2013年2月号

今月も恒例の感想文です。2013年は科学的に色々なイベントがおおいようです。今回は今年の科学トピックスの紹介からはじめていきたいと思います。


1. 2013年の科学トピックス

1月中旬:「ちきゅう」による南海トラフ地震発生帯の掘削が終了
(今回のこの結果により、現在考えられている南海トラフ地震の想定が変更されるかも知れません。)


2月末:CERNヒッグス粒子に関する解析結果を発表
(昨年もっとも大きかった科学ニュースのひとつにヒッグス粒子候補の発見がありました。昨年ヒッグス粒子候補の発見というニュースの根拠となる調査結果は、13パターンあるとされる崩壊パターンのうち、観測しやすい3パターン(2つの光子、2つのZ粒子、W+粒子とW-粒子)の結果に基づくものでした。現在はこれらのパターンに加え、2つの崩壊パターン(タウ粒子と反タウ粒子、ボトムクォークと反ボトムクォーク)の観測も実施することで、多くのサンプルかつ多角的な評価が実施された上での結果が発表されます。より確からしい判定結果が出てくると思われます。超対称性理論で予想されるような5種類のヒッグス粒子があるという判定結果となるのか。見物ですね。)


7月:超対称性粒子の探索結果が発表
(未発見の素粒子発見されるのか?こちらも楽しみですね!)


9月:地球が存在する銀河の中心で巨大ブラックホールがガスを吸い込む
天の川銀河の中心にあるブラックホールにガス雲が大接近します。これは、実は奇跡的なことで、これだけ観測しやすい位置でブラックホールに何かが明確に吸い込まれる瞬間を捕らえることは非常に困難であることによります。ブラックホールにガス雲が近づくと、衝撃波、X線や赤外線、電波などが発生すると「考えられいます」。これを直接観測できるのは初めてのことで、ブラックホールの存在を証明する大切な一歩になる可能性があります。)


9月5日:アメリカでゲノム解読コンテストが開催
(DNAから形成される遺伝子情報、ゲノム。これの解読スピードと正確さを競うコンテストが開催されます。優勝賞金8億円!このコンテストの目的はゲノム解読技術の進歩とこの技術進歩によって期待される医療技術進展を促進するということにあるそうです。2013年、9月5日に解読するためのサンプルが公開され、200万円の登録料を支払った参加者が、10月5日の締切日までにサンプルのゲノム解析を実施する。98%以上の領域の解析と解読ミスを100万分の1以下にし、かかったコストを10万ドル以下に押さえたら審査対象になるそうです。優勝者は上述の条件を満たし、最も早く解析を終了した人に送られるとのことです。ちなみに、今回サンプルとされるのは世界中から集められた100歳以上の100人の情報です。今回のコンテストで得られた情報から、長生きに関係する情報を抽出できたら、と期待されているそうです。優勝者はもちろんこのコンテストを通して長生きに関連する遺伝子がわかるかどうか楽しみですね。)
9月〜10月:日本が合成に成功した113番目の元素の正式名称が決定 (2004年に理化学研究所森田浩介准主任研究員が世界で初めて合成に成功した113番元素。この元素が初めて日本人が名付け親となる元素となる可能性があります。元素番号93番以上の超ウラン元素はすぐに崩壊するため、その存在の確証性を得るためには、複数回の合成を成功させなければなりません。森田准主任研究員は、2005年に2回目、2012年に3回目の合成を成功させ、この元素の存在を確実的なものにしたと言われています。20世紀初頭、小川正考が43番目の元素を発見したと発表し、ニッポニウムと名付けました。この元素はその後、75番元素であることが判明し、ニッポニウムは誤りと判断され幻となりました。今回113番元素に日本名が認められれば史上初めてとなります。周期表に日本名がつくのかどうか。これも楽しみです。)


