本


ようやく舞台袖にアンプを運び終わった唯さん。ステージの進行管理もどうやら和さんの仕事らしい。和さんの話によれば、唯さんがアンプを運んできたときには演劇をやっており、その直後に合唱部の発表、軽音部の出番はその後だ。


直後のカットでは、唯さんが自分のレスポールを納めたギグバッグを背負い、律ちゃんの Hipgig のハイハットと思しきものを運んでいる。


ステージの時は刻々と近づいてくる。

本番前

会場への機材搬入が終わり、ムギちゃんのお菓子をお茶うけに一息入れる軽音部。
お茶の席で、いつのまにか律と澪の付き合いについての話題になるが…

唯「律ちゃんと澪ちゃんって、幼馴染なんだよね?」
律「そだよ?」
唯「いつから一緒なの?」
律「そりゃもう幼稚園からずっと一緒…あれ、小学校からだっけ?」
唯「幼馴染ちがうんかい」

このあたりの会話では、前回生徒会室で繰り広げられた唯と和の会話に、律ちゃんが「お前ら、本当に幼馴染?」と突っ込んだのが思い出される。どうもこの作品の幼馴染たちは、互いの関係に意外と無頓着な体を装っているが…


澪の恥ずかしがりは昔からなのか、という唯さんの問いに、律ちゃんは澪さんとの昔のエピソードを披露するが、どう見ても律ちゃんが原因ですw


そこに戻ってきた澪さん。先ほどとは変わって妙に落ち着いた振る舞いをしているが…

律「あんなにボーカルするの嫌がってたのに」
澪「そんな、子供じゃないんだし…いつまでも動揺していられないわよ〜」

よく聴くと、澪さん口調がいつもと違う。
そして、ティーカップを持つ手がガタガタ震えている。
どうみても冷静を装う演技だが、このへんが限界のようだw

律「もうすぐ本番なのに、そんな調子でどうするんだよ」
澪「…もういやだ…律、私とボーカル代わって!」
律「…そしたら、ドラムどうするんだよ」
澪「私がやるから!」
律「んじゃ、ベースどうするんだよ!」
澪「それも私がやるから!」
律「あぁ、やってもらおうか!逆に見てみたいわ!」

原作どおりのやり取りだが、ベースとドラムを一人でやるのはまぁ無理だなw
ところで、ドラマーでボーカルというところで、C-C-B を思い出した俺はトシガバレル。


半ばパニック状態で律ちゃんに泣きつく澪さん。そこに唯さんが…

唯「ごめんね澪ちゃん、私のせいで…
  私がこんな声にならなかったら、澪ちゃんが歌うことなかったのに…」

原作にはないこの脚色は実にいい。
もともと澪がボーカルになった経緯は、ボーカルに立候補したはずの唯が声を枯らしてしまったことが原因。唯がそのことに責任を感じている、という演出はとても良い。

唯「やっぱ、私がボーカルするよ!」(しわがれ声で)
律「いやいやいやいや…」
澪「ごめん唯、そんなつもりじゃなかったから…」

軽いノリで描かれるこのくだりだが、こうしたやり取りが澪の中で自分の立場に踏ん切りをつけたと考えると、この脚色は非常に良いものに思える。


何とか自分を奮い立たせようとする澪さん。
その澪さんの姿に、律ちゃんは…

律「あ、そうだ! MC考えておかなきゃ」
唯「MCって何?」
律「ん? 自己紹介とか…ほら、コンサートなんかで曲と曲の間にしゃべったりするじゃん」
唯「あぁ! あるある!」

律ちゃんが「MCの練習」と称して、場を和ませ、澪さんがいつもどおりのツッコミを入れる。なんだかんだ言って、全メンバーの中で最も澪さんとの付き合いが長い律ちゃん。どうすればいつもどおりの澪さんで居られるかをよく知っている。


「いつもと同じ四人で、最高のライブを」
この「MCの練習」は、そんな律ちゃんの、親友に対する思いやりの形。最後には四人で笑いあい、澪さんもすっかり落ち着いたようだ。


直接的な言葉に頼らず、表情と動きで心を見せる。演出の真骨頂がここにある。


そして、時は来た。

開演

直前の合唱部による発表が終わり、緞帳(どんちょう)が下ろされる。
次にこの幕が上がるときが、軽音部の舞台だ。
客席の聴衆たちは、わずかな時間の間、互いの感想でも交換しあっているのだろうか。


幕間に、すべての機材は設置を終えられた。暗く落とされた照明の中、唯の MG15CDR も、律の Hipgig も、その咆哮をあげる瞬間を待ち構えている。


さわちゃんの用意したステージ衣装を身に纏い、舞台袖に集合する四人。
幕の隙間から顔を覗かせ、オーディエンスたちの様子を伺う唯と紬。
そして、部長・田井中律は、メンバーを鼓舞する。

