『グラーグ57』 トム・ロブ スミス 新潮文庫

本書のベストセリフ

「なんでも好きなことをさせて、喜ぶようなことを言っていれば、

子供には気に入られる。それは簡単なことよ。

機関銃を渡して、おまえは革命の子だと思わせる。

魅惑的な嘘よ。

でも、そんなことであの子があなたを愛するようになるとは思えない」

「そんなことはこっちも頼んでない。

なのに、おまえたちは愛を要求する。

ふたりともそういうことの虜になってる。

にもかかわらず、おまえたちと一緒に暮らしていたときのあの子は不幸この上なかった。

今はわたしと幸せに過ごしてる。それが真実だ」


家族愛を否定する素晴しい傑作!

トム・ロブ・スミス一発屋では無かった!

序盤の映像化し辛いトリックにまず唸り、怒涛のストーリー展開に一気読み!

21世紀のエンタメとしてジェンダー観も素晴しい!

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『鏡の殺意』 山田正紀 双葉文庫

最初の1Pで犯人逮捕!

目撃者もいる現行犯で犯人も犯行を認める。

5P後に語られる裁判の結果は無罪。

「確かに僕が犯人です。しかし、真犯人は神なんですよ」

犯人も被害者も事件関係者全てがキ○ガイという変格ミステリの傑作。

サスペンスメロドラマと思わせて、犯行の愛憎をアウフヘーベンしたエンタメの傑作。

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『ババ・ホ・テップ』 ジョー・R・ランズデール 早川ミステリ文庫

「親心」
「デス・バイ・チリ」
「ヴェイルの訪問」(アンドリュー・ヴァクスと合作)
「ステッピン・アウト、1968年の夏」
「草刈り機を持つ男」
「ハーレクィン・ロマンスに挟まっていたヌード・ピンナップ」
「審判の日」
「恐竜ボブのディズニーランドめぐり」
「案山子」
「コジラの十二段階矯正プログラム」
「ババ・ホ・テップ(プレスリーVSミイラ男)」
「オリータ、思い出のかけら」

本書のベストセリフ

「その本にはすべての種類の魂喰らいが出てくる。

政治家とSFファンを除いてね」


PFとSF以外はなんでも書くランズ様のミステリファンタジーホラースカトロ純文学短編集。

尾之上浩司の作品の並べ方が巧い!

一個目はミステリ作家でもホラー作家でも純文学作家でも、

誰でも書けそうな話だが、

二個目からランズ様しか書けない面白い話が加速し続ける!

大笑いするハチャメチャ系が目立ってしまうが、

ラストの「オリータ、思い出のかけら」で、

純文学ファンも泣いて下さい。

私が一番気に入ったのは、

「ハーレクィン・ロマンスに挟まっていたヌード・ピンナップ」である。

主人公はつるっ禿げの髭の生えた老女(古本屋経営)である。

ジェンダー観も素晴しいランズ様の最高短編集。

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『吉原螢珠天神』 山田正紀  集英社文庫

「あやかし」
「辛うござる」
「吉原螢珠天神」

本書のベストセリフ

「功名といえばきこえはいいが、人を殺めることではないか。

人を殺めて、殺めた者の名を首帳に記して、なんの功名ぞ。」


チャンバラSF短編集。

宇宙人を朝鮮妖術師に変えれば、荒山徹の世界になります。

剣禅一如を超える究極の兵法、剣食一如、至高の食材はキムチ!

という「辛うござる」なんて、作者名伏せて読ませたら、

誰でも荒山徹作だと言うだろうw

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『シャーロック・ホームズ最後の解決』 マイケル・シェイボン 新潮文庫

本書のベストセリフ

「老人の目にうかがえたのは、そんなものがあるとすればだが、

私心のまったくない渇望だった。

彼女の"ロマンチックな性格"を良しとしない夫の前では

それ以上説明できなかったが、

その渇望は情欲も物欲も悪意も善意も欠いていた。

それは知識への渇望だ」


ホームズ89才の本当の最後の事件。

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『鳳凰の黙示録』 荒山徹 集英社

時代小説だが、時代を超越したジェンダー観が相変わらず素晴しいし、

荒山独自の歴史観文明観も研ぎ澄まされた、

22世紀に伝えるべき、21世紀時代小説の最高傑作!

生物多様性とか地球に優しいという語句も出てくる

未来への希望を語る美しい時代小説。

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『一年でいちばん暗い夕暮れに』 ディーン・クーンツ 早川文庫NV

なんじゃこりゃあ!

オッド・トーマスで一皮剥けたニュー・クーンツの作品とは思えない。

愛犬が死んだ年に発表された作品で、

これを書いていた時のクーンツは頭がおかしくなっていたと判断します。

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『人喰いの時代』  山田正紀  ハルキ文庫

「人喰い船」
「人喰いバス」
「人喰い谷」
「人喰い倉」
「人喰い雪まつり
「人喰い博覧会」

昭和10年代を舞台にした時代ミステリ短編集と思わせて、

ラストの話で現代も絡み、

それまでの五個の話がひっくり返る構成が見事!

ラストの話のグルーヴ感は素晴しい!

心地よく酔いしれました。

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『「昭和」を振り回した6人の男たち』 半藤一利 編著 小学館文庫

「日本人を振り回した六人〜歴史が転回するとき」 半藤一利
「満蒙に理想は実現せず〜世界最終戦論と石原莞爾」 利根川
「綱渡り外交が遺したもの〜三国同盟松岡洋右」 土門周平
「戻せなかった歴史の歯車〜太平洋開戦と東条英機」 桧山良昭
「米内を斬れに込められた思い〜戦争終結阿南惟幾」 半藤一利
「日本人はまだ十二歳の段階である〜東京裁判マッカーサー」 保阪正康
「戦後最強にして最悪の総理大臣〜戦後日本と吉田茂」 夏堀正元


吉田茂の仇敵の高田保の知人が書いた

吉田茂の章が激情に駆られた文でやはり印象に残る。

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『謀殺の弾丸特急』 山田正紀 徳間文庫

ど素人の日本人観光客8人が、非武装蒸気機関車で、

プロの軍人達が駆るガン・ジープ、ディーゼル船、戦闘ヘリ2機、装甲ディーゼル機関車、戦車を退治してしまう痛快な大傑作!

総合評価は「火神(アグニ)を盗め」 の方がもちろん上だが、巻き込まれ型なので、

余分な作戦会議がなくて、リーダビリティはこっちの方が上かな?

襲い掛かる敵を知恵で武器を自作しながら、撃退し続けるノンストップ娯楽大作!

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『仲達』 塚本青史 角川

世界征服を企む悪の軍事独裁国家蜀の麻薬王孔明

敢然と立ち向かった正義の美青年仲達の物語(ちょっと違うw)。

蜀が北朝鮮のように国家事業として麻薬を栽培して悪い事してるのは一応描かれてます。

描写が地味過ぎて熱烈お勧めではないが、

悪の蜀に興味がある人は是非。

反骨の魏延を麻薬漬けにして大人しくさせる描写を丹念に書いて欲しかったw

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