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2017-12-16

[]最大&最遠 17:43 最大&最遠を含むブックマーク

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先週末の土曜、日没を待っていつもの公園に出撃してきました。

この日の東京の月出は22時41分。17時59分の天文薄明終了からたっぷり4時間はありますが、早い時間帯のため激しい光害が予想されます。一方で、冬の天体を狙うには時間が早すぎ……ということで、何を撮るか迷ったのですが、同じ光害が酷いのでも南天の方が北天よりは多少マシということで、秋の南天のメシエ天体M77を狙うことに。

M77のような銀河は普通、長焦点鏡でのクローズアップで狙うところですが、M77の場合、すぐ近くにNGC1055という見栄えのするエッジオン銀河があるので、これと合わせた構図で撮ることにします。持ち出したシステムはED103S+SDフラットナーHD。これで焦点距離811mm、F7.9となります。やや暗いですが、キヤノンAPS-C換算の焦点距離は1300mmほどで、複数の銀河をそれなりの大きさで納めるにはちょうどいい画角です。ちなみに、これがSDフラットナーHDのファーストライトになります。買ったのはずいぶん前ですが、今年の夏は天気が悪かったからなぁ……orz

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撮影自体は順調で、特筆することもなく*1。ただ、この夜は透明度がイマイチだったようで、光害があるとはいえ、カシオペヤ座のM字の最も東の星、3.4等のセギンは全く見えず、「秋の四辺形」の南東の星、ペガスス座のアルゲニブ(2.8等)もかなり厳しい見え方だったので、最微等級は3等程度だったのではないかと思います。乾燥してダストが舞い上がったり、寒気で上空に蓋をされた形になってエアロゾルが滞留したり……といったあたりが原因なのでしょうけど、かなり冴えない空でした。

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それでも「撮って出し」でM77の中心部が写っているあたり希望が持てます*2。これをゴリゴリ処理した結果……

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2017年12月9日 ED103S+SDフラットナーHD(D103mm, f811mm) SXP赤道儀

Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出1200秒×8コマ+300秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用

ペンシルボーグ25(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド

ステライメージVer.7.1eほかで画像処理

こうなりました。写真中央左下に見えているのがM77、同右上に見えているのがNGC1055です。


M77は、実際の直径が約17万光年もあるメシエ天体中最大の天体です。地球からの距離も6000万光年以上*3あり、こちらもメシエ天体中最遠の部類です。

これほど遠くにあるにもかかわらず8〜9等もの明るさで見えているのは、このM77の中心核が大変活動的で、すさまじく明るく輝いているため。M77の中心には太陽の1000万倍以上の質量をもつ超巨大ブラックホールがあり、ここに物質が落ち込む際、その物質が加熱されて膨大なエネルギーを生み出しているものと考えられています。このような銀河は、提唱者の名前を取って「セイファート銀河」と呼ばれています。*4

一方のNGC1055は、ちょうどおとめ座のM104(ソンブレロ銀河)と同じような姿をしています。形の整った美しい銀河ですが、11等と暗いため、メシエらの使っていた小望遠鏡では見つけられなかったようです。発見したのはかのウィリアム・ハーシェルで、1783年のことです。


M77は銀河本体が明るい一方、周囲を取り巻く淡い腕が特徴的な天体です。そこで、中心核近くの渦巻きと周囲の腕の両方を生かすため、今回はオリオン大星雲の場合と同じく多段階露出を行っています。その甲斐あってか、どうにか中心部をつぶさずに表現することができたように思います。


なお、この写真の中にはM77とNGC1055以外にもたくさんの銀河が写りこんでいます。比較的目立つのは、写真中央左側に紡錘形に見えているNGC1072ですが、この他にも下でプロットしたように暗くて小さい銀河がたくさん見えます。この写真では、どうやら17等台後半の銀河まで写っているようです。

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これらのうち、NGC1072はM77やNGC1055より5倍ほども遠い約3億4000万光年の彼方にある天体で、さらにPGC10354(正式名称:MCG +00-08-002)やPGC10146(正式名称:MCG+00-07-079)は約6億光年、PGC1145106(正式名称:2MASX J02430393-0022045)に至っては、地球から実に約10億光年も離れた位置にある天体です。*5 *6

