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2018-10-14

[]13期・45冊目 『青い星まで飛んでいけ』

青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)

青い星まで飛んでいけ (ハヤカワ文庫JA)

内容紹介

それは人間の普遍的な願い。

彗星都市での生活に閉塞感を抱く少女と、緩衝林を守る不思議な少年の交流を描く「都市彗星のサエ」から、

祈りの力で育つ”という触れ込みで流行した謎の植物をめぐる、彼と彼女のひと冬の物語「グラスハートが割れないように」、

人類から“未知の探求”という使命を与えられたAI宇宙船エクスの遙かな旅路を追う表題作まで、

様々な時代における未知なるものとの出逢いを綴った全6篇を収録

現代もの2編に宇宙もの(スペースコロニーだったり、劇的に変化した人類種の物語だったり)4編を収録。


「都市彗星のサエ」

氷を切り出して他惑星に送るという産業のためだけに人々が暮らし、生活が完結している都市彗星。

ひょんなことから森林地帯に入り込んでしまったサエは不思議な少年・ジョージィに出あう。

縛られた運命から逃げ出すため、密かに脱出計画を準備しているジョージィに共感したサエは手伝うから自分も一緒に連れていって欲しいと言う。

一作目は実に著者らしいボーイ・ミーツ・ガールな物語。

都市衛星の独特な生活ぶりや、鬱屈した生活から抜け出そうと足掻くジョージィとサエの想い。そして二人が苦労しながら脱出ポッドを作り上げていく過程がとても楽しいです。

その顛末もうまくまとめられていますね。


「グラスハートが割れないように」

持つ人の祈りで成長するというグラスハート。

中にはコケ類のような物が入っていて、実際に肌身離さず持っていると勝手に増殖していく。食べても体に無害であり、その人によって味が変わるというグラスハートはたちまち大流行するのだが・・・。

いわゆる似非科学的なものに夢中になってしまった彼女。

康介と時果の二人はお隣同士で幼馴染だが、時果の家では父が亡くなってフルタイムで働く母、重い病を持つ祖母という境遇からくる辛さの救いになっているのかと思うと、はっきりやめろと言えななくて、康介ならずとももどかしい思いになります。

本作ではあっけなく手放すことになったからいいけれど、宗教にせよ、似非科学にしろ、人の弱った部分にするりと入り込んできて、気が付いた時には手遅れになってしまう恐ろしさがありますね。


「静寂に満ちていく潮」

身体を合わせるのではなく、交感神経を直接結び付けることで、肌とは比較にならないほどの快楽が得られて、性に関係なく関係が結べるようになった未来。

ある場所に網を張っていた主人公はついに異星人とのファーストコンタクトを果たすが、どうも彼女?は活発的なタイプではなさそうで・・・。

著者の長編『天冥の標』を思い起こさせる超感覚的エロティシズムを感じさせる一遍

本作のように人間がその体を自由に組み替えて宇宙で難なく暮らす時代に平和的なファーストコンタクトを経たら、見た目が大きく異なる異星人とも結ばれることがあるのだろうか。


