『華麗なる一族』志摩観光ホテルのコース、ガンバス・エスパニョーラ、伊勢エビ、コンソメとエビのコキール、カルピス、バナナとアサヒビール、ヘネシーXO
関西の万俵家と言えば大財閥である。現在の家長・万俵大介(佐分利信)は万俵コンツェルンのトップである阪神銀行頭取であり、現在業界10位の預金高を9位以内に押し上げようと合併を画策している。一方彼の長男である鉄平(仲代達矢)は銀行を次がず祖父・敬介の残した鉄鋼会社・阪神特殊鋼の専務として働いており、自社に溶鉱炉を持つことを計画してメインバンクである阪神銀行に融資を頼もうとするが、敬介似の鉄平を疎んだ大介は融資額を減額。鉄平は親子二代にわたる知人であり大同銀行頭取である三雲(二谷英明)に融資増額を依頼することになる。実は大介が鉄平を疎んでいるのはただ敬介に似ているからではなく、自分の不在中に敬介が妻・寧子(月丘夢路)を犯して出来た子ではないかと疑っていたからだった。さらには万俵家には家庭教師兼執事として高須相子(京マチ子)が同居しており、彼女は大介の愛人でもあったため、末妹の二子(酒井和歌子)は彼女に不快感を抱いていた。
野望渦巻く大財閥一家の愛憎と政治劇を描く。3時間半にわたる上映時間にそのドロドロっぷりが余す事なく描かれている。登場人物がやたら多いが、キャストが超豪華なため誰が誰かわからなくなることはない。特に良いのは西村晃かな。
┃ 志摩観光ホテルのコース
まずアバンタイトル、万俵家の人々はお正月を志摩観光ホテルのレストランで過ごしている。コース料理を頼んでいるらしく、円卓を囲む一族のまわりをボーイが回って皿にスープを注いでいく。彼らはお正月には毎年ここでくつろいでいるようだ。確かこのホテルのレストランは伊勢エビカレーが有名なはず。巨大怪獣大決戦みたいなエビっぷりのよいカレーである。
┃ ガンバス・エスパニョーラ、伊勢エビ
神戸のお屋敷へ帰ってもディナーは超豪華。平日なのに。スペイン料理にしましたわよと、ガンバス・エスパニョーラなるものが出される。ガンバスというのはエビのことらしいので、エビのスペイン風……前菜だろうか。そしてテーブルの上にはまたもやたらでっかい伊勢エビまるごと料理が2尾ほど乗っている。真っ赤なエビが得体の知れない華麗感を醸し出している。エビが好きということがビンビンに伝わってくる。
┃ コンソメとエビのコキール
大同銀行には役員用の社食があるようだ。ぱっと見普通のちょっと高めレストラン。そこで頭取の二谷英明が頼むのがコンソメとエビのコキール。コキールとは“エビ・カニ・魚などを下調理してソースであえ、貝殻または貝殻形の器に盛って天火で表面を焼いた料理”らしい。つまりエビのコンソメ焼き……? どれだけエビが好きなのだろうかこの人々は。二谷英明は万俵一族ではないが。
ちなみに二谷が食堂へ来る前、別のテーブルで同銀行役員の西村晃が四角いお重に入った何かを下品にかき込んでいる。もう食べ終わってしまっているので中身はわからないが、かきこむお重と言えばうな重だろうか。そしてコーヒーを注文して二谷のテーブルにちゃっかり座るのであった。さすが叩き上げの貧乏人は違うのである。
┃ カルピス
その西村晃が佐分利信に招かれて阪神銀行の頭取室に通されたときに出されるのがカルピス。いや、はっきりカルピスと謳っているわけではないが、グラスに注がれた乳白色の少し透明感がある液体と言えばカルピスでしょう。大の大人が三人揃ってカルピスを出されているさまはなんだかカワイイ。