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3億4000万年前は石炭紀で、シダ植物や巨大昆虫が栄えていた頃、6億年前は先カンブリア時代エディアカラ紀で、最古の多細胞生物として知られる「エディアカラ生物群」(ディッキンソニアやスプリッギナなどが有名)が出現した頃、10億年前ともなると、シアノバクテリア藍藻)が繁栄してようやく地球大気中に酸素が増えてきた頃になります。

そんな大昔に出発した光が、わずか口径10cmの望遠鏡で捉えられて、今こうして見られるというのは、なんとも不思議な気がします。

*1:普通の天文系ブログ等で上の構図の写真だと満天の星空が写っているものだけど、星がほとんど見えない上にフラッシュなしで望遠鏡がこれだけ明るく写ってる時点で環境はお察し。唯一明るめに見えているのは、くじら座のα星メンカル(2.5等)。その右隣に微かに見えているのは同γ星のカファルジドマ(3.5等)

*2:もっとも、これは最も遅い時間帯に撮った1コマで、19時台に撮ったコマは高度の低さもあってはるかに真っ白でした。

*3:つまり、いま見えているM77からの光は、恐竜が絶滅した頃に放たれたものということになります。

*4:メシエ天体の中でも、ほかにもM64やM106など複数が知られています。

*5:主要銀河カタログ(Catalogue of Principal Galaxies, PGC)などのデータを調べるには、SIMBAD(http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/)などを使うと便利です。

*6:現在のPGCのナンバーはあくまでデータベース整理のための内部的なもので、MやNGC、ICのように天体の名前として使うことは推奨されていません(「正式名称」として他のデータベースでの名称を記載しているのはそのため)。詳しくは以下を参照のこと。http://leda.univ-lyon1.fr/leda/param/pgc.html

悠々遊悠々遊 2017/12/17 18:04 住宅地の中で光害が・・・なんて言ってるのが恥ずかしくなります。
さすが首都、すさまじい環境で頑張っておられるんですね。
最初、露出1200秒x8を見て「え?」と思いましたが、ISO100・・・なるほど納得(苦笑)。
安定した追尾のなせる業ですね。

HIROPONHIROPON 2017/12/18 00:17 いやホント、我ながら実にひどい環境です(苦笑)
せめてLED照明とか、もう少し自重してくれるとありがたいんですけどねぇ……( ̄w ̄;ゞ
やっぱり、こんな苦労しなくても撮れるのが理想です。

追尾については、PoleMasterでの極軸合わせが効いてる気がします。
安心して長時間露出できるようになりました。

同じ時間をかけるなら、高感度多数枚での撮影より低感度少数枚の方が写りがいいので、
追尾が安定しているのは本当に助かります。
https://urbansky.sakura.ne.jp/lightframe.html

2017-12-01

[]AXJ赤道儀発売 01:15 AXJ赤道儀発売を含むブックマーク

旧聞に属しますが、CP+に出品され期待を集めていたビクセンの新赤道儀「AXJ赤道儀」が去る11月27日に発表され、30日から販売開始となりました。

おおまかなスペックはこれまでCP+で公開されていたものと大体同じ*1。気になる価格は税抜70万円(税込75万6000円)となっています。


同社の他赤道儀と比較する

まずはこの製品の位置づけをはっきりさせるため、主なスペックをSXP赤道儀PFL、AXD2赤道儀と表にまとめてみました。

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これを見ると、赤緯軸・赤経軸の太さや材質をSXPと同じにしていたり、ウォームホイルの直径がAXD2より一回り小さかったりと、AXD2からダウングレードしている部分はあるものの、出荷時にピリオディックモーションのデータを不揮発性メモリに書き込む「V-PEC」に対応している点や、サイズ感などははっきりAXD2の流れを汲んでいます。


