第一プログレス社「LiVES 2014年2、3月号」に「京だんらん 西陣千両ケ辻」を取り上げて頂きました。
第一プログレス社「LiVES 2014年2、3月号 リノベーション2014」に「京だんらん 西陣千両ケ辻」を取り上げて頂きました。
機会がありましたらどうぞお手に取って見て下さい。
「京だんらん 西陣千両ケ辻」http://www.expomade.com/works/kd_nishijin.html
LIVES(ライヴズ) VOL.73 2014/2月号[雑誌]
- 出版社/メーカー: 第一プログレス
- 発売日: 2014/01/15
- メディア: 雑誌
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京阪神エルマガジン社「Richer 2月号」に「茶わん坂の家」を取り上げて頂きました。
京阪神エルマガジン社「Richer 2月号」の「それいけ!物件調査隊」のページに「茶わん坂の家」を取り上げて頂きました。
機会がありましたらどうぞお手に取って見て下さい。
「茶わん坂の家」http://www.expomade.com/works/kmrd.html
- 出版社/メーカー: 京阪神エルマガジン社
- 発売日: 2014/01/04
- メディア: 雑誌
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京町家リノベーションシェアハウス オープンハウスのご案内
オープンハウスのご案内です。
株式会社八清(ハチセ)様が企画の、京町家シェアハウスのリノベーション設計監理を当事務所で担当させて頂きました。
オーナー様のご協力で内覧会が行われることになりましたので、ご案内致します。
京都の街中にこんなお家がまだ残っていたのか、と驚いた去年の現地調査から約1年とちょっと、多くの方々のご協力でなんとか完成にたどり着きました。ぜひ皆様にも昔ながらの西陣の町家が持つ空間の豊かさを感じて頂きたいと思います。
入居希望者の募集も近々行われると思いますので、シェア生活にご興味のある方も是非!
京だんらん西陣千両ヶ辻 現地内覧会
日時:7/20(土) 11:00~17:00
現場住所:京都市上京区今出川大宮下ル薬師町243番地
詳しくは株式会社八清のwebsiteをご覧下さい。
http://www.share-hachise.jp/nishijin/open/index.html
皆様のご来場お待ち致しております。
H邸 風を感じる藤森の家
小さな藤森の家
外観
リビング
少し時間は経過してしまいましたが、新築物件を手がけましたので紹介させて頂きます。
この木造の家は、陽当たり、風通し、静けさ、周囲の木々の緑にも恵まれた素晴らしい環境を存分にいかして、五感に気持ちよい住まいとなりました。
ダイニング部分から南のリビング方向をみる
上部はロフトで繋がっている
施主のH様ご家族は、岡山から京都に移ってこられたそうで、幾つかの我々の作品の素材感やテイストで気に入って下さっており、連絡を頂きました。
む、瀬戸内海でもうちの仕事が話題になっているということですか。
「もとは京都出身ですので、岡山に移る前に幾つかの物件で知っていたんです。」
そ、そうですか。・・・ありがとうございます。
普通なら郊外に離れなければなさそうな周辺環境を利便性も込みでこの敷地は兼ね備えていました。
敷地は北面と南面がそれぞれ私道に面しています。南北両方向から車でもアプローチ出来る上に、それが小さな回遊道路となっているのため、交通量は限られていて、小さなお子さんが道に出て遊んでいても、過度に心配しなくて良さそうです。
それにしても素敵な敷地ですよね(更地を眺めながら)。1階にリビングでも2階にリビングでもどちらにしても問題なさそうですし、南北のどちらをメインアプローチにするかも自由ですね、わくわくします。
また、一般的なプランよりも、Hさんご家族の生活の仕方や嗜好にあわせて、より私的で特別な家を作らなければ我々に依頼してもらう面白みがないですね!
