星のつぶやき このページをアンテナに追加 RSSフィード


PHD2の日本語マニュアルを公開しています。こちらからどうぞ。


個人サイト「Starry Urban Sky」もよろしく。

2016-11-21

[][]ステライメージ7におけるフラット補正 22:43 ステライメージ7におけるフラット補正を含むブックマーク

最近、撮った写真のフラット補正にだいぶ気を遣うようになってきたのですが、そこでよく利用しているのが「ステライメージ7」から搭載されている「ガンマフラット」です。これは、ライトフレームとフラットフレームがきちっと合っていない場合に、フラットフレーム側の明度分布を調整して両者を合わせ込む機能です。


なぜフラットが合わないのか?

「フラット補正」とはそもそも、天体を撮影した時と全く同じ条件で均一な光源を撮影し、「光の分布だけが記録された画像」を作成。これで目的の写真を「割り算」してやることで減光などを補正してやろうというのが基本的な考え方です。

しかし、口で言うのは簡単でも、これを完璧に行うのは至難の業です。理由はいくつか考えられます。


周辺減光が大きすぎる

明るい光学系を用いた場合や、レデューサーを用いた場合、一般的に周辺減光は大きくなりがちです。また、光害地での撮影の場合、背景レベルが高いため、周辺減光が目立ちます*1。このような場合、ほんのわずかな補正のズレも非常に目立つことになってしまいます。


光害カブリの影響

たいていの場合、夜空は地上からの光で照らされている(光害)ため、たとえ周辺減光の補正がきれいにできたとしても、明るさや色の偏り(カブリ)が残ります。また、周辺減光に加えてカブリがあるせいで、正しくフラット補正ができたのかどうかの判断自体が難しくなります。ただし、光害カブリ自体はたいてい一方向への傾斜なので、事後の補正は比較的容易です。


光源の問題

フラットフレームは、理想的には天体と同じく、無限遠からの平行光線を用いて作るべきものです。しかし実際には近距離の光源を使ったり、トレーシングペーパーで光を拡散させて使ったりする場合がほとんどです。このような場合、ライトフレームとは光の回り方が異なるため、明るさの分布の不一致が起こります。


明るさの違い

フラット補正は「割り算」なので、飽和や黒潰れさえしていなければ、本来、ライトフレームとフラットフレームの絶対的な明るさの違いは問題になりません。フラットフレーム側の「明暗の分布」がライトフレームと相対的に一致していればいいのです。しかし、ここで問題になるのがデジカメの性質です。

デジカメでは、黒潰れや白飛びを防ぐために、あるいはセンサーの性質として、実際の明るさと記録されるデータとがきれいな直線比例関係にはなっていません。そのため、ライトフレームとフラットフレームの明るさが大きく異なる場合、たとえ正しく撮影できたとしても、記録された明暗の分布は一致しなくなってしまいます。


これらの原因のうち、最初のものは(理屈の上でいえば)「難易度」の問題ですし、2番目の光害カブリについては、一応事後の補正が可能です。面倒なのは後者の2つで、たとえ正しい手順でフラットフレームを取得できたとしても、ライトフレームと合わない可能性が出てきます。


これを救う可能性があるのが「ガンマフラット」機能というわけです。


「ガンマフラット」は何を行っているのか?

ステライメージ7」から搭載されたこの機能では、正しい補正ができるようにフラットフレームの明度分布に調整を加えます。操作できるパラメータとしては「ガンマ」と「オフセット」が用意されています。しかし説明書を見ても、これらが具体的に何をどう調整しているのかが全く分かりません。


そこで、簡単な実験をしてみることにしました。


用意したのは下のような25%グレーから75%グレーへのグラデーションを書いた16bit画像(1024×256ピクセル)です*2

f:id:hp2:20161121222202j:image

これをライトフレームおよびフラットフレームと見立て、各パラメータを操作して補正結果がどうなるかを見ます。パラメータを弄っていない状態であれば、補正結果は均一な明度の画像になるはずです。なお、補正結果の計測には「ImageJ」を利用しました。バイオ系の研究者や画像解析を行う人たちにはお馴染みのツールかと思います*3


さて、それでは早速結果の方を見てみましょう。まずは「ガンマ」のパラメータを弄った結果から。

f:id:hp2:20161121222203j:image

パラメータを弄っていない場合(ガンマ=1、オフセット=0%)、均一な50%グレーの画像になったのは予想通り。一方、「ガンマ」を小さくした場合はフラット補正の効きが弱く、大きくした場合には逆に過補正になっています。


この結果から、調整後のフラットフレームの明度分布を逆算する*4と、以下のグラフのようになります。

f:id:hp2:20161121222204j:image

何も弄っていないフラットフレームが直線関係になっていないのは、おそらくグラデーション作成に使ったグラフィックソフトの仕様。まぁ、これはご愛嬌として……。

ガンマが小さくなるとグラフが寝て、逆に大きくなると立ち上がってきます。前述したようにフラット補正は「割り算」ですから、このグラフの傾きが大きくなればなるほど、フラットフレームの明るいところに相当する「ライトフレームのピクセル」は大きい数で割られるために暗く落ち込み、逆にフラットフレームの暗いところは小さい数で割られてぐっと明るくなります。これがいわゆる過補正の状態です。ガンマが小さい場合はこの逆です。


これだけだと、フラットフレームのコントラストが弄られているだけのように見えますが……。

f:id:hp2:20161121222205j:image

調整後のフラットフレームについて、それぞれ最も暗いところを0%、明るいところを100%として明暗分布の相対値を描いたのが上のグラフです。これを見ると、ガンマを変化させることで特に中間調の明るさ割合が変化することが分かります。まさに、レベル調整で画像のγ値を変化させた時と同じような動きです*5

ただし、実際の数値の上では中間調だけではなく、上にも書いた通りフラットフレームの明暗差、すなわちコントラストも同時に変化しているので、その点は注意が必要です。



次に「オフセット」の効果を見てみます。

f:id:hp2:20161121222206j:image

こちらは、オフセット値を小さくすると過補正になる傾向があります。オフセット-50%については、過補正が行き過ぎて何やら変なことになっています*6。一方、オフセット値を大きくすると補正の効き方が弱くなりますが、数字の増え方の割には変化が少ない印象です。

f:id:hp2:20161121222207j:image

フラットフレームの明度分布を逆算すると上のグラフの通り。たしかに、オフセット値を小さくする方向ではグラフが大きく変化しているのに対し、大きくする方向では変化が比較的小さくなっています。

f:id:hp2:20161121222208j:image

一方、明度分布の相対値を書いたグラフでは全てのカーブが完全に一致しています。つまり、オフセット値の操作では明暗のカーブの形状自体は一切変わらず、明暗の傾き、すなわちフラットフレームのコントラストだけが変化していることになります。