特徴的なのは、ビクセン赤道儀として初めてベルトドライブを採用した点で、騒音の低下やバックラッシュの低減などが見込めます。ネット上では、ベルトドライブと聞いて耐久性を不安視する向きもあるようですが、一般にこういう部分で使用されるベルトは「輪ゴムのお化け」などではなく、産業用のきわめて丈夫なもの。普通、毎分数千回転といった回転数に耐えるようなシロモノですから、赤道儀要求される回転程度では全く問題になりません。

極軸を支える構造もAXJに特徴的なところで、海外製赤道儀でしばしば見かける、極軸体をフォークで支える構造になっています。おそらく重量軽減に一役買っているのではないかと思いますが、調整可能な傾斜角範囲は従来品と同じで、機能面での直接的な違いはなさそうです。

本体重量と搭載可能重量はそれぞれAXD2から約3割減。「SXPだと物足りないけどAXD2だと大げさすぎる」という人も少なくなかったと思うので、このサイズ感は悪くないと思います。搭載可能重量は22kgとなっていますが、ビクセンの「搭載可能重量」は目視観測を念頭に置いているフシがあることを考えると、撮影目的なら実用的には7掛けの15〜6kgあたりが無理のないところでしょうか?

また、表には書いていませんが、鏡筒取り付け部の仕様はAXD2と共通です。


スペックを見る限りでは、性能と使いやすさのバランスという点で評価の高いAXD2をうまくダウンサイジングしており、好印象です。


AXJ赤道儀の気になる点

とはいえ、気になる個所がないわけではありません。


真っ先に議論の対象になりそうなのは、やはりその価格です。

私の「期待込み」の予想では「60万円前後、両軸エンコーダをつけて80万前後」でしたが、それより10万円高い価格です。上記予想は「SXPとAXD2の間を取るだろう」、「AXJにオプションエンコーダをつけてもAXD2との下克上は起きないだろう」という考えでのものですが、思ったよりAXD2に寄せてきました。希望小売価格的には、40万円のSXPと約100万円のAXD2のちょうど中間と言えば中間なのですが……(^^; 店頭値引きがないのもAXD2と同じで、旧来の「お手頃価格のビクセン」というイメージでいると割高感を感じてしまうかもしれません*2


また、上でちらっと書きましたが、CP+で目玉の1つとなっていたエンコーダが同時発表されなかったのも不安材料です。このエンコーダは、クランプフリーで望遠鏡を動かした場合でもアライメント情報を保持し続けるほか、フィードバックによって追尾精度を向上させる役割も担うことになっています。しかしこれがないことで、AXJ赤道儀の魅力の一部が削がれるのは確かです。ビクセン社長のTwitterでの発言によれば「予定されているが発売時期は未定」とのことなので、いずれ出るとは思いますが、出る予定といわれながらいまだに姿を見せない「VSD100F3.8専用エクステンダー」のような例もあるので、一抹の不安が残ります。

エンコーダについては、価格の問題も気になるところです。以前にも書きましたが、同じようにエンコーダを利用するiOptronのCEM60赤道儀の場合、エンコーダなしのCEM60が税抜318000円、エンコーダ付きのCEM60-ECが税抜495000円となっていて、両者の差は177000円。これを目安に考えると、AXJ赤道儀エンコーダを搭載した場合、プラス20万〜25万円はかかりそうというのが容赦のない見立てでしょう。しかしこうなると、価格的にはAXD2と極めて近くなってしまいます。追尾精度はAXD2に匹敵するものになりそうですが、本体重量減のメリットと搭載可能重量減のデメリットをどう考えるか、買う人のバランス感覚が問われることになりそうです。


そして最後に三脚。今のところ、AXJ赤道儀三脚については、SXシリーズ用のSXG-HAL130、またはアダプタ経由でAXD用のAXD-TR102が組み合わされることになっています。SXG-HAL130はたしかに使いやすい三脚ですが、各所のネジが緩みやすいなど信頼性にやや難がありますし、強度についても最大40kg近くにもなる上物を支えられるのかどうか不安が残ります。一方のAXD-TR102は、強度的な問題はありませんがAXJ赤道儀とのバランスという面では重厚に過ぎるかもしれません。