2013年末:ウ゛ァージン ギャラクティック社が宇宙旅行事業を開始
(1600万円と高額ではありますが、ついに誰でも宇宙にいける日が来るようです。母船にて上空まで高度をあげた後、切り離された宇宙船は無重力空間に飛び出します。宇宙空間にて無重力状態となるのはわずか4分間ですが、お金を払いさえすれば万人が宇宙へいけるという事実は何物にもかえがたいものになるに違いありません。)



2013年度中:iPS細胞を使用した「加齢黄色斑変性」の臨床研究開始
(根本的な治療法が無い病気に対するiPS細胞の適用は、山中教授のノーベル賞受賞も後押しして、今後進んでいくと期待されていますね。加齢黄色斑変性は50歳以上の1%程度の人に見られる目の病気で、黄斑の網膜が正常に機能しなくなり、視野の中心部が歪んだり、視力が低下する病気です。網膜はガン化しにくい細胞のひとつであること、少量の細胞数で治療が可能であることが臨床試験の対象として選ばれた理由だそうです。今後、「心筋梗塞」、「脊髄損傷」といった治療についてもiPSによる臨床試験が始まる予定だそうです。)


11月下旬:アイソン彗星が肉眼で観測可能に
(私個人的には非常に楽しみにしている現象です。アイソン彗星とは最も明るい時にはマイナス13等級になるといわれています。これは満月と同じくらいの明るさです。11月末から12月はじめにかけ、夜明け前の東の空に明るいアイソン彗星が観測できると予想されています。おそらくハレー彗星のように尾を引くような形として観測できると考えられていますが、詳細な形は実際には予想不可能だそうです。加えてアイソン彗星は放物線軌道なので、今回を逃すと二度と見ることはできません。大体夜明け前に家を出ている私にとっては、出勤前に天体Showを見られると思っていて、今からワクワクです。)

このように、2013年も色々ありそうです。楽しみですね。




2. 富士山大噴火

私個人的には地震以上におそれていることが実はこれです。ずっと前から不安に思っていました。それが今回ニュートンの特集に組まれたということで、非常に興味深く読ませてもらいました。是非この感想文ではこの項目を詳細に書きたいと思います。


- 超巨大地震と火山噴火の関係
歴史を振り返ると巨大地震の後にはほぼ例外なく火山噴火が起こっています。記録が残る地震のうちM9.0を超える超巨大地震は「1952年:カムチャッカ地震」、「1957年:アリューシャン地震」、「1960年:チリ地震」、「1964年:アラスカ地震」、「2004年:スマトラ沖地震」、「2011年、東北地方太平洋沖地震」です。このうち、東北地方太平洋沖地震以外のすべての巨大地震について、その翌日から3年以内に火山が噴火しています。このため、今回の東北地方太平洋沖地震の後に火山が噴火するのではないかと考えられており、最悪のケースとして富士山が噴火することも想定内となっているようです。


火山噴火と地震が連動するのはなぜでしょうか。これは、炭酸入り飲料の蓋を開けるときに中の炭酸水が溢れるという現象と基本的には同じです。マグマには大量のガス成分が溶け込んでおり、それは非常に高い圧力によって平衡常態に保たれています。地震によって揺さぶられて地殻の形状が変化し、マグマの圧力が下がると、まさに炭酸飲料の炭酸がぬけるようにマグマが火山口がから溢れ出す。このようなプロセスにより地震と火山が連動しているといわれています。


  • 富士山の過去の活動

富士山はこれまで幾度となく噴火を繰り返してきた日本最大級の火山です。1707年12月31日に相模湾震源とするM8.2の地震がありました。この時富士山は地鳴りを起こしたと伝わっています。その後、1707年10月28日にM8.7の宝永地震が発生しました。これがいわゆる南海トラフ震源とする巨大地震です。この地震から49日後、1707年12月16日に196年の静寂期を終え、富士山は大噴火を起こしました。これが宝永大噴火です。この時に放出された火山灰の総量は約7送立方メートル。これは桜島が2011年に放出した火山灰の140倍にもなります。新井白石も当時の様子を述べていて、「富士山の方面に黒雲が沸き起こり、雷の光がしきりにした。西の丸にたどり着くと白い灰が地をおおい、草木も白くなった。やがて御前に参上すると、空がはなはだしく暗いので、明かりをつけて進んだ。」。この記録だけでも当時の混乱の様子がうかがえます。富士山から100キロメートルはなれた江戸でも火山灰が降り積もり、富士山のふもとである静岡県小山町では2メートルの灰が降り、その重さに耐え切れず多くの家屋が倒壊したとのことです。