以上のような特性を考えると、理想的にはオフセット値で明暗の端を決めたのち、ガンマで中間調を整えるのがよさそうに思えます。しかし実際には、ガンマを動かすとコントラストも同時に変化してしまうので話がややこしくなります。再度オフセットを弄れば調整できるはずですが、理詰めで追い込むのは限界がありそうで、結局のところ色々と試行錯誤するしかないのでしょう。

それでも「オフセット値ではフラットフレームのコントラストしか変化しない」、「ガンマを動かすとコントラストだけでなく中間調のカーブも変化する」ということが分かるだけでも、多少は役に立ちそうな気がします。


余談

オフセット値を弄ったときに各ピクセルの明度が元画像の何倍になっているかを計算してみると、

となっていて、倍数yは

y=¥frac1{0.02x+1}

の式で表されることが分かります(x:オフセット値%)。


一方、ガンマの方は、関数実態が分かりそうで分からない状態です。やっていること自体は上坂浩光氏が紹介しているガンマフラットの手順と同じようなものだと思うのですが、どうも計算数値が合いません。ヒマな人、誰か計測してみませんか?(^^;

*1:例えば、もし逆に背景が真っ黒なら、周辺減光があっても気づかないでしょう

*2:対応ファイル形式の関係で、ここに上げているのは以降のものも含めすべてJPEGになっています。もし再検証したいという物好きな人は、申し訳ないですが各自でお願いします。

*3:書きながら思ったけど、これでライトフレームの明度分布を解析して近似曲線を求めれば、適切なフラットフレームを用意できる可能性があるかも……?

*4:補正後フラットフレームの明度=補正後ライトフレームの明度÷補正前フラットフレームの明度×32927。32927は定数(=16bit階調の50%)

*5:もっとも、「余談」で書きましたが、単純にγ値を変化させているわけでもないようです

*6:なので、以降の計算では除きます。おそらく明度ゼロ以下のところにまで「原点」がずれているのだとは思いますが……。

忍者忍者 2016/11/23 15:45 ステライメージ7の有効な使い方につなげたいのですが、私には難しそうです。以下のように勝手に考えたのですが。
1)フラットフレームでムラ?がある部分を見つける、補正したい重点を見つける
  ・カメラ(CCD)の埃、、
  ・ただし、カブリ、周辺減光はレタッチで修正する
2)ライトフレームのその部分の明度を見る
3)フラットフレームを弄り、明度を近づける。 主にγで
4)これだと割り算で補正が有効になりやすい?

HIROPONHIROPON 2016/11/23 19:33 正直、もう少し分かりやすい結果が出るかと思っていたのですが、結構クセがある感じです。
直接的にこの結果を生かすのは難しいかもしれません。

フラットフレームのコントラスト調整幅は「ガンマ」をいじった時の方が明らかに大きいのが
分かったので、実践上は、やはりこちらで明度分布を調整するのがてっとり早そうです。

結局、今やってる方法と変わらないという…(^^;

2016-11-13

[]オフアキシスガイダー 17:00 オフアキシスガイダーを含むブックマーク

以前、セレストロンのオフアキシスガイダーを、CP+で展示した開封品ということで格安で入手していたのですが、調整等々が面倒で長いこと放置してしまっていました。しかし最近、ガイド鏡を使った長焦点鏡での撮影に限界を感じていたこともあり、重い腰を上げて試運転してみることにしました。


オフアキシスガイダーでは、カメラとオートガイダーを同焦点に調整するのが面倒臭いのですが、これは以前に検証済みです。

説明書では、カメラ側に11.55mmのスペーサーを入れ、オートガイダー側は31.7mmスリーブに直接差し込むか、6mmのスペーサーを介してオートガイダーを取り付けるやり方が推奨されています(下図は「シュミット」ウェブサイトより)。

f:id:hp2:20130729144136j:image

しかし、EOS KissX5 SEO-SP3とStarlightXpress Lodestarの組み合わせでは、この構成では同焦点にはなりませんでした。色々と試行錯誤の結果、以下の構成でようやく同焦点にピントが来ました。

f:id:hp2:20161113164922j:image

カメラ側のスペーサーは付属品中最短の6mmのものに。それでもなおオートガイダー側のピント位置は外側だったので、ボーグのメタル延長筒【4604】でかさ上げしています。オートガイダー側の細かいピントについては、オートガイダーの抜き差しや、オフアキシスガイダー側のヘリコイドで微調整可能です。

f:id:hp2:20161113164924j:image

実際に使ってみた感想ですが、Lodestarはチップ面積がそこそこ広いので、思ったよりは星が視野内に入る印象です。ASI120MMを買った時には売りに出してしまおうかとも思っていたのですが、手放さなくて正解でした*1。とはいえ、領域によっては星が1つもない、という事態も容易に起こりそうな感覚ではあります。一応、プリズムの向きを円周方向に360度回せるようになっているので、星が見つからない可能性はだいぶ減るとは思いますが、この「円周方向に回す」操作性が決してよくはない*2ので、一発でガイド星が見つかることを祈るのみです。

イメージサークルの周辺部を使うということで、星像は決してよくありませんが、ゆがんだ星像でもPHD2でのガイドに支障はありませんでした。追尾精度も、さすがにガイド鏡ガイドに比べるとずっと良好で、これなら長時間露出も安心して行えそうです。

[]青い雪玉星雲 17:00 青い雪玉星雲を含むブックマーク

せっかくオフアキを持ち出したのだし、月明かりの中でも撮れる対象を……ということで、小さい惑星状星雲をターゲットに。

f:id:hp2:20161113164925j:image

2016年11月12日 EdgeHD800(D203mm, f2032mm) SXP赤道儀

Canon EOS Kiss X5, ISO400, 露出30秒×32コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用