CP+ 2017の時点では「TR15三脚」と称する、AXD-TR102の下位版のような三脚に載せられていました。また、AXJ赤道儀発表前の社長のTwitterでは、同三脚に載せられていると思しきAXJ赤道儀の写真が掲載されていましたので、軽快さを重視するなら期待したいところです。

*1:細かいところでは赤緯側のウォームホイルの仕様やベアリングの数が変わっていたり、より軽量になったりといった違いはあります。

*2:ただ、製品の序列と内容を考えれば「不当に」高いとまでは思いません。

にゃあにゃあ 2017/12/03 16:13 CP+でAXJを見ましたが、手に届かない機材なので、ほとんど関心はなかったのですが、エンコーダはかなり印象に残っています。こうして比較解説いただくと優れた機材であることがよくわかりますね(買えないけど)。きょう、アキバのヨドバシを巡回してきましたが、実機の展示はありませんでした。CP+絡みでいうと、来年のはやいうちくらいに、エクステンダーPHが出て欲しいです……(お値段しだいだけど)。

HIROPONHIROPON 2017/12/03 20:31 AXJは、サイズその他諸々のバランスはすごく良さそうなんですよね。
まぁ、私も買えないし買いませんけど(^^;(今のところSXPで満足してるので)

エクステンダーPH、そういえばあれもまだ出てませんでしたね。
出す気になればすぐにでも出せそうなものですが……。

価格は……設計がCP+ 2017の時点から変更なしとすれば、ASコーティングの上に
レンズ構成が3群4枚とそこそこリッチだったので価格はSDレデューサーHDキットや
コレクターPHなどと同じくらいになりそうな気がします。

あぷらなーとあぷらなーと 2017/12/10 20:21 とても魅力的なスペックで登場しましたね、AXJ。
でも、ちとお高いですね。
エンコーダを買い増ししたら、AXDが買えちゃいそう(笑)。

というわけで、当面こちらはK-ASTEC改造アトラクスで続投します。

HIROPONHIROPON 2017/12/11 01:10 いやホント、エンコーダ増設時のAXDとの競合 or 下剋上を避けるために、戦略的な値付けを
してくるかと思ったんですが、予想以上に強気でしたねぇ。

エンコーダを増設する場合、本体重量がAXDより軽くなる点や、クランプフリーの状態でも
アライメント結果を保持し続けられるというあたりをメリットととして受け取ってもらえないと、
なかなかしんどそうな気がします。

あとは(出るとしたらですが)新型三脚がどうかですかね。

2017-11-27

[]東京都心で分子雲! 21:22 東京都心で分子雲!を含むブックマーク

こちらに書いたように、先の金曜の夜、職場での飲み会終了後にいつもの公園に出撃してきました。

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この夜の本命はオリオン大星雲。撮るだけなら都心からでも簡単に写る冬の定番だけに、私も望遠鏡購入直後からたびたび撮っている被写体です。自分の撮影技術、画像処理技術がどこまで上がったかのベンチマークになっています。

一番最近に撮ったのは2015年の12月のこと。「都会の天文ファンに勇気を与える作例」とのコメントつきでボーグのブログでも紹介され、都心で撮影したものにしてはよく撮れたと自負しています。しかし当時に比べれば、淡い天体を撮影・処理する上での経験、ノウハウもたまってきていますから、今ならさらに上を目指せるはずです

そこで今回は「自分史上最高のオリオン大星雲@東京都心」を目指すつもりで臨みます。


この夜は透明度が大変によく、渋谷新宿から10km圏内という東京都心のこの場所でも、深夜には3.5等くらいまでは確実に見え、プレセぺ星団も肉眼で位置がなんとなく分かるほど。風も穏やかで、年に数回あるかないかの好条件でした*1。これだけ条件が良ければ、やる気もがぜん湧くというものです。

撮影に入れたのは日付が変わる頃で、天文薄明開始まで4時間ほど時間が取れます。M42は輝度差が大きいので多段階露出が必要であることを考え、4倍ずつ露出に差をつけた1200秒(120秒ではない!)×8, 300秒×8, 75秒×8, 20秒×8のセットで撮影することとしました。単純合計で3時間半ほどの撮影時間です。