  • 富士山の真の姿

現在の富士山は古富士火山と小御火山が合体してできた山です。そのため現在の富士山の山頂付近から噴火するというよりも、側面にある過去の火山もしくは火山に関連する側火山口から噴火する可能性があります。実際これまでの噴火の歴史を見て見ても、南東方向から北西方向に向けてほぼ一直線で火山口が並ぶということがわかっています。その大部分は今の富士山でいうと側火口からの噴火です。

  • もし富士山が噴火したら

地震は勿論大災害です。津波や火災、建物の崩壊やインフラの寸断などその悪影響は計り知れません。しかし、火山噴火は地震と異なり、長時間にわたってその影響を及ぼしつづけます。その影響のうち最も大きいものは「火山灰」です。



実は火山灰は非常に厄介なものです。火山灰というのは噴火によって噴出したマグマが急速に冷やされ固まった後に、細かく砕けたものです。直径2ミリメートルより小さいものを火山灰といいます。非常に軽いので風で舞い上がる上、雨が降ればセメントのように固まってしまい重量も増す。長期間にわたってもたらされるこの厄介者の処理が何より復興の障害になると予想されています。

はたして、長期間つもる火山灰は大都市に度のような影響を与えるのだろうか。



まずは交通網。降り積もる火山灰が1ミリメートルに達すると、車、鉄道、飛行機は運行が困難になる可能性があります。現在想定されている富士山の噴火によってもたらされるつもる灰の高さは5cmといわれています。車は視界不良により運転困難となり、電車は電気回路のショートなどによる運行不可、飛行機は吸い込んだ火山灰による目詰まりを起こしエンジン停止のリスクがあります。


なぜ火山灰で電車が?と思いませんでしたか?ここが以外と知られていないところなのですが、火山灰は硫黄化合部などの成分がふくまれていて、これが濡れることで導電性物質となり、電気回路をショートさせてしまうとのことです。これはすなわち、インフラにも多大な影響を与えることが想像されます。


さらに、火山灰は先端が鋭利なガラス質のものもあります。これは、目に入れば網膜を傷つけ、吸い込めば肺に傷をつけてしまう。マスクとゴーグルは必須です。今のうちからこのようなものをいざという時に備えて準備しておくことは重要かもしれません。

そして、近距離の町について最も恐ろしいのが火砕流です。時速100キロメートルというスピードで500度灼熱の火砕流が駆け降りると考えられます。2010年の地質調査により、富士山から17キロメートルもはなれた場所で火災流の形跡が発見されました。この結果をベースにすると東名高速東海道新幹線火砕流に巻き込まれるということを示唆しており、被害の甚大さを感じることができるかと思います。



  • 噴火予知の最前線


火山性地震低周波地震であることが特徴で、それ以外にも山全体の膨張、火山ガスの噴出、地磁気の異常、地熱の上昇などがみられます。これらの変化は気象庁、防災科学研究所、各自治体によってつねに監視されているとのことです。



2011年3月11日以降、上述したような変化は起こっていません。しかしながら前兆を捕らえることは非常に難しいとのこと。1986年の伊豆大島噴火、1990年の雲仙普賢岳噴火、2011年の霧島新燃岳噴火は予知することができませんでした。実際に予知ができたケースでもその前兆を捕らえたのは噴火の1週間前から数十分前と幅があります。多くは1日から13時間前までに捕らえられていたようです。いずれにしても、予兆がどのタイミングであらわれるかはケースバイケースであることが想像できるかと思います。