いやあいい敷地だ。・・・特に竹やぶがいい。
「あの、台詞がやけに説明的ですね・・・それで私達が住みたい家のイメージですが・・・(略)」
吉村順三の「小さな森の家」が好きで、あのような雰囲気の家に住みたい、と言われました。小さな森の家は大変有名ですし、好きだという方は多いです。どういった部分に魅力を感じて惹かれるのかは人それぞれかとも思いますが、一つにあの自然の中にある佇まいの雰囲気は外せないでしょう。
しかしあえて都市の中で自宅として住む、という事を考えていきますと、敷地にイメージに沿って適したものが作れるのか、色々と熟慮が必要です。
また、森の家は特にプロポーションが美しいと思っています、窓の縦横の比率などがそうで、一階のコンクリート部分のボリュームと二階木造部分のバランスなども、素晴らしいと感じる要因だろうなと。そこにはまず当然拘りましょう。しかし、森の家から藤森の家に持ち帰ってくるべきものは、やはり空中感覚というか、鳥になったような暮らしの出来る家を作る、ということになるだろうな、と周囲の木々や緑を見渡して強く思い描きました。
ふう、一服させて下さい。
もぐもぐ。というわけで、この敷地に似合う、風が心地よく、森の中でボートに揺られているような家、ということをテーマに設計しましょう。折角藤森ですし。
フフ、んまいb
「・・・。兎に角、風通しが良いのはいいですね」
風が心地よい家というのは、気分がふわりと上昇して気持ちが上向きになります。
地下鉄のホームから改札に向かって階段を上がる時にごうごうと風をあびたりするけど、あれ、気持ちいいでしょ。
・・・というのはあり得なくって、つまりは単に空気が流れているというだけでは駄目で、やはり空や木々と戯れながらやってくる風に目と身体で触れることが気持ちを開放的に外に向けてくれるわけです。この家はそれをたっぷり味わえます!
見えましたね、路面電車が海を渡っていくのが見えるような家が。(BGM はっぴいえんど)
単に窓から風が入って流れるというのではなく、まるで、自分たちが風の一部になるかのような居心地になれる住まいにしましょう。
南にあるリビングから北のダイニングに向けての大きな空間
床にそっと置かれた脚のないソファが部屋にゆったりとした重力感を与える
窓からすぐ目の前に桜の枝葉や多様な樹木がせまってくる、そんな小さな森の中のような家にしたいので、やはり2階をメインの生活空間にしましょう。
これは、庭との連続性を捨てることを決断するということです。ほんの少しばかりだけ地面を離れた木々との社交空間を。
それにはマンションの高層階ではなく、2階ぐらいが丁度良いでしょう。
ダイニングから窓を通した眺め 桜の葉が美しい
ベランダ部分も全て杉板張りになっている
そして床置きソファーに身を沈めるとき、まさに周囲の緑と一体になります。隣の森の上にふわりとスライドするような。風に乗る帆船のイメージかなあ。
「さっきはボートとか電車とか言ってましたよね。抽象的なイメージばかり言われてもよくわかりませんが、なんだか気持ち良さそうですねー。」
すみませんが、短く結論だけ言うとそういうことなんです。
と、イメージは共有しやすかったHさんですが、実は素材の質感や色や細部のデザインへの拘りを人並みはずれてお持ちの方でした。
こういう素材や色はどうでしょう、といった提案なども沢山頂き、採用させて頂いたり、時にはお互い頭を抱えたり・・。
今思えばこれがかなり楽しかったです。
目標とする好みが遠からずだった為だとは思いますが、なんだかもう一人の自分のような人間に対して設計しているような気分でもありました。
「それ、絶対褒めてませんよね?」
ーーーーーーーー
そんなことないです!