撮影自体はつつがなく終了し、帰宅後にELパネルでフラットを取得。さらに、気温が同程度だった翌日夜にダークを取得しました。ところが「さぁ、これから処理!」と撮影画像を開いたところで問題が発覚。300秒露出の8枚中6枚が、何らかの理由で大きく流れていて利用不可でしたorz

原因はPHD2のログを確認してみないと分かりませんが、この数枚の失敗の後はまたガイドが正常に戻っていることから、おおかた一時的にケーブルが引っ掛かったとか、そのあたりじゃないかと思います。


ともあれ、ないものは仕方がないですし、白飛びしやすい中心部は75秒露出のフレームなどで救えそうだったので、無事だったフレームで処理を行います。

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1200秒露出の処理前画像はこんな感じ。ここ最近、「撮って出し」では影も形も見えないような淡い天体ばかり撮っていたので、処理前の段階で目的天体が見えると、なにかものすごい違和感を感じます(笑)


各秒のフレームごとにダーク引き、フラット補正、加算平均コンポジットを行った後、それぞれを加算コンポジット*2。光害カブリを除去して、レベル調整、デジタル現像、トーンカーブ調整などを行ってみると……

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これはこれで、なかなか悪くない感じです。ここで仕上げに入ってしまってもいいのですが、画像の荒れもそれほどひどくないですし、もう少し攻められそうです。


Silver Efex Pro 2投入

そこで、Nik CollectionのSilver Efex Pro 2を投入してみます。このソフトは、以前こちらでも紹介したように非常に強力なツールなのですが、効果が強いだけに画像が荒れがちで、元画像の画質が良くないと悲惨なことになります。

しかし、今回は何とか耐えられそうな感じでしたので、RGB三色分解を行った後、各プレーンにそれぞれSilver Efex Pro 2の「高ストラクチャ(強)」処理を施し、再合成してみました。

そうして最終的に出てきた結果がこちら。

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2017年11月25日 ミニボーグ60ED+マルチフラットナー 1.08×DG(D60mm, f378mm) SXP赤道儀

Canon EOS Kiss X5 SEO-SP3, ISO100, 露出1200秒×8コマ+75秒×8コマ+20秒×8コマ, IDAS/SEO LPS-P2-FF使用

ペンシルボーグ(D25mm, f175mm)+ASI120MM+PHD2によるオートガイド

ステライメージVer.7.1e, Silver Efex Pro 2ほかで画像処理

グッと迫力が増した上、背景になにやらモクモクしたものが……。そう、なんと周辺の分子雲まで見えているのです!

ひそかに「写ってくれないかな……」と期待していたのは確かですが、まさか本当に東京都心で、しかもデジカメで写せるとは思いませんでした。というか、東京都心でここまで撮った人っているんでしょうか……?


今回用いた光学系はF6.3、1コマ当たりの露出はISO100の20分が最長ですが、元画像の背景レベルからするともう少し露出時間を延ばす余地はありそう*3。さらに頑張れば、もっとハッキリ分子雲を炙り出すことができるのではないかと思います。

中心の明るく白飛びしてしまった部分の表現など、課題はまだありますが、とりあえず、現時点での「自分史上最高のオリオン大星雲@東京都心」は達成できたのではないかと思います。


ちなみに、カラーバランスや画質云々を抜きにして、Silver Efex Pro 2の「フルコントラストストラクチャ」でガッツリ強調してみると……

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分子雲のモクモクの存在が、よりはっきり分かります。こんな撮り方でも写ってはいるのですから、撮影方法や画像処理方法など、まだまだ工夫や努力の余地はありそうです。

*1:その代わり放射冷却は厳しく、明け方前には望遠鏡運搬用の台車に霜が降りていました。

*2:多段階露出の場合、露出の異なるフレーム同士は「加算平均」ではなく「加算」でコンポジットします。加算平均でコンポジットしてしまうと、せっかく得た異なる階調の画像が均されてしまって意味がなくなります。