「占職術師の希望」

見るだけで人の天職がわかるという主人公は占職術師として事務所を持って、今日もその人の天職を教えてあげている。

中には四つ天職を持つ人がいて、その中でも画家を選んだ女性と共にテレビ局を訪れてテロ未遂事件に遭遇する。

なぜならば、そこにはテロリストの天職を持つ男がいたからであった。

天職が見えるならばぜひとも見て欲しいなぁと思った反面、主人公自身は能力の代わりに天職が無いというのが悲しい。

それでも腐ることなく、主人公は苦労してテロリスト集団を捕まえる天職を持つ人物を探そうと奔走する。

シリーズものにしても良さそうだなと思った作品。


「守るべき肌」

肉体から離れて仮想世界で生きるようになった人類は怪我も病気も無縁となり、その時に応じて自由に自身の体さえ置き換えて遊び暮らしていた。

そんな時、突然現れた少女ツルギ。

彼女から、あるゲームに参加してほしいと依頼される。

ファンタジー世界で鎧竜に乗り、押し寄せるオーガなどの魔物から城を守るという。

しかし、不備のある設定やルールに参加者たちから不満が出始めるのだが、実は彼女は重大な秘密を抱えていて・・・。

その立場になってみないとわからないけど、仮想世界の住人になった人間たちの自由奔放さと切実に訴えるツルギの願いが対照的でした。

ストーリー自体はヒロインを救う少年といったラノベ的ではあるけれど、背景も含めて実に巧く練られていますね。


「青い星まで飛んでいけ」

地球外知的生命体の探査を目的に作られたAI人格が艦隊を率いて銀河系を回るという話。

数々のファーストコンタクトを経験するが、友好的な接触もあれば、時に騙し討ちされて撤退することもある。

そんな経験に嫌気がさすこともあるけど、自らに課せられた使命には抗えずに何万年もかけて旅を続けていく。

そんな彼の心情は哀切を帯びていて、妙に人間っぽいところに共感が湧きます。

そんな彼を観察しているのがオーバーロード(上帝)という存在。

オーバーロードと言えば、『幼年期の終り』を思い出すけど、絶対的上位存在であったそちらと違い、本作では親子みたいな関係に近いですかね。時に憎まれ口をたたくこともあるけど、実力はかけ離れているみたいな。

最後は身分違いの恋人との交際を反対された息子のような感じでした。

2018-10-08

[]久しぶりの母校

実は中学3年となったうちの娘は今年受験生。

このダイアリーを始めた当初はまだ幼児でしたので、時が経つのは早いものです。

もともとのんびり屋なんですが、やっぱり夏休み明けくらいから受験を意識してピリピリし始めてきてますね。

公立第一志望は二年の時から早々に決まっているのですが、併願の私立はまだ迷っている様子。

今は昔と違って高校の説明会が公立私立に関係なく行われていて、9,10月は月に三回も行っています。

第一志望の公立校には妻と娘と3人で行きましたが、他の高校はほとんど妻が一緒に行っています。

つい先日、第一志望とは別に公立の中で候補に入れている高校の説明会に行くことになりました。

埼玉県内でも古くからある伝統校で、かつ私の母校でもあります。

ということで、「あなた、連れて行ってよ」と頼まれて20ん年ぶりに母校に行ってまいりました。


うちからだと通勤で使う上り電車とは逆の下り方面なので、まずそっちに電車に乗ること自体が久しぶり。

駅に着いてから徒歩で15分ほどなんですが、3年間通っていたのに道が思い出せない…。

とはいえ、同じように中学の制服を着た親子連れがぞろぞろと歩いていくので、付いていく内に風景を思い出していくといった感じでしたね。

寄り道したことのあるファーストフード店ゲーセンや本屋が無くなっているし。

駅前のコンビニはさすがに残っていましたね。7・11は強い。


さて、説明会は校長による長い割りにはあまり中身の無い挨拶に始まり、教頭による無難な学校説明。次に生徒会長による一年を通じた学校生活の紹介。最後に海外留学に行った女子生徒の体験記までスライドを使用して行われました。

正直言うと、先生よりも生徒の話が良かったね、と後で娘と言い合いました。

体育館での説明が終わると、三十数名ごとに生徒が引率して学校案内。

正門から入った時にはあまり変わっていないように感じられましたが、やはり中身はだいぶ様変わりしていましたね。新しく建てられた施設もありましたし、校舎内も改修されていました。20ん年の年月はやはり長かった。

それでも伝統校らしく、全体的に歴史の重み(言い換えれば古めかしさ)を感じます。

体操着は変わっていましたが、制服は自分の時と同じまま。

学校内を歩いている内に自然と自身の高校時代を思い起こしてきて、ノスタルジックな気持ちを抱いていました。

同時に中二病ならぬ、高二病に罹ったような恥ずかしい過去までいろいろと思い出してしまい……。

とはいえ、全体的に見て母校は良い学校だったと思います。

それを娘には伝えておきましたが、やっぱりもともとの第一志望があるだけに同窓生となる可能性は少なそうです。

2018-10-07

[]13期・44冊目 『ゼウス―人類最悪の敵』

ゼウス―人類最悪の敵 (ノン・ノベル)