取りあえずプランを具体的に説明します。
一階は至ってシンプルに寝室と個室がメインで、南の庭や玄関アプローチとの関係がとって付けたものにならないよう、仕上げ材に、唐松や、タモなど、日本の建物になじみのあるものを使用しています。
2階のプランは可能な限り南北対称になるよう、真ん中に階段室を設け、南のリビング、北のダイニングとキッチン。そして洗面所とお風呂、それら全てを自由に行き来出来るように明快に配置しました。ぐるぐる回れます。
そして大きなロフト部分でダイニングとリビング双方ををつなぎ、断面方向の循環も加える事で空間に特定の力強いリズムを生み出しています。
2階全体は一つの気室となっているため、家族の声や音や音楽などで様子を知る事が出来ますが、視線を幾つかの場所で巧くかわすことが出来るようにもなっています。
例えばロフトに上がって横になって寛ぐと下からは見えません。お互いの視線を緩やかに繋いだり消したりすることが出来るよう意識を傾けました。
2階の床は全てアピトンの無垢フローリング。普通は土足で使うことの多い南洋材ですが、この素材も船の甲板を想起させる荒々しさと風合いを持っているので、我々が気に入っている木材の一つ。割と強めにプッシュしましたが、Hさんも大変気に入られているとのことです。
そして、藤森で船にゆられ、風になるため、ソファは床に沈み込むようなデザインのものでなければならないと考えました。
脚がなく、床に密着していて且つ座布団や和のテイストが強すぎないものにしなければ、
ということで既製品でイメージしてるのが無いのでオリジナルでデザインして村上椅子さんに作ってもらうことに。今回もまたいい仕事して頂きました。
リビングに凄くあっています。
ダイニングのテーブルとチェアもデザインしました。制作は安井悦子。
ナチュラルなだけではない凛とした強さと柔らかさのあるカタチにするため、脚の角度や丸みの面の面積までかなり緻密に試行錯誤しました。
結果的に座り心地もよく、Yチェアなどより大きさが少しコンパクトに抑えられたので、ダイニング空間がぴりっと引き締まって美しくおさまっています。
アメリカンチェリーのダイニングテーブルとチェア
キッチンもオリジナルで制作、ナラ材を中心に、濃紺モザイクタイルとステンレスを組み合わせて清潔感と懐かしい雰囲気を演出し、ゆっくりと料理の時間を楽しめる場となっています。
奥さんは、おばあちゃんが似合うキッチンがいい、とおっしゃいましたが、40年、50年後にはさらにどんどんいい感じになっていくと嬉しいです。
おばあちゃんになられる頃に生きていたらまた見にきます。似合ってますよ!としか言わない予定ですが。
洗面、脱衣室も、回遊の一部であり、風も抜け、湿気がこもりません。
施工は「ツキデ工務店」さんにして頂きましたが、大変しっかりとした仕事で、終止安心でした。ありがとうございます。
結果として、この場所に住むなら、こんな家がいい!というカタチを表現出来たなあ、と我々の満足度も高いです。
好みのテイストが似ていて、お互い方向性がぶれなかったので、緊張感がありつつも話をする楽しみが毎回ありました。
「話はよくずれていきましたけどね! でも結果的にすごくいい家です。」
褒めて下さってます・・ね? 小さな藤森の家、これから何十年とおつきあいをよろしくお願いします。
G邸
8月に竣工させて頂きました、新築住宅、G様邸を紹介させて頂きます。
G邸外観
2階 リビングダイニングを中廊下から見る
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Gさんご夫婦は、滋賀県大津市に住居を構えるにあたって、我々expoに設計依頼をしてきて下さいました。
まだ購入する土地も決まっていなかった頃のことです。
お会いして抱いた印象は、夫妻とも、とてもおおらかであり、ご自分達の住まいへの期待と要望を明確にお持ちだということでした。
「村上椅子さんのお宅のような家が好きなんです、屋上テラスがあって、懐かしいビルのような雰囲気もあり、建売住宅にはない素材感や色のある生活がしたいんですよ。」
とご夫婦。我々の過去の仕事を気に入って下さっていて、特命で頼んできて下さいました。
屋上ベランダを作ろうと思うと、今は京都市内ではなかなか難しいので、大津というロケーションはバッチリです。
「expoさんのデザインされた場が、どこもそれぞれに好きなので、こんな風にして下さい、というより、我々のためにどんな建物を作って下さるかを楽しみにしてます!」
おお、褒めて下さりつつもさらりと丸投げしてこられましたね、了解です。