セレストロン オフアキシスガイダー+Lodestar+PHD2によるオートガイ

ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

宵にほぼ天頂付近にまで昇る、「青い雪玉星雲」ことNGC7662です。カタログ上の明るさは9等前後ですが、単位面積当たりの明るさが明るいので、月明かりや光害にも負けずよく写ります。

視直径は木星よりやや小さいくらいと、非常に小さな天体ですが、中央の星をリング状の構造が取り囲み、さらにそれを繭状の構造が取り囲んでいるという複雑な構造が見て取れます。「青い」という形容詞に引きずられがちですが、リング中には赤っぽい部分も見え、ガスの成分や励起状態に差があるであろうことをうかがわせます。

惑星撮影用の動画カメラを使えばさらに詳細を浮かび上がらせることができそうですが、それは今後の課題ということにしておきましょう。


ちなみにどのくらい小さいかというと、ノートリミングでこの状態。

f:id:hp2:20161113164926j:image

やはり最低でも、ここで使った焦点距離2000mmクラスの望遠鏡は欲しいところです。


ところでこの星雲の愛称ですが、しばしば「青い雪だるま星雲」という表記を見かけます。しかし、元になっている英語での愛称が「Blue snowball nebula」なので、「青い雪玉星雲」が正解です。おそらく、語呂や「雪だるま」という言葉のなじみ具合から広まってしまったものだと思いますが、公的天文台でも使ってしまっているところがあったりして、なんとも困ったものです。

*1:チップサイズはASI120MMが4.8×3.6mmに対し、Lodestarは6.4×4.75mmと、面積にして1.8倍近い差があります。

*2:オフアキシスガイダー円周の3本の留めネジを緩め、手で回す。手を添えながらやらないと、オフアキごとカメラを落っことしそう。

th2546th2546 2016/11/14 08:10 長焦点にはオフアキの方が良さそうですね。
青い雪玉星雲は横浜の自宅からも眼視で青く見えます。M57もそうですが惑星状星雲て以外と眼視で行けたり、写真も写りやすいと言う印象があります。

HIROPONHIROPON 2016/11/14 23:19 > オフアキ

やっぱり、ミラーシフトだの機材のたわみだのを気にしないで済むのは精神的に楽です。
問題は、一番出番がありそうな春の銀河シーズンにガイド星が見つかるかどうか。
あのあたりは天の川から遠くて星が少ないですし……。


> 惑星状星雲

単位面積当たりの明るさがあって、街なかからでも楽しめる貴重な天体ですよね。
バンドパスフィルターを使うとさらにコントラストよく見えるようですが、どうなんでしょう?

th2546th2546 2016/11/15 08:34 同じ惑星状星雲ですがM27は自宅からはUHCフィルターを使わないと眼視では見えません。
85mmでも効果大なので大口径ならもっと有効なのではないでしょうか。

HIROPONHIROPON 2016/11/15 22:05 たしかに、M27は大きく広がってるせいか想像以上に見づらいですね。
以前、EdgeHD800で試したときも、かろうじて存在が分かる程度だった覚えが。
まぁ、都心からならそれでも御の字なんでしょうけど。

UHCフィルター、やっぱり効果あるんですね。OPTOLONGのなんかはだいぶ安価ですし
買ってみようかしら……。

上杉蒼太上杉蒼太 2016/11/17 07:34 青い雪玉星雲、とても綺麗ですね! 今度私も挑戦してみます。レデューサー無しのVC200L直焦点でいけそうですが、ガイド鏡がコ・ボーグ36ED(焦点距離200mm)ではちょっと不安……。でも試してみます。

HIROPONHIROPON 2016/11/17 12:20 VC200Lなら十分行けますね。ガイドの方も、撮影データを見てわかる通り短時間露出でOKなので、
コ・ボーグで十分でしょう(露出時間によってはノータッチでも行けるかも?)。
今回は、あくまでオフアキの試運転のついでに撮った形なので……。

これからの季節だとエスキモー星雲なんかも狙い目ですね。同じく小さな惑星状星雲ですが、
なるべくシーイングのいい時にチャレンジしてみたいところです。

忍者忍者 2016/11/20 22:24 オフアキはよく使用しています。同じセレストロンですが、1つだけ不可解なことが過去ありました。カメラ側を42mmで接続した場合に、周辺減光が発生。APS-Cなので問題ないはず?48mmに変えて発生がなくなりました。

HIROPONHIROPON 2016/11/20 23:29 それは不思議ですねぇ。プリズムの影を含め、こちらは記事中の構成で特に問題ありませんでした。
鏡筒やパーツの組み合わせの問題でしょうか…?

2016-11-09

[]上げたのは4日後 21:58 上げたのは4日後を含むブックマーク

11月3日の文化の日に引き続き、5日の夜も晴れたので公園に出撃しました。

f:id:hp2:20161109212730j:image

翌日が日曜なので、時間もたっぷりとれる……ということで、都心では難易度高めの淡い対象を狙うつもりで機材を準備。ところが、この日は快晴だったものの湿度が高めで、透明度は3日夜より明らかに劣ります。淡い天体を狙うには不向きな天候です。空気もベタッと冷たくて想像以上に不快*1

こんな調子だったのでテンションもダダ下がりで「予定を変更 or 中止」という選択肢もよぎったのですが、この機を逃すと次がいつになるか分からないので、結局強行することにしました。


狙いは「アンドロメダ大星雲」ことM31と「プレアデス星団」M45。どこが淡いんだと突っ込まれそうですが、M31の方はできるだけ腕の方まで写したいですし、M45は星団の周囲に広がる淡い反射星雲を捉えたいところです。

M31の方はまだ処理に取り掛かっていませんが、M45の方はひとまず形になったのでこちらと本家ウェブサイトの方に。

f:id:hp2:20161109212729j:image

2016年11月6日 ミニボーグ60ED+レデューサー 0.85×DG(D60mm, f298mm) SXP赤道儀

Canon EOS Kiss X5, ISO200, 露出480秒×15コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用

ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド

ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

プレアデス星団」や「すばる」の名前で知られるM45は、年齢約6000万〜1億年の若い星からなる散開星団です。明るいので、都心でも肉眼で容易に存在が分かる数少ない星雲・星団の1つです。もっとも、1つ1つの星を見てみると、一番明るいアルキオーネでも2.87等。あとは3.5等以下の星しかなく、意外と暗いことに驚かされます。それでも明るく見えるのは、これらの星が狭い範囲内に集中しているためです。