ゼウス―人類最悪の敵 (ノン・ノベル)

内容(「BOOK」データベースより)

北海道で妊娠女性の胎内から奇怪な生物が出現、山中へ逃げた。数カ月後、それは羆のような巨体と驚異の運動能力を持つ超獣と化して、民家を襲った。そして同様の事件が世界各地で起きた。やがて“ゼウス”と名づけられた化物は次々に増殖、大群となって都市部へと侵入した。地獄と化した北海道。ついに警察・自衛隊・住民を巻き込むゼウス殲滅戦に突入したが、惨事はさらに拡大した…。いったいゼウスとは何物か?人類はこの最悪の敵を斃せるか…。俊英が満を持して放つ驚愕の超弩級サスペンス。

以前、パニック小説まとめ記事を作った際に日記を書き始めた前から読んだ本でなにかあったかなと探していたのですが、後から思い出したのが本作。

ということで、もう十数年前に購入して読んだ本を再読しました。


北海道西部の四市市の中学校で野外スケッチに出かけた美術部の生徒及び引率の女性教師が行方不明となります。

数日後に発見された女性教師は妊娠しており、担ぎ込まれた病院でその胎内から胎児とは違う蛇のような小動物が飛び出して、医師を傷つけながら逃亡するという事件が発生。

それが全ての始まりでした。

死亡する前に女性教師はUFOに攫われて人体実験を受けたと供述していましたが、当局は犯人によって偽の記憶を刷り込まれたのではないかと推測。

消息を絶った地点を掘り返して調べると、生徒たちの遺骨、そして未知の卵が発見されたのでした。

やがて時が経ち、雪解けが始まる頃に原野を車とそん色ないスピードで疾走する獣が発見されます。

それは羆並みに大型で、一瞬にして二階に飛び上って壁を登れるほどの瞬発力や高い身体能力、両手のかぎ爪を振るって人を殺し、何発も銃を撃ち込まなければ倒せないほどに頑丈な外骨格を持つ驚異的な生物。

それが何体も四市市に出現して人を襲い始めたのでした。

死亡するとなぜか身体が融解して消えてしまうのですが、苦労して捕獲した個体を分析したところ、サルに近い脳を持ち、学習能力を有するという。

ただでさえ個体としての戦闘能力が突出しているのに、群として知恵を使うようになったら手に負えなくなる。

自衛隊の懸命な防衛作戦でも対処しきれず*1札幌小樽といった都市でも被害が広がる中、ゼウスと名付けられた獣の研究やこれを野に放った犯人捜しも続けられるのでした。


このゼウスと名付けられた人と似て非なる生物が持つ獰猛な性質に加えて驚異的な戦闘能力。これだけでも人類にとっておおいなる脅威なのですが、さらに既存の生物を母体とするところ。

つまり本能として食欲以外に排卵期の雌を襲って繁殖を行おうとする。そこには人間も含まれるというのがエグイ。

それゆえに女子供を率先して逃がそうとするも、バスが渋滞で進まないところをゼウスの群に襲い掛かられてしまうという悲劇が繰り返されます。

ゼウスは北海道だけでなく、東北の山地でも発生、そのまま南下する避難民を襲い、徐々に関東に近づいていく。

日本だけでなく、アメリカでも同じような事件が起こっており、このまま人類はゼウスに滅ぼされてしまうのか・・・。


舞台となった四市市の中学3年生・鎌田亮と韮沢明海を中心に生徒たちだけで避難するグループ。元自衛隊レンジャーで現役復帰して札幌で防衛に従事する亮の父。

この親子を軸に対ゼウス作戦が描かれていきます。

ゼウスが増加するにつれて市民が受ける被害が雪だるま式に膨れ上がっていき、避難民が大挙して南下するにつれて人間同士の争いも頻発。

そのパニックの内容はかなり衝撃的であるにも関わらず、冷静に対処する研究者や自衛隊幹部目線が多いので、あまり凄惨さを感じませんね。

著者特有の淡々とした文章も関係しているのでしょう。

そんな中で女子が圧倒的に多い中学生グループを率いる亮たちの避難行(時にゼウスとも戦い)がいかにもサバイバルといった感じで先行きが気になってしまいました。*2

主軸となる鎌田親子以外には、四市市の市議である明海の父が逃げ出した市長の代わりに音頭を取り、住民と力を合わせて市街地を要塞化して自足自給体制を築いていくのが素晴らしかったですね。

