ポリー・ホーヴァート 代田亜香子訳 『みんなワッフルにのせて』 白水社

みんなワッフルにのせて

みんなワッフルにのせて

あたしが思うに、ほんとうにだれかを守るなんてことはできないんだろう。というか、あることから守れたとしても、べつのなにかがやってくる。(P.61)

 プリムローズの両親は、海で行方不明になってしまいます。両親が「死んでしまった」のだと、周囲の人々は物的証拠を次々つきつけるのですが、プリムローズは「自分がほんとうだと感じる」ことを信じて、両親の帰りを待っています。
 両親がいなくなったこと以外にも、プリムローズにはずいぶん酷い目に遭っているはずなのですが、物語は決してしめっぽくはなりません。日々の中にあるおかしみが伝わってきます。
 各章末に、出てくる料理のレシピつき。

三浦しをん 『乙女なげやり』 太田出版

 『妄想炸裂』と『乙女なげやり』、2冊続けて読みました。

乙女なげやり

乙女なげやり

 清水玲子『秘密』のあおり文句について語られている章「自分を止めてあげたい」から引用。

 あおり文句が「少女まんがの枠を超えた傑作」なのだ!それは……褒め言葉なのか?(中略)このチラシの文言では、「少女まんがの枠を超え」ることがすなわち「すごいこと」のように受け取れる。
 もちろん、チラシが言いたかったのは、「ストーリーの水準が極めて高く(中略)大人の鑑賞に堪えうる作品ですよ」ということなのだろう。だがそりゃあ、ふとい間違いだ。
(中略)そもそも(ああー、少女漫画のことになるとすぐに熱くなって、「そもそも」とか言い出しちゃう)、「少女漫画」というのは昔っから、取り扱うテーマは多岐にわたり、登場人物の年齢性別も多彩で、大人の鑑賞に堪えうるものがたくさんあった。読者層の大部分を実質的に少女が占めてきたのだとしても、作品の内容はすべての人に開かれていたのだ。(P.37)

 わかるー、とじたばたしてしまいました。ええとですね、「少女漫画」「少女まんが」の部分を「児童書」あるいは「児童文学」に、「少女」を「子ども」に置き換えると、あさのあつこ『バッテリー』に「これは本当に児童書なのか!?」というあおり文句がついていた時のわたしの気持ちになります(乱暴だ……自分に都合よく改ざんしすぎだ)。

今月の読了本

  1. 室生犀星 『或る少女の死』 岩波文庫
  2. ルイス・サッカー 幸田敦子訳 『穴 HOLES』 講談社文庫
  3. 川島誠 『夏のこどもたち』 角川文庫
  4. 鷺沢萠 『愛してる』 角川書店
  5. 松原秀行 『パスワードは、ひ・み・つ』 講談社青い鳥文庫
  6. 桜庭一樹 『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 角川書店
  7. ル=グウィン 清水真砂子訳 『ゲド戦記最後の書 帰還』 岩波書店
  8. ル=グウィン 清水真砂子訳 『ゲド戦記5 アースシーの風』 岩波書店
  9. 湯本香樹実 『わたしのおじさん』 偕成社
  10. 森忠明 『へびいちごをめしあがれ』 草土文化
  11. 藤野恵美 『怪盗ファントム&ダークネス EX‐GP1』 カラフル文庫
  12. フランチェスカ・リア・ブロック 金原瑞人・小川美紀訳 『人魚の涙 天使の翼』 主婦の友社
  13. 村山早紀 『虹の物語』 佼成出版社
  14. 三浦しをん 『妄想炸裂』 新書館
  15. 三浦しをん 『乙女なげやり』 太田出版
  16. ポリー・ホーヴァート 代田亜香子訳 『みんなワッフルにのせて』 白水社
  17. 宮沢賢治 『注文の多い料理店』 角川文庫
  18. ペネロピ・ライヴリー 神宮輝夫訳 『犬のウィリーとその他おおぜい』 理論社
  19. 上橋菜穂子 『天と地の守り人 第二部』 偕成社
  20. フランチェスカ・リア・ブロック 金原瑞人訳 『ウィーツィー・バット』 創元コンテンポラリ