*3:1コマ当たり30分くらいまでは大きな問題なく行けそうな感じですが、この場合の撮影時間は多段階露出を考えない単純計算で4時間。これ以上の長さとなると、子午線反転の問題も頭に入れておかないとなりません。さらにその上となると、複数夜に渡っての撮影かツインボーグでしょうか……。

にゃあにゃあ 2017/11/28 01:35 これは脱帽です! 遠征先で撮るのと同等かそれ以上ですね。3等星が見える夜を狙って私も挑戦してみます。俄然やる気が出てきました。私にとっては「都会の天文ファンに試練を与える作例」ですが(笑)

あぷらなーとあぷらなーと 2017/11/28 08:59 素晴らしい。
今年の冬は、「自己ベストのM42」を撮影することを目標にしていたので、大いに勇気がわいてきます。
・・・と言っても「田舎の市街地で」ですが。
それにしても、Silver Efex Proの活用がお上手ですね。

MattMatt 2017/11/28 16:46 Hiroponさん
これは反則でしょう!
(やはり変態ですね)
1級光害地でここまで写るんなら地方の人の立場がないですね。
私が昨年撮ったM42より解像度が良さそうです。
星が丸いし、キレがありますよ。 ピント合わせの腕の差を見せつけられました。
年寄りにはピント合わせが鬼門です。
私もNikなどを使用したことありますけど、原色みたいになったり、宇宙外物体のようになりましたよ(笑)
私も次回の新月期に自己ベスト狙います。
ところでM42とHEUIB-II フィルターの相性ってどうですかね?
昨年同様 LPR-Nの方が安全かな?

GG 2017/11/28 17:46 えっ渋谷・新宿から10キロ圏内で分子雲が浮かび出ているM42ですか。これはもう驚きしかありません。素晴らしすぎる。

多段階露出の場合は加算コンポジットしなければならないのですね。これ常識なのでしょうか。今まで多段階露出してもすべて加算平均して処理してしまいどうもその効果が得られず不思議でした。目から鱗です。有難うございました。

上杉蒼太上杉蒼太 2017/11/28 19:54 完全に負けですね……。画像処理の腕前に感服いたしました。でも本当に美しいM42ですね! 私も頑張って撮ってみます。
Nik Collectionとっても使えそうなので私も試してみます。

HIROPONHIROPON 2017/11/28 22:24 にゃあさん>

空の条件に恵まれたり、低温に助けられた部分も多々ありそうですけどね。
うっかりこんなのが撮れてしまうと、自分で自分の首を絞めてるような気もします(^^;
自分にとっても試練だ……orz

HIROPONHIROPON 2017/11/28 22:26 あぷらなーとさん>

いよいよ、あのフルアーマーボーグが火を噴くんでしょうか?期待してます(^^)
ウチもこれだけ露出時間が伸びてくると、ツインボーグを本気で考えたくなってきてしまいます。
もしやるとしたら、対物レンズと補正レンズと天文改造カメラが追加になるのか。むむむ……。

> Silver Efex

今回は三色分解後の各プレーンに対してプリセットを適用しただけで「使いこなし」なんて
言えるレベルじゃないんですけどね(^^; 今回のだと「高ストラクチャ(強)」の前景と
「フルコントラストストラクチャ」の背景とを両立させたいところ。プリセットを元に
パラメータを追い込んでいく余地はまだありそうです。

HIROPONHIROPON 2017/11/28 22:31 Mattさん>

条件が同じなら地方の方が絶対よく写るはずなので、そこは奮起を期待して……(^^;

逆に自分が空の暗いところで撮ったらどのくらいまで撮れるのか、ちょっと興味があったりします。
普段が「大リーグボール養成ギブス」つけながら撮っているようなものなので、なんかすごいのが
撮れそうな気もしますが、鍛え方が偏ってて撃沈する可能性も高そうな。

> Nik Collection

記事本文にも書きましたが、効果が大きい分、副作用も大きくて、制御が案外厄介な感はありますね。
今回使ったSilver Efex Pro 2の「高ストラクチャ(強)」あたりは、比較的節度のある効き方をしてて
使いやすいんじゃないかと思います。

