假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑) このページをアンテナに追加 RSSフィード

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悪名高き……いや、世間的には全く無名な(笑)、特撮批評(評論)・感想(レビュー)サークル『仮面特攻隊(假特隊/仮特隊)』。そのBlog版をひっそり始めたいと思います。当面は主宰者が昨05年、同人各誌に書いた文を、それ以前の文も過去日付にじょじょにUP。Blog名の由来ですが、主宰者の文が「読みにくい」と指摘されることが多いので(涙)、嘗胆・自戒の意も込めました。精進したいと思いますので、よろしくお願いいたします。またなにぶん、アナログ・アナクロ人間の残業リーマンでして、基本的には毎日PCを立ち上げません。ただ同人活動15年でイタズラ電話や脅迫状が絶えなかったことを思うと(ゲラゲラゲラ)。コメントもつかないとは思いますが、少しならともかくあまりにも荒れた場合、ウェイン町山Blogにならってシャットしちゃえばイイでしょう(笑)。あと特撮同人関係の知友はコメントを禁止します。「○○さん、ひさしぶり」「ようこそ、××さん」とかを衆目の場でやるのって、個人的にはスキじゃないので。〜お奨め:今こそ昭和ウルトラの遺産を活かせウルトラマンネクサス仮面ライダーTHE FIRSTゴジラFINAL WARS。(文・T.SATO)

2006-11-11 ウルトラマンエース#28「さようなら 夕子よ、月の妹よ」

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(脚本・石堂淑朗 監督・山際永三 特殊技術・佐川和夫)

(文・久保達也)

 南夕子は満月超獣ルナチクスによって滅ぼされた月星人(げつせいじん)の生き残りであり、ルナチクス打倒の使命を帯びて地球派遣されていたという衝撃の事実が明らかに。

 ルナチクスを倒したことにより、北斗の左中指に変身アイテム・ウルトラリングを託して、夕子は仲間が待つ冥王星に旅立っていく。

 北斗に「これからはあなたがひとりでエースになるのよ」という言葉を残して……


 タツミムック『僕らのウルトラマンA』(辰巳出版・00年・ISBN:4886415180)の中の『月に帰った私たちのかぐや姫に ―女性から見た南夕子―』(鴾田真奈美〜奥付で自身が明かしている通り、かつて『A』再評価を行った大冊の名同人誌『全員脱出!』(グループSOS・84〜89年)をものされた方のペンネーム)と題するコラムにもあるように、「南夕子のいない『ウルトラマンA』なんて!」などと失望した「女性の主役に自分を重ね、ヒーローになって戦っていた」女の子は当時数多く存在したことだろう。

 あまりに唐突なこのシリーズ展開は、異次元人ヤプールとともに扱いづらい設定であった「男女合体変身」を後期作品強化のために整理する必要があったとか、子供がごっこ遊びで変身のマネができないなど、主に製作事情の都合によるものとして近年まで語られてきたものだった。


 だが筆者はかねてから疑問だった。

 同じく合体変身を扱い、同時期に放映されていた『超人バロム・1』の場合、当初主人公の木戸猛と白鳥健太郎が地上で「バロムクロス」をしていた変身を、第18話『魔人アンモナイルゲがパパをおそう』以降は健太郎が空中高くボップ(敵・ドルゲの魔手が迫っていることを信号音で知らせたり、専用車・マッハロッドに変化したりできる万能アイテム)を放り投げ、それに向かって二人がジャンプして変身するというスタイルに変更していた。

 むしろ逆に子供がマネをできない形に変えてしまっているわけである

 (この変更は奇しくも『A』で北斗と夕子が地上で「ウルトラタッチ」をすることが多くなった時期とほぼ同時に行われている)。


 それならばもっと他に根本的な理由があったんじゃないか? 筆者としてはどうしても勘繰らずにはいられなかったのである。

 近年になってようやく真の理由が明らかになってきた。CDショップ・HMVで本作のDVD販促イベントが行われた際、「何度もお断りした」にもかかわらず、半ば無理やり引っ張り出されてしまった南夕子役の星光子や、橋本洋二プロデューサー(当時TBS)が近年になって各媒体で以下のような証言をしてくれている。


 「現場の方で…。星光子って確か(劇団)四季か何かにいたんだよね。確か芝居か何かやりたいって降りたんじゃないかな。こっちが降ろしたとかなんとか変な修羅場みたいなのはなかったと思いますよ。」

 (同人誌『橋本洋二 大全集』(森川由浩・98年8月16日発行)掲載 橋本洋二インタビューより)


 「私、たぶんすごく自分の芝居ができてなかったっていうか、すごく恥ずかしくて。毎日「ダメだ、ダメだ」って思いながら、撮影現場から帰っていました。ともかく慣れていなかったから、自分のペースを掴むのにすごく時間がかかって。結局、掴めないまま終わっちゃったのかな。だから最後のあの月に帰る話のときには、「もう最後だし。ちょっと、ちゃんとやりたいな」と思って、山際監督に「すみません。私の好きなようにやらせて下さい」ってお願いしたんです」