写真を見ると、星の周りに青白いガスが淡く広がっているのが分かります。これは、M45とは直接関係のない星間ガスが、星団の星々の光を反射して輝いているものです。


上で書いたようにこの日は空の透明度が悪く、これの撮影は夜半過ぎからの開始だったものの、光害の影響もかなり大きく出ていました。光害には青〜緑色の成分がかなり多く、そのような中で青く淡いガスを浮かび上がらせるのはなかなか大変でしたが、感度設定をISO200まで下げて露出時間を稼いだかいあってか、どうにかあぶりだすことができました。それでも明らかに露出不足を感じましたので、できればもう少し条件のいい日に、露出ももっとかけて撮りたいところです。

一見、周辺減光が補正しきれていないように見えますが、これはおそらく星団周辺のごく淡いガスのせいで中央が明るくなっているだけだと思います(^^;

ちなみに、今回は天文改造カメラではなく、先日中古で入手した未改造のKissX5を用いて撮影しています。赤い光の透過性の高さが災いして、天文改造カメラだと「赤ハロ」が目立ちやすいのですが、一般品だとIRカットフィルターが長波長側をカットしてくれるため、多少マシになる感じです。M45は青色が印象的な天体。赤い色が目立ったのでは興ざめですからね。

[][]結露と機器の耐久性 21:58 結露と機器の耐久性を含むブックマーク

ところで、上の写真を撮った夜は湿度が高く、夜半前から機材を入れてきた台車、小物入れなどが次々と結露し始めました。都心は舗装面が多くて地表付近が乾燥していること、ヒートアイランド現象で地上付近の温度が比較的高いことなどからそもそも結露しづらいのですが、撮影を行っている公園には広い芝生があって湿度が高くなりやすいため、夜露が発生したようです。

幸い、レンズまでは結露しなかったので写真に実害が及ぶことはありませんでいたが……怖かったのは赤道儀およびコントローラ(STARBOOK TEN)、そして制御用のPCです。ほぼ一晩撮影していた結果、それなりにビショビショになってしまいました。


基本的に電子機器は結露するような環境下で使うことを想定していません。PCの場合はオフィスなどで使うのが本来の使い方ですので、これは当たり前。本格的に過酷な環境で使うことを想定するなら、パナソニックToughbookシリーズやデルのRuggedシリーズのような高耐久性PCを使え、というのがスジなのでしょう。

しかし問題は赤道儀コントローラです。結露するのが当たり前のような環境で使うものなのに、防滴・防水を謳っている製品というのはついぞ聞いたことがありません。直接的に結露が原因で壊れたという話もあまり聞かないので実際にはそこそこ大丈夫なのかもしれませんが、怖いのは確かです。


昔の手動で動かしていた架台とはわけが違うのですから、「電子機器」としての配慮はあっていいように思います。例えばビクセンのポラリエの説明書を見ると「電子パーツを含む機器が結露した状態で電源を入れないでください。故障の原因となる場合があります。」とありますが、従来よりも広い範囲の人が使うであろう機器でこれというのはあまり感心しません*2 *3

今まで、この手の装置は使う人がある意味「分かっている人」に限定されていたので、取り扱いやメンテナンスがキッチリなされてきた結果、問題が表面化してこなかっただけかもしれません。裾野を広げようとするのなら、あまりユーザーの知識・技量に甘えすぎない方がいいのではないでしょうか。

*1:実際、あとで気象庁のデータを見たら、夜半頃の湿度が90%近くあったようです。

*2:とはいえ結露について言及しているだけまだマシで、「水のかかるところで使うな」程度のお定まりの文言が書いてあるか、そもそも書いてすらいない場合がほとんどです。

*3:もっとも現実問題として、ポラリエに限らず、駆動部のある赤道儀を防滴・防水化するというのは機械的に難易度が高いだろうとは思います。でもせめてコントローラーくらいは……。

th2546th2546 2016/11/11 08:23 PCの結露、私も気になってました。特に遠征すると終了間際には結露でびっしょりですね。実はこれで以前PCが壊れてしまいました。

HIROPONHIROPON 2016/11/11 22:52 ですよねぇ。赤道儀のコントローラとかは最悪、ビニール袋にでも放り込んで
口を縛っておけばなんとかなりそうですが……。

考えたのですが、放射冷却で表面が冷えるのさえ防げれば結露しないと思うので、
よくある「簡易スタジオ」みたいなものに入れて上から黒い布でもかけておけば
大丈夫かもしれません。

↓たとえばこんなの
http://www.etsumi.co.jp/html/products/detail.php?product_id=29

……というか、遮光布1枚かけておくだけでも大丈夫かも……?

PC自体で対策といううことなら、コスパ的には本文にも書いたRuggedシリーズですかね。
14インチディスプレイの一番安いモデルで158980円なので、存外悪くないかもしれません。

th2546th2546 2016/11/12 15:17 簡易スタジオ良いかも。買ってしまいそうです。

HIROPONHIROPON 2016/11/13 01:37 あれなら失敗しても安いし、そのままブツ撮りにも使えますしね(^^;

昔盆提灯を照明に使ってた奴昔盆提灯を照明に使ってた奴 2016/12/07 16:17 初めまして。冷却CCD(CMOS)の記事は非常に参考になりました。ありがとうございます。
夜露除けですが、私はカラーボックスのインナーボックスを使ってます。ダイソーで数百円で売っているようで安価ですし折り畳みもできて便利です。ノートパソコンの前の部分が少しはみ出ていますが、以来夜露が降りることもありません。他に検討したのは食品のハエ除けの傘みたいな物(ちゃぶ台が似合うあれです)、それと折りたたみができませんがカバコ等の収納ボックスぐらいでしょうか。

2016-11-06

[]3か月ぶりの出撃 22:44 3か月ぶりの出撃を含むブックマーク

今年の関東地方は異常といっていいほど天気が悪く、秋に入っても曇りや雨ばかり。まったく出撃できませんでした。調べてみると、最後に写真を撮ったのが7月29日の夜。一応、8月6日にもわずかな晴れ間に望みを託して強行出撃しているのですが、増え続ける雲に阻まれ撤退を余儀なくされています。