律「今こそ! 練習の成果を見せるときだぜ!」
唯「うん」
紬「はい」

しかし、澪はやはりステージ衣装が気になる様子。恥らう澪を軽口でからかう律。
そのとき場内にアナウンスが流れる。

アナウンス「次は 軽音楽部による バンド演奏です」

もはや後には引けない。ステージ衣装を着替える時間も、練習をやりなおす時間もない。
あとは、今の自分たちでステージを完成させるだけ。


顧問・山中さわ子は客席スペースの最後尾の壁にもたれかかり、静かに見届ける構え。
このステージを実現するにあたって、彼女らを支えてきた生徒会役員・真鍋和も、親友・唯の初舞台を見守っている。


このステージは、四人だけのものじゃない。

律「ようし! みんないくぞー!」
一同「おー!」

各自が所定の場所につく。


律が「王座」に座る。


唯は演奏前に、最後のチューニング確認をするかのように、今回の演目で最も重要なギターリフを、出だしのコードEからアンプを通さず幾度か鳴らす。


暗転していた舞台の照明が再び灯され、和の指がコントロールパネルのボタンに触れる。
緞帳が再び巻き上げられ、こぼれる光をオーディエンスが拍手で迎える。


開演。


舞台に立つ四人の愛らしいステージ衣装に賞賛の声が上がる。
衣装を作った顧問・山中さわ子はこっそり目立たぬようサムアップし、心の中で叫ぶ。

さわ子「(私、グッジョブ!)」

大勢の聴衆を前にし、舞台中央最前列に立つ、今日の主役、ベースボーカル・秋山澪
もともと人前に出るのが苦手な彼女は、この状況に再び挫けてしまいそうになるが──

唯「澪ちゃん!」
澪「(はっ)」
唯「みんな、澪ちゃんが頑張って練習してたの、知ってるから!」
律「そうだよ、澪」
紬「澪ちゃん」

舞台直前、彼女は音楽室で一人練習していた。でも、一人などではなかった。
練習のときも、この舞台の上でも。

唯「絶対大丈夫だよ! がんばろう!」

今、このステージは、ここにいる四人の仲間で創るもの。
しばしの集中の後、澪は顔を上げ──王座に座る親友はカウントを始める。
これが、自分たちの、曲の始まり。

律「1,2,3,4,1,2,3!」

カウント二小節目の三拍目裏。
唯のレスポールが、アンプ越しに叫びはじめるギターリフ。
ギターリフの4小節目の終わり、澪の右手が彼女のレフティベース指板上でグリッサンドを鳴らす。ここからが彼女のパートの始まりだ。
沈黙を保っていた律のドラムも、紬のシンセも、同時に唯のリフに合流する。


そして、澪の歌声が、彼女の作った詞をメロディにして、4つの楽器によるリズムとコードと交わる。

澪「♪君を見てると いつもハートDOKI☆DOKI─」

今のところ彼女らの唯一のオリジナル曲「ふわふわ時間(タイム)」。
いつのまにか映像は、荒野の一本道を駆けるオープンカーというPV風の映像に。
映像中の設定では、彼女らはお尋ね者らしい。
声を枯らしているはずの唯も、音源を聴くかぎり必死にコーラスで参加している──





──曲が終わる。今自分達に出来ることはすべてやりきった。


静かに顔を上げる。オーディエンスは彼女らに割れんばかりの拍手を、惜しみなく贈る。
講堂に響き渡る、拍手の渦。そのすべてが、彼女ら4人に向けられたものだ。

澪「みんな、ありがとうー!」

奥底から出た、澪の叫び。満場の拍手を受け、彼女らは舞台を去ろうとしたその時──


澪が、床のケーブルに足をとられ転んだw
原作どおりではあるが、この四人が何事もなくシリアスに終われるはずがないw
会場が違う雰囲気を持った声でどよめく。澪は転んだ拍子に…
澪の絶叫が響き渡る……


さて、澪が転んだとき、ベースアンプにささっていたシールドが抜けるが、Fender ロゴが入ったこのベースアンプは BMC-20CE あたりか?