でもまずは土地を決めないことにはですねー・・・。
「ここ、どうでしょうか!? ちょっと狭いので家が建てられるのか不安なのですが。」
は、早い! 土地を一緒に見に行かせて頂きます。
成る程、間口がかなり狭く(4m以下)、奥行きが結構ありますね、京都にはよくありそうな土地形状ですが、
大津市でもこのように古い住宅が密集して建ってる場所だとこのような土地が出現するわけですね。
狭い、というのは一つのチャームポイントですから、むしろ素敵な住まい方を提案出来ると思いますよ。
「そうでしょうか。でも大丈夫と仰るならこの土地を購入します!」
あ、全然悩まれないんですね・・。
でも、小さく住むことのメリットは本当に沢山ありますから。
土地代もそうですが、光熱費、税金、無駄な物が増えない、家族の距離が近い、掃除が楽、などなど。広い家では実現出来ない快適さというものもあります。
もちろん、Gさん達の生活にあわせて、小さくても狭さを感じないような、生活が楽しくなる建物に出来るよう工夫しますので。
それでは、と、早速この土地を購入して頂き、プランの打ち合わせを開始します。
将来、お子さんが出来るということも想定して、子供とどのように過ごす場所があれば良いでしょうかねえ・・
「えっと、実は、最近妊娠いたしまして、来年には一人目が産まれる予定なんです。やはり子供からの目線からも家を考え直していきたいです。」
うぉっと。おめでとうございます。先手先手で物事が進みますね! 住まいへの意識もより家族として方向性が具体化するので、引き締まります。
というわけで、この狭小敷地を最大限活かすために、3階建ての鉄骨造とすることにしました。
この土地が商業地区だったので、近隣の家がいつ大きなマンションなどに建て変わるかはわかりません。
そのようなことが将来あるとすれば、陽当たりの問題や、視線の問題、風は抜けるのか、という不安がつきまといます。
だからといって、完全に内部にクローズした住宅にしてしまうと、現段階での気持ちの良い隣の緑や青い空や光を早々と切り捨てることになりのでもったいない。
我々としましては、光、通風を確保するのは大前提として、狭さや小ささを感じさせないよう、どの部屋からも外の緑が見れる中庭を取ること、そして部屋の高さ方向にメリハリをつけて心理的な伸びやかさを感じられることを設計の柱にして、考えていくことにしました。
・・・そんなある日
「突然ですが、今年9月から仕事で海外に一年間行く事が決まりまして、早く家を完成させて引っ越したいんですよねー」と、Gさん夫妻。
ええっ、新築と同時に海外に・・。
我々の斜め前を走っておられるようなGさん御夫妻。
色んな出来事や変化を飄々と楽しんでおられる様子がじわじわと伝わってきます。素敵です、この柔軟性。
とか言ってるとそろそろお子さんも産まれるんでしょう、こんなにお腹も大きいし・・(笑)。
「そうですねー、って、あ、陣痛がきたー」
って本当に今産まれますか! (←実話)
おめでたいこと続きです。なんだか、こうなると私も家族の一員のような気がしてきました。
可愛い子供のためにも住居もポンポンっと建てちゃいましょう。
という展開で、ポンポンと急ピッチで建て方が始まりました。
・・・というのが理想だったのですが、実際の工事に関してはやはりじっくりと、安全に。
天気の良い日にクレーンと鉄骨は絵になります。
鉄骨造にした主な理由は一階に駐車スペースを作るのに木造より有利だということがあります。
また、自由度の高い間取りに出来るので、そのメリットを活かし、建物内に閉じ篭った気持ちにならないように、視線に変化のあるプランを採ります。
では完成した建物に入っていきます。
外から建物を一見すると、普通の単純な箱のようで、周囲に対してオープンでないように見えますが、
玄関を入るとすぐに中庭があり、1階まで十分に光が入り込み、目に優しく一本の木が迎えてくれます。
玄関を入ったところ
中庭の存在によって、締付けらるような圧迫感がない。奥には書斎。
書斎
そして、一階の奥にはご主人の仕事場も兼ねる書斎がありますが、
天井の高さを廊下より上げることで、ある一定数以上の本棚に囲まれる醍醐味を存分に味わえる、本好きにはたまらなイ部屋になってはいますが、
実際は書斎というより男の趣味の部屋にするつもりのご主人でした。先日すでにラジコンが何台か置かれていました。ラジコンは屋上でされるそうです。
本もおいて下さいね、ご主人。
書斎の床、天井、壁は全てラワンベニヤのオイルステイン染めで統一し、渋い味わいの部屋に。