そんなこんなでフラストレーションが溜まっていたのですが、11月になってようやく秋晴れが訪れるようになってきました。そこで「文化の日」の11月3日夜、いつもの公園に出撃しました。翌日は平日で仕事ですが、1日だけ我慢すれば週末ですので、極端な夜更かしさえしなければなんとかなるでしょう。


とはいえ、撮影にあまり長時間かけるわけにもいきません。比較的てっとり早く撮れる対象ということで、散開星団を狙ってみることにしました。いろいろ考えた結果、カシオペヤ座にあるM52を撮ってみることに。

f:id:hp2:20161106223036j:image

M52は、メシエ天体としてはおおぐま座銀河M81&M82に次いで天の北極に近い位置にあります。北側の空は新宿渋谷方面からの光害がきつくて敬遠しがちでしたし、中途半端な時間を生かすにはちょうどいいでしょう。

なお、M52の近くには「バブル星雲」または「しゃぼん玉星雲」の愛称で知られるNGC7635という散光星雲があり、35mmフルサイズ版で1500mmくらいまで(APS-Cなら1000mmくらいまで)の焦点距離ならM52と一緒の画面に収めることができます。淡い星雲ですが、ついでにこちらも写ってくれれば御の字です*1


この日の月没は19時18分なので、機材のセッティング終了後、月が沈むまでの間は月を撮って遊びます。

f:id:hp2:20161106223037j:image

ISO100, 1/15秒

月齢3.6で高度が低い上、デジカメでのワンショットですから大した画質にはなりませんが、普段わざわざ三日月を撮る機会もあまりありませんから、暇つぶしの割にはいい経験になりました。

f:id:hp2:20161106223038j:image

ISO100, 10秒

地球照もバッチリ。当たり前のことですが、満月のときに見えるのと同じ地形が見えることに改めて感心してしまいます。ちなみに、月のすぐ左下に星が見えますが、7.8等のこの星(GSC6241.704)が、ちょうど食が終わって出てきたばかりの所だったようです。


f:id:hp2:20161106223039j:image

そうこうしているうちに月も沈んだので、いよいよ本命の撮影開始です。この日の透明度はまずまずだったとは思いますが、真冬ほどのスッキリした感じではありません。時間帯が比較的早いことも加わり、光害でカシオペヤ座すらかき消されそうです。

それでもISO400まで感度を下げ、1枚あたりの露出時間を稼ぎます。切りのいいところで16枚は確保したかったのですが、最後の方は雲に邪魔されて、結局確保できたのは14枚。コンポジット時のS/N比は16枚合成のときと比べて5%ほど悪くなる計算ですが、実質的な影響はほぼないでしょう。

f:id:hp2:20161106223040j:image

「撮って出し」の写真ではM52はもちろん、バブル星雲もその中心部が見えています。これなら少しはやる気が出ようというものです。

というわけで、出てきたのがこちら。

f:id:hp2:20161106223041j:image

2016年11月3日 ED103S(D103mm, f795mm) SXP赤道儀

Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO400, 露出480秒×14コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用

ミニボーグ60ED(D60mm, f350mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド

ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

カシオペヤ座には数多くの散開星団がありますが、その中で最大のものが写真左上のM52。星の密集度が高いこともあって、望遠鏡で見ると散開星団というよりは球状星団っぽく見えます。

そして右下が「バブル星雲」ことNGC7635。その名の通り、中心部に泡のような構造を持つ星雲です。主にHα線で輝いているため眼視での確認は困難ですが、写真ではその特徴的な構造がよくわかります。

この「泡」を形作っているのは、泡の中に見える8.7等の星です。その正体は高温の大質量星で、質量は太陽の約40倍、温度は37500度、明るさに至っては太陽の約40万倍もあります。この星が引き起こす激しい恒星風が星間ガスにぶつかり、泡構造を形成したものと考えられています。


さて、この写真ですが、「撮って出し」の状態ですでに星雲中心部が見えていましたので、処理も比較的楽……と思われたのですが、あにはからんや。星雲自体はあぶりだせるものの、北天のひどい光害のせいでフラット補正がなかなか決まりません。

結局、ライトフレーム、フラットフレームともに現像後に三色分解し、ステライメージでR, G, Bの各プレーンに対してガンマを調整しつつフラット補正を実行。補正後のプレーンをRGB合成して戻し、各コマをコンポジット後、残った光害カブリを補正するという、かなりの手間が必要になりました。最近やっている常套手段ではあるのですが、なにしろ画像処理も丸3か月ぶりでしたので、方法を忘れてしまっていてかなり苦労させられました。

また、M52周辺は至る所に淡い散光星雲が広がっていて、背景色の偏りがカブリのせいなのか、本当に星雲でそういう色になっているのか判断がつきません。とりあえずB, Gプレーンは可能な限り均し、Rプレーンは「そういうもの」として受け入れる方向で処理を行いました。他の人が同領域を撮影したものと見比べる限り、大きな間違いはなさそうな気がします。

*1:これをターゲットに決めた時点で、当初の「てっとり早く撮れる」という趣旨はすっ飛んでいたり。

KENKEN 2016/11/08 23:56 こんばんは!
毎回思うのですが、都内それも23区内からコレが撮れることにびっくりです
自分も毎回遠くに遠征に行くのがキツイので、近くの荒川の土手から色々チャレンジしてみようかと思ってます
光害地での撮影、なんかコツみたいなモノがありますか?

HIROPONHIROPON 2016/11/09 21:24 KENさん、こんばんわ。

> 毎回遠くに遠征に行くのがキツイ

遠征はカネ、時間、体力、気合のいずれも使う上、出かけて行ったのに晴れなかったとかなったら
ダメージがキツいですしねぇ。というわけで、贅沢を言わなければ、近場での撮影はおすすめです(^^;


> 光害地での撮影

いくつか気を付けていることはあるのですが、大きなポイントとしては
(1) 欲張らない
(2) 露出はたっぷりと
(3) フラット補正は必須
といったあたりでしょうか(主に星雲狙いの場合)。

(1)ですが、まずは無理せず明るめの天体を狙うのがよいかと。また、露出時間を十分に確保するため、
一度に撮る天体数を欲張らないのも大事です。

次に(2)について。光害にかき消されかけている光を拾うため、露出をなるべくたっぷりかけて
S/N比を稼ぎます。ただ、光害が酷いとすぐ真っ白に飽和してしまい、あまり露出時間をかけられません。
そこで、デジカメの設定感度をあえて下げて、コマあたりの露出時間を長くとるようにします。
また、画像処理を強烈にかけるので、コンポジット枚数も多めに確保します。