ゼウスが宇宙人や正体不明の生物とかじゃなくて、人が作ったものとして具体的な対応策をひねり出す過程も良かった。同時に犯人グループの異常さまで浮かび上がってしまったけど。

その反面、政府の対応がわかりにくかったり、本土の民間の様子はほとんど省略された点がパニック小説としてちょっと物足りなく思いました。

*1:自衛隊の弱みである弾薬の少なさが徐々に露呈する

*2:移動は父の縁故にも助けられたのでかなりラッキーではあったが。

2018-09-30

[]13期・43冊目 『精霊幻想記11.始まりの奏鳴曲』

内容(「BOOK」データベースより)

嫉妬にかられた貴久の暴走に気づき、ギリギリのところで美春を救い出すことに成功したリオ。貴久の計画に協力していた亜紀の処遇も含めて話し合いがもたれる中、事件を起こした兄姉に複雑な感情を抱く雅人は、リオたちに今後の自分の身の振り方について相談を持ちかける。一方、リオは迷惑を掛けた実家の様子が気になるセリアを連れ、再びクレール伯爵領へと足を踏み入れるのだが、そこで思いがけない人物たちと遭遇し―!?

11巻から第2部開始となっていますが、前の10巻にて拉致された美春を助けるために宙を飛んで魔導船に乗り込み、貴久を叩きのめすという山場があったためか、今回はその後始末も含めて繋ぎ的な内容でした。

前半は事件を巻き起こした貴久と亜紀の処遇が長々と話し合われます。

決闘に敗れたというのに、貴久がリリアーナからの説得からも耳を背けて事件を起こした動機は現実を見ようともしない子供じみた我儘とリオに対しての嫉妬。

未遂とはいえど王城を騒がせた以上は極刑に処せられても仕方ないところを勇者という立場が複雑にしている。

なんというか、国王臨席の元で少年少女の痴情のもつれが引き起こした事件について話し合っているのが滑稽にしか見えません。

勇者の処遇がそれぞれの国としても重要であるという設定があって、かろうじて話が成立させているとも言えます。

そういうわけで、前半は特に会話シーンが多くて、しかもその中身はいつもの繰り返しで面白味には欠けます。

あえてみどころがあるとしたら、精神的な成長を見せた雅人でしょうか。

はっきりいってリオ以外の男性の登場人物は敵か引き立て役ばかりだったところに幼いながらも格好良いところを見せてくれました。

とはいっても、貴久と亜紀のお目付け役としてセントステラ王国に去ってしまったので、しばらく出番はなくなってしまうでしょうが。

女性陣の中ではシャルロット王女というやり手キャラクターがいい刺激を与えてくれていると思います。それでもリオの壁は突き破れないでしょうが(笑)


後半はセリアを伴って密かに実家に戻り、父親に会わせるために地下から侵入したところで、クリスティーネ王女と再会。

転移に巻き込まれた日本人少年二人を連れて、逃避行の最中であったという。

このあたりはweb版の流れを踏襲しています。

ただ、追手に勇者・重倉瑠衣が加わっていることで、リオとの戦いに多少は彩が加わっているかな。

城門から出たクリスティーネ王女やセリアたちに迫る魔物たち。そこにサラ、アルマ、オーフィアの三人が見事な戦いぶりをみせたことで、ただリオについてきただけじゃなくて見せ場を作りましたね。