このダークブラウン色と庭からの緑が美しく引き立てあいます。
2階にリビングダイニングキッチンと、スキップフロアで少し上がった位置に寝室があります。
リビングの天井高さを十分に取り、奥の寝室は書斎の上に位置するので天井高さを低く抑え、上下への空間の変化が身体的にも視線的にも動きをうみます。
リビングの窓からは、隣の緑が借景されている。
キッチンも全てオリジナルで制作。扉などはラワンベニヤオイルフィニッシュ仕上げで懐かしいテイストに。
正面の淡いグリーンのタイルをポイントに使い、シックに落ち着き過ぎないようにしました。
キッチンは大きな窓に面していて、外の様子を伺えると同時に、北面の安定した光で調理を楽しめます。
3階には個室と奥様のワークスペース、お風呂と洗面所。
奥様のワークスペースからは、開放的な景色が見れるので、家事がすすみます。のはずです。
左の階段は、屋上に出る階段。実は屋上からは、ぎりぎり琵琶湖が見れるのです。
結果的に大変恵まれたロケーションでした。
3階にお風呂というのは最後まで悩み、打ち合わせも重ねましたが、すぐに洗面所からデッキに出て洗濯物を干せたり、外の景色を見ながらお風呂に入れる、といった開放感を優先させました。
お風呂と洗面所から直接出れるデッキ。風の抜けが良く、洗濯物も不安無しです。
Gさんご一家も無事に引っ越され、大変、楽しんでお住まいになっておられるようでした。
特に0歳の息子さんから、笑顔で感謝されたのは、思い出です・・。気のせいかもしれません。
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この家をすぅーっと吹抜ける夏の終わりの風のように、Gさんも笑顔で山へ芝刈り、ではなく海外へと発たれました。
「早くこの家に戻ってきたいですよ−」
そうですよねっ、一年などあっという間です。その間私が住んでおきましょうか。
実際、狭小住宅のカテゴリーに入ると思いますが、小ささを感じず、光の明暗コントラストが楽しめる、健康的な家になりました。
そして、Gさん達なら持ち前の柔軟性で、どんな家にでもアジャストされていくとは思いますが、この家に住まわれることで、
ワクワクするような時間を少しでもプラスしていって頂ければと思います。
京都工芸繊維大学での授業
新年になりましたが、昨年のトピックの一つとして、我々expoが京都工芸繊維大学の短期授業を受け持つ機会がありました。
工芸繊維大学の大学院生を対象とした、「再生建築実習」と題した授業で、
建築系の中川研究室の学生と、日向研究室の学生を対象に、町家リノベーションの実務に我々と共に関わってもらうという演習授業です。
西陣にある古い町家を購入された我々のクライアントの野口さんに、この一連のプロジェクトを学生と共に進めて良いかとお尋ねしたところ、快諾して頂きましたので、古民家をクライアントの希望にあわせて住み良くリノベーションする、という京都において非常に汎用性の高い仕事そのものに両研究室諸君に参加してもらって、現場採寸、条件聞き取り、プランの作成、提出、見積りに至るまでを監修させてもらうという流れでした。
外観
物件は、非常に典型的な路地奥の町家です。家の奥に織物をするための作業場が残っており、職住一棟型の織屋建という造りです。
織機を支える為の鉄骨の構造物がそのまま残っていました。
ごちゃっと構造物が残っている室内。使い勝手が悪そうです。
普通に考えると、このような鉄骨は生活するには邪魔なだけなので撤去するところですが、我々は折角なので、この構造物をプランに活かすかたちで、そして、町家であることの良さ、例えば奥の庭まで風や視線が抜けることなどを意識しながら、野口さんの希望をカタチにしていくにはどうすれば良いかを考えていくことにしましょう、と学生達に提案しました。
学生と共に、野口さんの希望条件などをお聞きして、現場採寸し、その日は解散。
その後、設計案のチェックなどを経た後(省略します)、今度は大学の構内に野口さんに来てもらって改装案のプレゼンテーションを行いました。
学生達による、クライアントへのプレゼンテーション風景
模型を使っての説明。
彼らにとって、実際に、そのあと住まわれる方を前にプレゼンするのは初めてのことだったでしょう。
頑張って考えたことなどを説明してくれますが、出会って間もない施主さん相手にうまく考えていることを伝えるのはやはり難しいものです。
建築の難しい言葉を使ってしまったり、逆に抽象的なイメージを沢山語ったとしても、聞く人によっては、具体的な想像がつかなかったり、はたまたその案が自分にとって良いのか悪いのか選択しづらい、情報の多さゆえにわからなくなっていく、といった歯痒い状況が生じます。