(3)のフラット補正は非常に大事。難易度が高くて、十分満足のいく結果はいまだに得られていないのですが、
それでもまったくやらないよりははるかにマシです。続く画像処理の難易度が全く変わります。
そしてどうしても補正しきれない場合(おそらく大部分がそう)は、いさぎよくトリミングしてしまいましょう。

あとはPCに向かってひたすら画像処理。種々の処理の範囲を限定する「マスク」のさばき方が
結構キモになるんじゃないかと思います。このあたりは自分も試行錯誤中ですが…。

KENKEN 2016/11/10 00:24 こんばんは!
>出かけて行ったのに晴れなかったとかなったらダメージがキツいですしねぇ。
まさに最近コレを経験して、がっかりばかりでした
せめて車で1時間圏内に澄んだ宇宙(そら)があれば良いんですけど

光害地での撮影方法・・・φ(..)メモメモ
なるほど、あえて感度を下げ露出を稼ぎ、それをコンポジットですか
後はフラットにマスク・・・
どちらも面倒くさがって行ってこなかった事ですが、やっぱり必要ですね
いずれ荒川の土手からシリーズ(笑)が始まったら、また色々教えてください!

HIROPONHIROPON 2016/11/10 23:18 > せめて車で1時間圏内に澄んだ宇宙(そら)があれば

究極は山の中に観測所ですかね(^^;
宝くじでも当てたら速攻でひきこもるのに(ぇー


> フラット&マスク
面倒くさく感じますが、とりあえずフラットだけでも絶対にとっておいた方がいいです。
トータルで見ると結果的に楽になりますから。

完璧を追求しようとするとものすごく難しくなりますが、街なかで撮る以上、完璧な補正は
そもそもほぼ不可能なので、ある程度「えいやっ」でやってもいいと思います。

もっとも、色々やっているうちに凝りだして、沼にずぶずぶはまっていくのはお約束ですが…( ̄▽ ̄;ゞ

忍者忍者 2016/11/11 23:12 いつもながら素敵な出来栄えに敬服です。M52は地味(星団はほぼ)ですが、NGCが入ると見栄えがしますね。
フラットはどういう撮り方をされていますか?私は、今は諦めて取得せず(補正せず)やっています。
追加:以前の記事の続きですが、QHY9ポチリ、テスト開始です。天候に恵まれないのとわからないところがあり試行錯誤中です。

HIROPONHIROPON 2016/11/11 23:49 忍者さん、こんばんわ。
QHY9購入、おめでとうございます。これで冬の「赤いの」はバッチリですね(>▽<)b

> 星団
微光星まで出そうと露出を延ばすと、あっというまに飽和して色が飛んでしまいますからねぇ。
かといって露出を切り詰めると星の数が物足りないし……。街なかからだとむしろ星雲より
難しい対象かもしれません。

以前、手元にあったソフトフィルター(プロソフトン[A](W))を組み合わせてみたこともあったのですが、
直焦点だとソフト効果が強すぎてイマイチでした。もう一段効果の弱い「ソフトンスペック(A)」も
手元にあるので、一度試してみようと思っています。


> フラット
ITYLAB(http://el-itylab.com/)で購入したELシートを、パネルに仕立てて使っています。
パネル自体の作り方は天文ガイド2012年4月号に載っていた記事そのまま。
で、このままでは明るすぎるのでROSCOのNDフィルターシートを挟み込んで減光しています。

撮影風景はこんな感じ。
http://urbansky.sakura.ne.jp/flatframe.html

細かいことをいうと光の色味を空の色に合わせるべきなのですが、そこは目をつぶってしまっています。
どうせ完璧には合わせられないので……。

色ムラが気になる場合は、最近では本文に書いたように、現像後に三色分解してガンマやオフセットを
追い込んでいます。方法としては邪道(本当はフラットは現像前に適用すべき)ですし、処理枚数が
3倍になるので大変ですが、それだけの効果はあると思っています。

忍者忍者 2016/11/12 20:53 大変参考になりました。紹介のELパネルのどれを選ぶのかはよく理解できませんが、よく読んでみます。
以前は、5. ELパネルの代わりにPCの液晶ディスプレイを撮る「液晶パネルフラット」で、鏡筒前面にポリシートをきっちりかぶせ、PCでPowerpoint画面を作り撮影していました。しかし、鏡筒サイズが大きくなりにつれ難しくなりさぼっていました。再考します。

HIROPONHIROPON 2016/11/13 01:57 私が買ったのは「カット出来るELシート」のホワイトと銅箔テープ付コネクターコード、
インバーターの3点だったと記憶しています。本当に天ガの記事そのままなので、
作り方含め、ぜひご覧になってください。

自作が面倒という向きには、海外メーカーからいくつか既製品が。
http://www.teleskop-express.de/shop/index.php/cat/c229_Flat-Field-foils-and-boxes.html

基本的に個人輸入の形になりますが、それほど高いものでもないので、これはこれで
一考の余地はあるかと思います。

ねお丸ねお丸 2016/11/20 10:30 こんにちは。
いつもTwitterでお世話になっています。
こちらでは初めまして。
ブログではM52のご指摘ありがとうございました。

バブル星雲、都内からでもこんなに写るんですね!
いや〜、凄いですね。
ちょっと感動物ですよ、コレは。
自分も都内に住んでいるので、もっと積極的に撮影してみようと思います。
自宅前とかなら、移動時間が短縮出来るのは嬉しい限りですから。

HIROPONHIROPON 2016/11/20 13:16 ねお丸さん、こんにちわ。

例の件は、ちょうどこれを撮った後だったので運よく気づきましたが、銀河にせよ散開星団にせよ、
同種の天体が集まっている所ではお互い気をつける必要がありそうですね。メシエでさえカタログの
記載ミスとかやってるわけですし……(^^;

私の場合、バイクや自家用車といった移動手段がないので、やむにやまれず……という面もありますが、
今のデジカメは空の条件が良ければ暗い分子雲だって写せるくらいですから、その性能を振り向ければ
都心でも案外いけるもんです。