でもやっぱりいいところはリオが持って行ったかな。

リオのことを想っていながらも積極的な行動に出られない妹フローラ*1よりも、姉であるクリスティーネの方がしっかりとした性格で好ましい気がしてきました。

さらにリオに相対したレイス。

正面切って戦うことになるのはいつの日になるのやら。

*1:美春とキャラが被っていて存在感が薄い

2018-09-28

[]13期・42冊目 『明日の子供たち』

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)

三田村慎平・やる気は人一倍の新任職員和泉和恵・愛想はないが涙もろい3年目。猪俣吉行・理論派の熱血ベテラン。谷村奏子・聞き分けのよい“問題のない子供”16歳。平田久志・大人より大人びている17歳。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日が待っている!児童養護施設を舞台に繰り広げられるドラマティック長篇。

ソフトウェア開発の営業から転職した三田村慎平が新任職員として児童養護施設「明日の家」に赴任してきた初日が冒頭のシーン。

「明日の家」は小学生から高校生までおよそ90人の子供たちが暮らしているため、広い玄関口には靴がたくさん。特に小学生男子と思われる運動靴がバラバラになって落ちているのを見て、慎平は親切心から拾って整理してあげようとしたところで上司となる和泉和恵に注意されて元の通りに散らかされてしまいます。

自分たち職員は入所している子供たちの親ではないので、愛情をもって一人ひとりの世話ができるわけではない。

小さな子供といえども、規則を守らせていかなければならない。

その言葉に反発を覚える慎平ですが、やがて彼も子供たちに接したり、先輩たちに教えられながら日々の業務に追われるうちに児童養護施設の現実が見えてきます。

同時に児童養護施設で暮らす子供たちの感情にも振り回されます。

それに戸惑いつつも、和泉や猪俣のような先輩たちのように職員として一人前になれるように奮闘の毎日が始まるのでした。


最初は児童養護施設に入所している子供たちへの一般的な印象がそのまま慎平を通して綴られて、それに対して和泉はもちろんのこと、カナやヒサといった入所が長い高校生たちから現実を突き立てられる。

カナの言う「施設にいるからかわいそうだと思われるのは違う」「最初の頃はなんて良いところなんだと思った」といった言葉に意外さを感じるのと共にどれだけ過酷生活を送っていたのだと思われます。


一般家庭と違って集団生活を送るために規則を守らなければならないこと(それが時代に合わなくても)。プライベートを確保するのが難しいこと。自由に使えるお金が少ないこと。

色眼鏡で見られることを危惧して学校では施設にいることを秘密にする子が多くて、苦労していること。

親がいても一緒に暮らせない事情があること。

主に経済的な事情により、将来に対する選択肢の幅が狭く、高校卒業と同時に独り立ちするために多くが就職をすること。たとえ進学を希望していても、その先は厳しいこと……などなど。

実際の施設の職員や子供たちを取材して、物語を作り上げたのだとわかるほどに細かく描かれていますね。

ちょっと前に話題となった児童養護施設を取り上げたドラマのことを「ファンタジー」と切って捨ててるのが笑えました。

ただ、きっかけの一つになったのは良かったと。それくらい一般人の認知度は低いし、予算割当も少なくて施設の老朽化や職員の人手不足が深刻であることが登場人物を通して訴えられています。


ラストの方で「明日の家」ではなく、現役・卒業問わず施設の子が気軽に寄れる目的の「ひだまり」という多目的ならぬ無目的施設が登場します。

しかし、県議会での”仕分け”で予算削減の対象になってしまうのです。

同じ福祉でも老人ホームのように誰もがいずれは関係する問題では関心が高まりやすいし。なおかつ入所者は選挙権を持っている。

その点で児童養護は入所している間は選挙権を持たないし、卒業したら頼れる者も無く、一人で厳しい現実の中で生きていくのに精いっぱいで余裕がなくなる。

つまり、政治(おとな)の世界ではエアポケットに落ちてしまう問題であると指摘されているのは目から鱗が落ちる感じでした。

例のテレビドラマのようにありえない設定からの衝撃やドラマチックな展開で目を惹くのではなく、本作のように可能な限り現実に沿った内容のフィクションにて認知度が広まっていくのが良いのでしょうね。