また、経験が浅い故、自信を持って自分の意見をプッシュする根拠が乏しいということもありますし、実際に現場でどう造られていくかが分かっていないとそもそもデザインの細かい部分を決めるのが難しいことも多々あります。
野口さんは学生の案を大いに楽しんで聞いて下さっていましたが、帰り際にぽそっと「自分が何をしたいのかよくわからなくなってきました」とつぶやかれました。
むむむ、お客さんにこういう思いを持たせるのは芳しくないことだな、と思いました。
我々の監督不足もありますが、クライアントとの意思疎通の熟達というのは何よりも考えていかなければなりませんね。
それでも彼らは、我々が学生の時より随分しっかりしているのは間違いありません。
学生達のプレゼンテーションの様子を横からみて、色々と考えさせられるところもあり、大変興味深い時間でした。
その後、実際に工事が行われ、無事に快適に住まわれるようになりました。
満足しておられるとのことで、良かったです。
工事中 お施主さん自ら作業に加わっておられます
鉄骨の遺構を使った中二階のリビングスペース
皆様お疲れさまでした。野口さんも、長い時間つき合っていただき本当にありがとうございました。
ではまた今年もよろしく御願いいたします。
一級建築士事務所エキスポ
THE NATURAL SHOE STOREの椅子
さて、次は店内に置かれた椅子についての紹介です。
「THE NATURAL SHOE STORE 京都店」には、
様々な椅子、スツールが並んでいます。
靴と椅子というのは、それぞれ人間の体重、身体を下から支えるという点において共通しています。また、立つ、歩く、座る、といった人の基本的な動作に大きく関わっているので、良い椅子、良い靴を使うことは、健康面でも多いに影響があるものです。選ぶものによって気分も全然違ってくるものでしょう。
そしてもちろん、靴を履いたり脱いだりする時には、「腰をかける」姿勢が適していることもありますので、今回、靴屋さんの店内に様々なデザインや健康を意識した靴が並ぶと同時に、色んな椅子も並んでいるなら、機能的である以上に面白いし、お客さんに「腰掛ける」という体験も楽しく感じてもらいたいと考え、全種類異なったカタチ、デザイン、座り心地の椅子を配置する事にしました。
ちょうど今年の夏、京都の大山崎山荘美術館にて、現役の関西の椅子作家達の作品が一同に会した展覧会「かんさい いす なう」 が行われていました。
この展覧会は、椅子好きにとって大変に見応え座り応えのあるものだったのですが、
そこに出展されていた椅子作家の椅子達を中心に、京都店の雰囲気に合いそうなものをピックアップさせて頂き、作家の方にお願いして店舗に置かせてもらうことになりました。
5人(組?)の作家のものを紹介します。(順不同)
樹輪舍の八十原誠の「ヤヤコロ」
前後にロッキングする人気のスツールです。
靴を履く時に前に倒れるのがポイントで、
見た目も座り心地も素朴で懐かしい楽しさがあります。
今回、店舗内の家具大部分も樹輪舍に制作して頂きました。
店真ん中にあるタモの一枚板のテーブルは、力強さと品があります。
坂田卓也製作所のスツール
こちらも京都で活動されている人気の家具作家さんですが、
彼の作る椅子はどれも軽やかさを感じると同時に繊細で美しいです。
お店の雰囲気にも大変溶け込んでいました。
工房minato. 矢部奈津子の椅子
彼女には店舗に3種類の椅子を作ってもらいましたが、
特に座り心地を重視した安定感のある椅子がこれです。
本革と無垢のチェリー材の組み合わせもしっくりきています。
potitek 戸田直美の椅子
我らがアトリエで活躍中の彼女に今回も何脚か提供してもらいました。
何気ない木の削り方や、自由さを感じる曲線にセンスを感じさせます。
安井悦子作のスツール
大変小さくて子供用なのですが、実は大人も座りたくなってしまう。
座面が回転し、楽しく音がなります。
靴を履くのにちょうど良いと感じるかも。
村上椅子のmame stool
椅子張りでおなじみ村上椅子さんのオリジナルスツールは
本革とブナ材によるもので、彼ららしいかわいらしさです。
なんとなく靴にも変形してくれそうな気配です。
オリジナルより座面を低く作ってもらいました。
他にもまだ沢山の椅子が置いてあります。
皆さんも気に入った椅子がありましたら是非何度でも座り直して
楽しんで下さい。もちろん、靴も何度でも履き替えてじっくり寛いで
選んでもらえればと思います。