画像処理に手間暇はかかりますし、暗いところで撮った写真には到底かないませんが、高速代もガス代も
移動時間もいらないので、忙しい都会人も臆せずチャレンジしてみたらいいと思います。

2016-10-16

[][]AFボーグ 18:08 AFボーグを含むブックマーク

このところあまりにも天気が悪いことから、ミニボーグの地上での活用に走っています。前回までにフィールドスコープとしての使用にはおおよそ目途がついたので、続いてペンタックスユーザーの特権とでもいうべき「ボーグのAF化」に着手しました。

ペンタックスは過去製品についても互換性を重視していることで有名ですが、その流れで、昔のマニュアルフォーカスレンズをオートフォーカス化するアダプターをいまだに販売しています。

f:id:hp2:20161016173749j:image

それが「F AFアダプター 1.7x」。鳥撮りをやる人の間では有名ですが、これをボーグとカメラの間に挟むことで、オートフォーカスが可能になるとともに焦点距離が1.7倍に伸びます。私が持っているミニボーグ60EDに適用した場合、口径60mm、焦点距離350mm×1.7=約600mm、F10の望遠レンズになるわけです。

とはいえ、新品で買うと4万円前後するパーツなのでこれまで買うのをためらっていたのですが、状態の良い中古が2万円台で手に入りそうだったので、思い切って購入してしまいました。外箱や説明書こそないものの、本体やレンズには傷などもなく、新品と遜色ありません。

f:id:hp2:20161016173750j:image

で、これをミニボーグ60EDと接続します。写真の構成は筒先から

  • ミニボーグ60ED対物レンズ【2260】
  • M57ヘリコイドS【7757】
  • M57/60延長筒L【7604】
  • ミニボーグ鏡筒DX-SD【6011】
  • M57/60延長筒S【7602】
  • カメラマウントホルダーM【7000】
  • カメラマウント PK(改)【50021】
  • F AFアダプター 1.7x
  • K-5IIs

という組み合わせ。これで重さは800g程度しかありません。F値が違うとはいえ、焦点距離が同程度の「HD PENTAX-DA 560mmF5.6ED AW」が約3kgもあることを考えると、取り回しの良さが際立ちます。しかも後者は50万円以上もするのですから……。


上記構成で注意が必要なのがカメラマウントで、今回用いている【50021】は仕様としてカメラ側に接する面のアルマイトが剥がされています。こうすることでカメラ側の接点が短絡し、ボーグ側をカメラレンズとして認識、AFが効くようになるのです。私の場合、こういう使い方もするかと思って最初からこのカメラマウントを買っていたのですが、もし通常仕様のカメラマウント(ペンタックスK用【5002】)を買っていた場合、やすりなどで接点が接触する部分のアルマイト被膜を剥がすことでも同様の効果が得られます。もっとも、先人たちの情報を見るに、被膜が頑丈で相当骨が折れるようですが……(^^;

撮影モードとしては、上記構成の場合「絞り優先自動露出」(Av)および「マニュアル露出」(M)のみが有効となります。ボーグにはカメラ側から操作できる絞りがありませんから、実質、マニュアル露出専用と考えてよいでしょう。それでも、数回試し撮りすれば適した露出設定はすぐ分かりますから、それほど大きな支障にはなりません。

他にも、特定のピンのみ短絡させることで絞り値をカメラに送ったり、「シャッター&絞り優先自動露出」(TAv)を有効にする技があるようなので、興味のある方は調べてみるとよいでしょう。


また、カメラ側のメニューで「絞りリングの使用」を「許可」に設定しておかないと、シャッターが切れないので、その点は注意が必要です。


なお、AFが効くようになるといっても、アダプター側の調整可能範囲は限られるため、ドローチューブの抜き差しやヘリコイドでおおまかにピントを合わせたのち、最後にAFでピントを詰めるという使い方になります。それでも、あるとないとでは大きな違いです。

「F AFアダプター 1.7x」は仕様としてF2.8より明るいレンズでの使用を推奨しています。これは、焦点距離の延長=F値の上昇によって位相差センサーへ届く光量が減少することを想定してのことだと思いますが、最近の機種ではAF性能が向上しているためあまり気にしなくて良いようです。実際、上記の組み合わせでもかなり暗いところまでAFが動作しました。普段使いでは特に問題ないと思います。

[][]AFボーグ動作試験 18:08 AFボーグ動作試験を含むブックマーク

f:id:hp2:20161016173751j:image

組み上げた「AFボーグ」を持って、多摩川河川敷で試験撮影を行ってみました。

カモなどが渡ってくるにはまだやや早いですが、ウやサギなどの留鳥が格好の被写体になってくれます。

f:id:hp2:20161016173752j:image:w640

ミニボーグ60ED+F AFアダプター 1.7x, K-5IIs

ISO400, 1/800秒

対岸でカワウがくつろいでいます。中央の褐色の個体はおそらく若鳥でしょう。

f:id:hp2:20161016173753j:image

縮小なしでトリミングしたのが上の写真。これで被写体までの距離は100m前後です。写り方と被写体の大きさを考えると、今のシステムだとこのくらいが限界でしょうか。これ以上距離が離れたり、相手の鳥が小さかったりすると写りが厳しくなりそうな気がします。

f:id:hp2:20161016173754j:image

ミニボーグ60ED+F AFアダプター 1.7x, K-5IIs

ISO400, 1/1250秒


f:id:hp2:20161016173755j:image:w640

ミニボーグ60ED+F AFアダプター 1.7x, K-5IIs

ISO400, 1/1000秒

こちらは、すぐ目の前にまで来てサービスしてくれたコサギ。白いので色収差が目立ちやすい被写体ですが、気になるような色づきはありません。

f:id:hp2:20161016173756j:image

等倍で切り出してみると、羽毛の1本1本までよく分離しています。レンズの性能も大切ですが、やはりいかにして鳥との距離を詰めるかが一番大事なのでしょう。このコサギは警戒心ゼロで助かりました(^^;


さて、実際に使ってみての感想です。


AFはやっぱり便利

完全にマニュアルでピントを合わせるのに比べて圧倒的に快適です。特に相手が動く場合、コンティニュアAFである程度追うことができるのは本当に助かります。もっとも、ペンタックスAFがそもそも性能、速度ともにビミョーなのは残念なところで、もしこれでキャノン並みの性能があったら本当に最強だと思います。