 「だから最後の話もむず痒いところも一杯あるんですけど、それでもある部分、ちょっとだけ解放されて自分の芝居ができたかなっていう風に思うんです。他の方が見たらどこら辺が? って思うくらいのことかもしれませんけど、自分の中ではあの作品はやはり少しは納得のできた思い出深い作品ですね。夕子が実は月星人で、月に帰るっていうお話を知ったのは、台本を頂いたときでした。とても良い形で終わらせて頂いて、本当に感謝しています。」

 (デジタルウルトラプロジェクト発売 DVD『ウルトラマンA』Vol.9(asin:B00024JJII・04年9月24日発売)解説書・星光子独占インタビューより)


 「わたくしの……(申し訳なさそうな顔で頭を深々と下げて)ワガママだったんです、ごめんなさい(一転して笑顔で)。

 えー、これはーですね、ウーーン。たいした理由はね、ホントにね、全然なかったんですよね。今から思うと、今思えば、全然たいした理由でもなんでもなかったんですけど。

 その当時のわたしには、あのー、とっても大事なこと(筆者註:降板すること)のように、思えたんですね。で、どうしてもそーいうふうにしなければいけないというふうに、自分では思ってしまったところがあって。今から考えると、な〜にを考えてたんだろうな、というふうにすごく思うんですけど、そのときはわたしはやっぱすごくあの〜大真面目でしたから。

 で、そうすることが、やっぱりまわりの方にどれだけご迷惑をおかけするかっていうようなことが、あまりよくわかっていなかったっていうか。ただものを考えてなかったんだと思うんですよね。

 で、まあキャストはもちろんスタッフの方、みなさんも、ホントにご迷惑をおかけてしてしまって、申し訳なかったなぁと、思っています。

 あのー、円谷さんの方にはね。いろいろ。なんですか。“路線変更"とかね、そんなふうにおっしゃっていただいて、本当にありがたいことだなぁ、と思っています。本当に申し訳ありませんでした。

 えー、でもね。それよりもなによりも、やっぱりわたしが、一番本当に申し訳なかったな、と思っているのは、この番組を観て、応援してくださった方々に、ホンットウにタイッヘンに失礼なことをしてしまったなと思って。もう深く反省しております。本当に申し訳ないな、と思っています」

 (デジタルウルトラプロジェクト発売 DVD『ウルトラマンA』Vol.12(asin:B00024JJJC・04年11月26日発売)特典映像・星光子独占インタビューより)


 「舞台しか知らない私にとって、確かにテレビ的な撮り方に戸惑っていた部分はあったんですけど、それよりも現場に入ったころはウルトラマンがどういうものかも分かってなかったのが、何本か撮るうちに「あ、これすごい作品なんだ」というのが分かるようになって、それで怖くなっちゃったんですね。「このまま夕子を演り続けたら、ものすごい強烈なイメージがついちゃうんだろうな」とか、「もう私は、この人しか演れないんじゃないだろうか」とか……それは役者としては、すごく怖いことだって。当時はそんなことも考えたような気がしますけど、今思えば、それは夕子さんができなくて、そこから逃げ出したくて自分に言い訳をしていただけのような気がします」

 「そうですね。若かったかも(笑)。それで結局、夕子が月に帰るというあのエピソードを作っていただきました。本当に当時は真剣に悩んだし、毎日今日も出来なかったって反省しながら帰る日々はやはり辛かったですよ。南夕子になれなかったことが、私としてはすごく辛かったです。ごめんなさい、本当に。」

 (小学館ウルトラマンDNA』Vol.2(05年1月25日発行)掲載 星光子インタビュー『32年ぶりに届いた月からの手紙』より)


 一方で、星光子オフィシャルウェブサイトの2005年9月10日の日記によると、

 「台本を読むまで、誰からも夕子がいなくなる事はおろか、その打診すら受けた事はなかった。当然の事ながら自分からそれを希望した事などある筈もない。」

 とあり、前言と明らかに矛盾してしまうのだが(笑)、これを公けの場では語れなかった彼女のホンネであり事の真相と見るのも一見いかにも合理的に見えるし、ネット上のフリー百科事典ウィキペディアWikipedia)』などはこの発言のみに依拠して、いかにもまことしやかに従来の製作者側の事情〜テコ入れ・路線変更説を踏襲するための論の補強にしているが……

 しかしちょっと待ってほしい。製作者側の都合によるテコ入れで、南夕子が降板したとは考えにくい事象が実はいくつも存在するのだ。


 まず視聴者の関心を引くために、『A』第2クール目になってからは、新聞のTV欄の出演者表記が、星光子を先として高峰圭二を後にする策が取られていたこと。


 それからマニア向け書籍草創期の『ファンタスティックコレクションNo.10 ウルトラマンPARTII 〜空想特撮映像のすばらしき世界〜』(78年・朝日ソノラマ〜のちに『不滅のヒーロー ウルトラマン白書』(82年に初版・95年に増補第4版・asin:4257034505)に合本再録)でその存在が明かされ、DVD『ウルトラマンA』の特典として縮小復刻版が近年作られた、『A』第3クール以後の強化策が記された『特撮超獣シリーズ ウルトラマンA ―番組延長に関する強化案メモ―』という冊子の存在だ。この冊子は反証の決定打ともなりうるものなのだ!