参考:http://fenderjapan.co.jp/amplifier/bmc20ce.htm

…って、その縞々のご飯茶碗は何ですかw つーか写真撮るなw
テレ東ではなく TBS なので出来るかと思ったが、さすがに無理なのかw
原作未読で何があったかわからない人は、読んで確認する手もある。


けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)


…で、今回は楽器演奏の映像をアニメにするというのはないのか。
ハルヒで示した実績から、あの細かな演奏アニメーションを今再び見られると期待していた人は、拍子抜けかもしれんが、理由はなんとなくわかる。詳細は「感想」の章に。


冒頭、ギターリフを弾き始める唯さんのレスポールのヘッドが出ているが、今回は Gibson ロゴが入っている。第二話の楽器店で見たときは、Gibson ロゴを使うことを躊躇ったのか、違うロゴ(Fenderっぽいw)が入っていたしな。


で、イントロの唯のギターリフに関しては、あの手の位置はE5を2フレット4,5弦、A5を2フレット3,4弦、B5を4フレット3,4弦で押さえているんかな? 個人的にはハイコードでセーハする指を使ってカッティングしたほうがやりやすかったりするんだが…まぁいいや。


ふわふわ時間(タイム)」の歌詞に関しては、第五話の画面書き文字で出てこなかった部分も含め、完全に原作準拠(原作1巻P61参照)。これは良い。実際の作詞はかきふらい先生(原作者)ということになるんか。ついに曲がついた!


なお、アバンタイトルおよび本章では、律ちゃんが座る場所を「王座」と表現したが、これはちゃんと理由あり。ドラムセットの椅子は、「ドラムスローン(drum throne)」と呼ばれ、"throne" とは「王座」「玉座」の意味がある。

後日…

明けて翌日。

律「みんな、昨日はお疲れさん」
唯/紬/さわ子「おつかれさまー!」

律ちゃんは初ライブをやり遂げた唯さんをねぎらう。
澪さんには何やらファンクラブが出来たらしいが、当の本人は…


…ま、まぁがんばれとしか言い様がないw


次回予告

最大の山場と思われる学園祭ライブも終わり、作中の季節はもう冬になるようで。
軽音部の面々はクリスマスパーティをやる模様。どうなるものやら…?


感想

さて、今回のオンエアで第6話が終了。
1クール作品としては、その半分を終えたことになるが、その折り返し地点として学園祭ライブを持ってきたのはわかりやすい。


で、本作に関しては、


「『涼宮ハルヒの憂鬱』第12話『ライブアライブ』を手がけた実績のある『京アニが』」
「おそらく楽器演奏場面を伴うであろう『けいおん!』を手がける」


という理由で見始めた人も多いと思われ、1クールという予定と原作の量からおそらく最大の見せ場となると推測された「学園祭ライブ」での「演奏シーンアニメーション」を期待していた人も多かったと思われるが、その人たちは見事に肩透かしを食らった形になるのか。うーむ。


あー、でも、OPおよびED、さらに今回の演目「ふわふわ時間(タイム)」を含め、ここまでの段階で発表されている本作の楽曲は、


「動きとして見栄えのする高度な演奏技法」


特に必要としておらず、その動きを忠実にアニメーション化してもあまり細かく美しく動いているように見えなくて、「絵としてつまらないものになった」と思われる、という形で弁護しておこう。それよりは、今回のようなPV風映像を作ってくれたほうが面白い。
左手の形が最小2拍前後単位でしか変わらず、指板をニギニギしながらコードストロークでカッティングする唯さんの映像を想像してみよう。かなり地味だぞ?


この辺は「弾くことを考えて聴く」というのをやってないとピンと来ないかもしれないが、ギタリストの独壇場となる速弾きギターソロなどが「ふわふわ時間(タイム)」に無いことを思えば、なんとなくわかってもらえるとは思う。


逆に、高校の軽音部でやる曲のテクニックのレベルとしては適切でリアルではないかな、とも思う。高校に入って軽音部に入り、初めてギターにさわり、そこから半年たらずのギタリストだもの。あれだけリズムギターをこなせれば普通は充分御の字だろう。ハルヒ#12」が出来たのは、長門有希という超人的な存在が作中にいるという前提があってこそだ。本作にそんな超人は今のところいない。


また、第四話で唯さんは天才的なリードギターの才能を見せ付けているが、現在軽音部のギタリストは唯さん一人。彼女がリードギターに回ったら、リズムギターを担当する人物がいないことになる。そこは「あの」ニューフェイスの登場を待つしかない。彼女が手にした「小さな暴れ馬」Fender Mustang が、桜高軽音部をさらなる高みに押し上げることを期待しよう。


さて、そうした演奏シーンの演出はさておき、「ライブステージが出来るまで」の人間模様を細かく丁寧に描いている印象。


前回ボーカルに任命された澪さんを中心に据えて、その古くからの親友律ちゃんとの絆の強さが見える話になっていると思った。さらに、第四話の合宿で培ったバンドとしての一体感が、ステージの上で形として見えた話でもある。


何よりも、あの「ふわふわ時間(タイム)」が、原作の歌詞もそのままに、楽曲となって出てきたのが嬉しいところ。前回作中では曲先の作り方をしていたわけだが、実際は原作による詞が先にあるという「詞先」の曲である、という点を考えてみるのも面白い。