雲台の使い方

今回使ったのはマンフロットの「190プロアルミニウム三脚3段+RC2付き3ウェイ雲台キット(MK190XPRO3-3W)」に付属の「XPRO3ウェイ雲台」。強度などには全く問題ないのですが、構図をロックしようとハンドル類を締めこむとわずかに構図がずれます*1。なので、フリクションを固めに設定したうえで、ハンドルをロックせずに使うのが良さそうです。今回のセッティングの場合、カメラ、レンズともに軽いので、こうすることで問題を回避できました。別に雲台等を買い足す予算があれば、しっかり機材の前後バランスを取ったうえで、ビデオ雲台フリーストップ型の経緯台を使うと良いかもしれません。


手ブレ補正に過信は禁物

ペンタックス一眼レフはボディ側に手ブレ補正機能が載っているため、AFボーグでも手ブレ補正が有効になります。レンズ自体も軽く、手持ち撮影にもってこいなのですが……実際にやってみると、それなりに手ブレ写真が量産されます。背面モニタで一見ブレていないように見えても、写りが今一つシャッキリしていない場合の7〜8割がたは小さな手ブレが原因という印象。やはりしっかりした三脚があった方が安心です。


シャッター速度は積極的に上げるべき

上記の手ブレへの対策もそうですし、相手は生き物で動くので、シャッター速度は積極的に上げた方が成功確率は上がります。いまどきのカメラならISO1600くらいまで感度を上げても画質劣化が目立ちませんから、日中でも感度を高めにしてどんどん高速シャッターを切りましょう。その上で、連写で枚数を稼ぎ、構図を含めたトータルでの成功確率を上げるのがよさそうです。


しかし、普段星などを撮っていて、超望遠の世界にはある程度慣れているつもりでしたが、鳥撮りとなるとまったくの別世界。カワセミのダイブの決定的瞬間などを精緻に捉える先人の手腕には本当に頭が下がります。

[]最遠の惑星たち 18:08 最遠の惑星たちを含むブックマーク

f:id:hp2:20161016173757j:image

この日は夜も久しぶりに快晴だったので、実に約2か月ぶりに望遠鏡を引っ張り出しました。とはいえ満月なので、星雲・星団の撮影にはまったく向きません。

そこで、逆にこんな時でないと観望、撮影しないであろう対象に望遠鏡を向けました。

f:id:hp2:20161016173758j:image

2016年10月15日21時26分54秒(日本時間)

セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀

ZWO ASI120MC, 1s, 600フレームをスタック

まずは、冥王星準惑星降格に伴って太陽系最遠の惑星となった海王星です。明るさは約7.8等。望遠鏡の視野に捉えると、明らかに他の星とは違った青緑色が目につきます。

地球からの距離は約29天文単位(約43億km)と、土星の3倍ほども遠くにあります。高々口径20cm程度の望遠鏡では表面の模様など望むべくもないのですが、これほど遠くの天体が円盤像として捉えられるということ自体に感慨を覚えてしまいます。

f:id:hp2:20161016173759j:image

2016年10月15日23時32分16秒(日本時間)

セレストロンEdgeHD800+Meade 3x TeleXtender(D203mm, f6096mm) SXP赤道儀

ZWO ASI120MC, 200ms, 1600フレームをスタック

そして、海王星の1つ内側にある天王星。ちょうど16日1時38分が衝で、一般的には観望好機といえるのですが、海王星ともども距離が非常に離れているため、年間を通じて視直径や明るさに大きな変化はなく、特に衝にこだわる必要はなかったりします。明るさは約5.7等。望遠鏡の視野に捉えると、やや緑がかった灰色に見えます。

地球からの距離は約19天文単位(約28億km)。海王星に比べると近いですが、それでも土星までの2倍の距離があります。こちらも模様を捉えるのはまず無理ですが、大口径望遠鏡を用いて好気流条件下で撮影すると、模様を確認することも不可能ではないようです*2


ところで、こうやって天王星海王星を並べてみると、同じ「青緑色」と形容されがちな両惑星の色の違いが意外とよくわかります。

f:id:hp2:20161016173800j:image

f:id:hp2:20161016173801j:image

実際、惑星探査機ボイジャー2号からの画像(上:天王星 下:海王星)と比較してみると、ちゃんとそれぞれの色を反映しているようです。こんな小さな望遠鏡で、数十億kmの彼方の物体の色が正しく分かるというのは、考えてみるとなかなかすごいことだと思います。

*1:これは雲台の品質どうこうという話ではなくて、雲台の構造上仕方のない所です。他社の雲台自由雲台でも同様だろうと思います。

*2:もっとも、日本国内では気流の条件が悪すぎるので、機材をそろえても難しそう。月惑星研究会への観測報告を見ても、海外の観測者によるものばかりです。

上杉蒼太上杉蒼太 2016/10/22 09:22 初めまして。上杉蒼太といいます。前々から検証記事やPHD2のマニュアルなどを参照させてもらっております。非常に詳細で具体的な記事が多くて大変助かっています(最近SXP赤道儀に乗り換えましたが、その時もレビューを参考にさせてもらいました)。
天王星と海王星、意外とよく写るものですね。今度私もVC200Lで試してみようかなと思います。惑星撮影用に買ったMSI224MCもすっかりガイド鏡になっていますし。
ところで、閉鎖されたサイトの方も見ましたが、今もイラストとかは描かれるのでしょうか? ちなみに私はまだ現役でコミケなどにスペース参加しています(「東方project」とオリジナルですが)。
これからもよろしくお願いいたします。

HIROPONHIROPON 2016/10/22 19:11 上杉さん、初めまして。コメントありがとうございました。

拙くて読みづらい記事ですが、多少は参考になったようでなによりです。
SXP赤道儀は性能と使い勝手のバランスがいい赤道儀だと思いますので、
大事に使ってやってください。


> 天王星&海王星

VC200LとASI224MCなら、拡大撮影系さえあれば十分いけますね。
まぁ、いかんせん相手が遠すぎるので、何を使って撮ろうが
ちっちゃい青緑色の丸にしかならないんですが(^^;


> イラスト

いやはや、お恥ずかしい(〃w〃;ゞ
ごく簡単なものを除けば、まともに描いたのは数年前が最後でしょうか?
たまには復活したいような気もするのですが、描き方自体ほとんど忘れてますし、
やるならリハビリから始めないと…orz