さよなら人外

 『終わりのクロニクル』(川上稔電撃文庫)の最終巻が、気の狂ったような厚さを誇っているらしいという噂を聞いて、今までシリーズを一作も読んでいないのに俄に気になりだしたのは、自分の中で未だに京極信仰の火がくすぶっているせいなのだと気付きました。「厚さ≠正義」だということが、第二メフィスト賞作家による文学自爆テロという、これ以上ない形で既に証明されているのを忘れたわけではないのですが。

アレはこちらの全く与り知らぬところで行われました

 言いたいことは山ほどあるけど、とりあえず自分のイニシャルが何なのかぐらいは理解しておいてもらいたいものです。アンタの名前のどこにHがあるんだ。

『幻獣遁走曲 猫丸先輩のアルバイト探偵ノート』(倉知淳/東京創元社)

 猫丸先ぱいー。
 日常のなぞー。
 YEAH!


 死体が出ない方の猫丸先輩。純粋に好みの問題で言うと、こっちの流れの方が断然ポイントが高いんですが、一度はちゃんとした殺人事件を解決している探偵役であるため、どうしても「一時の休息」的な短編集に見えてしまう。しょうがないことではありますが。

『タクティクスオウガ』(クエスト/SFC)

 最後のページまで読み終えていない本についてなにごとかを語るという行為が、全くの無意味であるのと同様に、エンディングを見ていないゲームについての言葉もまた、一切の価値を持ち得ません。
 と、いつになく大上段に構えて書き出してしまったのは、発売からほぼ十年が経過した今になってようやく『タクティクスオウガ』を自力クリアできたことに少なからず浮かれているからです。ひゃっほう。ふぁいでぃっだー(FIGHT IT OUT)。たとえ終盤の展開が毎回、スペルチャージでアニヒレーションでペトロクラウドで弓弓弓弓弓こんぐらっちゅれいしょんず、だったとしても自力は自力。
 十年経ってキャラクターの見方が変わったのかもしれませんが、カチュア姉さんがそれほどデムパ出してるヒロインには見えませんでした。自死展開を見なくてすんだ(見逃した)のもあるし、この十年で他に色々すごいの見ちゃったからなあ。『リヴァイアス』のファイナ(「私の過去になりなさーい」)とか『SEED』のフレイ(「昨日はキラの部屋に居たんだから!」)とか。それらに比べれば、


 ≪…どうして姉さんのいうことが聞けないの。≫


 ≪利用できそうだからおべっかを使ってるんじゃない。あなたみたいに我を通すだけの能なしじゃないの、私は。少しは感謝しなさいよ≫


 ≪…私を置き去りにする気ね。≫


 ≪手に入らないのならいっそ……≫


 くらい、全然大したことは……いや、やっぱり姉さんが最高。湿った執念の発酵ぶりにもうメロメロ。デニム同様に「何言ってるんだ。勝手なことばかり言うのはやめてよッ!」と叫びたくなります。笑顔で。
 ファンタジー世界で革命戦士やってるシスティーナの「誤解ですッ、それは司祭ブランタら現政権によるプロパガンダですッ!」という台詞もポイント高いです。暗黒ランスロットの「ガン細胞」発言はさらにその上を行く。

アンチ・バジルソース・ソサエティ

「アレ、やってほしいなあ」
「こんなとこでか」
「あんまり他の車もいないみたいだし」
「でもなあ、そんなむやみに」
「っんだよー、やーれーよー、あーほー、しょーじょ」
「わかりましたやります。そして地獄へ落ちろ。ブレーキ」


 ずががががががががががががががががががががががががが


「すげー! ABSすげー!」
「なにが楽しいの」
「いや、これは楽しいでしょう、間違いなく。分かんないかな」
「分かんね。全く分かりません。大体あんたいっつも」
「あ、前」
「なに」
「おばあちゃんが」
「え」
「あっ」
「あ」