同じような間隔で同じような噴火様式で噴火する場合、噴火時期をある程度の精度で予想することはできますが、なかなかそのような素直な火山活動ばかりではないとのこと。富士山の場合、宝永大噴火の時は1ヶ月前から予兆が見られたという記録があるそうですが、次に噴火するとき同じような時期に同じような予兆が見られる保証は無いとのことです。


日頃から、食料、マスク、水といったものを備蓄しておくことが重要になってくるとおもいます。





3. 火星探査機キュリオシティ本格測定スタート

10種類もの観測装置を駆使し、今後2年にわたり生命の証拠となる有機物の探査や火星環境の変化の歴史を調査するキュリオシティ。火星到着後、数ヶ月という期間であげてきた成果について簡単に紹介したいと思います。

- 火山活動の痕跡?
クレーターの側面には多くの玄武岩と思われる黒い石がみられ、これはクレーター内で火山活動があったということを示していると考えられるそうです。今後、さらなる詳細な観測が計画されています。

  • 水の痕跡?

やはり火星といったらこれを発見できるかが、生命の存在を判断するのに重要なバックグラウンドのひとつになるでしょう。これまで、丸い形の石やアルカリ玄武岩、れき岩が見つかっており、どれも水が存在していないと発見されないものです。このようなものが見つかったのは初めてのことだそうです。火星には昔二酸化炭素が大量にあり、その温室効果によって温かかったと考えられており、この仮説を裏付ける調査結果と見ることができるそうです。



現段階では生命の源のひとつとなるメタンは検出されていません。地上望遠鏡や周回衛星ではメタンが存在していると考えられるため、今後2年間かけてメタンの探索も継続されるでしょう。


地球に最も近いといわれている火星。今後もキュリオシティの調査結果に注目ですね。




4. 「しわ」とは?

今月の感想文は大きな項目が多かったので、これを最後の項目とします。


医学的にいう「しわ」というのは「加齢による劣化」と「太陽からの紫外線などによる劣化」によるものというそうです。手相や指紋はしわではないそうです。紫外線による劣化は顔や首など、露出しやすいところ、加齢によるしわは背中や腹、腰などやわらかい部分に見られることがおおい。



それでは、具体的にしわができる様子を見ていきます。皮膚というのは表面から順番に、「表皮」、「真皮」、「皮下組織」の3つの組織からなります。このうち真皮にはコラーゲン、弾性繊維というタンパク質や、ヒアルロン酸という糖類が存在します。コラーゲンや弾性繊維は組合わさって組織を支えるゴムのような役割を果たします。ヒアルロン酸は水分を蓄える力があります。このようにしてゴム弾性が皮膚にもたらされるのです。そして、真皮には繊維芽細胞という細胞があり、これらの成分を作り出しています。


このような皮膚の弾性に悪影響を与える紫外線のうち、最も問題なのはUVAという波長の長い紫外線です。UVAは真皮まで達し、活性酸素を作り出します。波長の短いUVBは表皮までしか浸透しませんが、表皮の角化細胞に当たると活性酸素を作り出すため、やはりしわの原因になります。




最も気になる「しわ」の改善というのはどうしたらいいのでしょうか。効果的と考えられているのは活性酸素の除去です。コエンザイムQ10アスタキサンチン、αリポ酸には活性酸素を除去する抗酸化作用があります。加えて、ポリフェノールを含むコーヒーなどもしわの改善に効果がある可能性があります。



ただし、気をつけることも。コラーゲンやヒアルロン酸が含まれる美容パックは、科学的にはしわの改善には効果があるとは考えにくいそうです。コラーゲンを食べても美肌効果はない(コラーゲンが体内でアミノ酸まで分解されて吸収され、どのようなタンパク質として再合成されるかはわからないため)ことはこの感想文でも一度書いています。



外見はその人の初期イメージとして最も大きな影響を与えます。しわを増やさないようにすることで、若々しさを保ちたいですね!




今回はこのくらいにします。最後まで読んでいただきありがとうございました。