> M42とHEUIB-II

HEUIB-IIだと水銀由来の輝線がカットされないので、そのあたりがどう出るかですね(逆に言うと、
HEUIB-IIがカットするのはナトリウム由来の輝線付近のみ)。青系、緑系の色の再現性はよくなる
はずなので、カラーバランスの調整はやりやすそうですが……。

こちらのサイトで、旧製品のHEUIBとLPS-P2(LPS-Nとほぼ同等の特性)の比較をやってますね。
http://galaxystar.image.coocan.jp/filter.htm

HIROPONHIROPON 2017/11/28 22:34 Gさん>

今回のはさすがに、自分でも処理中に変な声が出ました(笑) まさか写るとはねぇ。

> 多段階露出

同じ露出条件のものをコンポジットする場合は、加算も加算平均も出てくる結果は最終的に同じなのですが、
露出違いのものをコンポジットする場合は加算が基本ですね。もっとも、加算でやっても効果が実感できるように
処理するのはなかなか難しい印象です。きょうびHDR合成用のソフトなどもあるので、そういったものを使って
うまく合成できるといいんですが、そこはいまだ研究中……。

HIROPONHIROPON 2017/11/28 22:36 上杉さん

今回のは、画像処理もともかく元画像がある程度良かったからというのもあるでしょうね。無理な強調をしないで済めば、
Silver Efexのようなツールを使う気にもなりますし。

色合いもなんとかうまくまとめられました。子供の頃の刷り込みなのか、ハイライトに青みの残った銀塩ポジっぽい
発色が好きみたいです(^^;

MattMatt 2017/11/29 20:13 Hiroponさん
アドバイスありがとうございます。
では、前回はLPR-Nを使用したので今回はHEUIB-IIフィルターで撮ってみますね。
街灯などの光害は、広角でなければ結構行けます。 BORG 77EDII にフラットナー月で撮影します。 まあ、晴れることが前提ですね。 ただ、ここは寒いんですけどね。

HIROPONHIROPON 2017/11/29 23:17 Mattさん>

おおっ、期待してますです(^^)

しかし実際のところ、LED照明がこれだけ普及してきた中で、今の光害カットフィルターって
どのくらい効果があるんでしょうかね?どこかで1回、きっちり検証してみたいところですが……。

悠々遊悠々遊 2017/11/30 10:43 都内でこの写真は凄いの一言です。
いや、暗い空を求めての遠征組も真っ青ではないでしょうか。
脚注の、多段階露光では「加算平均ではなく加算」とのこと、なるほどそうですね。
せっかくの長秒時露光をこれまで減殺してました。

HIROPONHIROPON 2017/12/01 00:24 悠々遊さん>

ありがとうございます。
車がなかったりで物理的に遠征が難しいので、都内で足掻き続けた結果、
どうにかこの程度まで撮れるようになりました。

この日は明け方まで夜通し撮影してましたが、郊外への遠征と違って、
すぐに家に帰って寝られるのも街なか撮影のいいところです(^^;

コンポジットについては、あまりに当たり前の技法になり過ぎたせいで、
実際にどんな操作が行われているのかが意識されなくなってしまっているのかもしれませんね。

ねお丸ねお丸 2017/12/11 19:59 おぉ、これはなかなかマゾいですね〜。
自分も房総に逃げないで都内でマゾチャレンジしようかわくわくしますね(笑)。
この周りの淡いところって、すぐ潰れちゃうんですよね。
丁寧に処理してあって、さすがです!

HIROPONHIROPON 2017/12/12 00:02 ああっ!そう!もっと明るい夜空を!(←ウソです(^^;)

まぁ、自分なんかでも撮れるくらいなので、きょうびの機材とソフトの力はすごいなぁと。
逆に言うと、誰もわざわざ都心でまともに撮ろうと思わなかったからこそ驚かれるんでしょうね。
諦めないでほしいなぁ……。

今回の分子雲は、Silver Efexかけたらたまたま浮き上がってきたって感じなので、
狙って出せるようになりたいところですね。あと、フラット補正はほんと大事。
ここを詰めるだけで、その後の処理の難易度が格段に変わります。