 ここには、


 「星司と夕子の心情が流れ、生きたドラマ作りを心がけたい。」

 「尚一層、星司と夕子が生き、感動的なウルトラマンエースの登場を狙ってみたい。」


 との記述すらもがあったのだ! つまり、製作者側による『A』第3クール以降の強化案には、南夕子の降板と北斗の単独変身を示唆する表現は一切掲載されていない(!)どころか、むしろ北斗と南の描写を強化したい旨の表記さえなされていたのである!

 

 ご存じの通り、南夕子はそのあとも第38話『復活! ウルトラの父』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070121/p1)や次作『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)第39話『ウルトラ父子(おやこ)餅つき大作戦』にて再登場を果たしている。

 そして、あまり知られていないことだが、先の『A』再評価同人誌『全員脱出! 3』(89年5月吉日発行)によれば、『A』放映中の73年1月2日放映の『激突! 人気番組対抗合戦』で『ウルトラマンA』チームは、超獣が現われたのに夕子がいなくなって北斗が彼女を探すというパロディの寸劇をやっていたというのだ!

 ……ちなみにこの部門では93点をとって第1位だったとか(笑)。この時期にこれをやったということは、製作者側がいかに夕子に未練があったということの裏付けにもなるだろう(一般層にある程度認知されていなければそんなネタができるはずもなく、当時『A』自体がそれなりの人気番組だったということの証明にもなる)

 たとえば同じTBSの橋本洋二プロデューサーが担当した特撮ヒーロー番組『シルバー仮面』(71年)の春日(かすが)5兄妹の末妹・春日はるかは第8話で降板し、その後は思い出してももらえず最終回近辺では兄妹たちも「春日4兄妹」と発言していたくらいだが(汗)、その扱いと比べると製作者側が特別に南夕子をないがしろにしていたとはとても思いにくいのだ。


 橋本洋二プロデューサーの発言の方が記憶違いか降板事件をキレイ事にして糊塗している可能性も皆無ではないのだが、先の同人誌『橋本洋二大全集』でのインタビューで『ウルトラマンタロウ』のヒロインであった初代・白鳥さおりこと朝加真由美の降板については、「うーんまあ色んなことがあったんじゃないですか。僕は現場の事干渉しなかったからあれだけど。まあちょっとやりきれないというからそれじゃ(以下略)」と、暗に撮影現場で彼女の(当時の)演技力が問題視されていたらしいことをバラしちゃったりもしてるので(笑)、そのような橋本自身の自己保身なりあるいは逆に星光子氏への配慮を示した可能性も橋本の発言には非常に低いと思われる。対する星光子氏は、今回の第28話と劇団四季の同期が出演したという第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)くらいしか記憶が定かではなく、むしろ『A』時代のことについては記憶を封印してきたようなので……

 もちろん真相は当時の関係者たちの記憶の藪の中にあるのだが、筆者はこれらいくつかの状況証拠(特に第3クールの強化案メモ)からも、夕子降板は製作者側のテコ入れではなく、TVよりも舞台での芝居をやりたかった星光子氏自らのあまりに突然な降板の申し入れに対応した結果であった可能性が非常に高いと考える。もちろんこの説を読者諸氏に押し付けるものではなく、降板の真相やその推測の正否については各人の判断にゆだねるものではあるのだが。


 ここでは星光子氏自身による急な降板申し入れ説を可能性が高いものとして採るのだが、それだとしても自分に満足のいく演技ができないから役を降りたかったとする彼女の証言ないしはそれに類する当時や近年の言動からは、中学・高校と演劇部に所属し、1年間のOL生活を経て劇団四季に所属したという芸歴ならではの言葉の重さと熱い役者魂を強く感じる。また彼女は各媒体のインタビュー中しきりに「ごめんなさい」とファンに対して何度も詫びの言葉を口にしており、確かに個人的にも合体変身の設定がなくなってしまったことは未だに残念ではあるものの、「そんな自分勝手な事情で……」などととてもではないが批判することができずにいる。

 星光子氏の演技に対する姿勢があまりに真剣だったからこそ起きてしまった南夕子との別離。もし当初夕子役に決定していた関かおりが骨折事故を起こさずにそのまま夕子を演じていたら、いくら諸事情があろうとも夕子が月に帰ることはなかったかもしれない……いや、歴史を語る上で「もしも」は禁物だ。


 したがって筆者はこう考えることにする。ルナチクスが月を襲撃し、夕子がそれを打倒するために地球派遣されているという事実はM78星雲のウルトラ兄弟であれば当然知っていたハズであり、兄弟たちは彼方から常に夕子を暖かく見守り、ルナチクスが出現したら彼女ひとりでは力不足であろうと加勢するつもりでいたのである。

 だがあるとき彼女が看護婦として務めていた病院があった広島県福山市ミサイル超獣ベロクロンが襲撃した。彼女を守ろうと(あるいは異次元人ヤプールの魔手から地球を守ろうと)地球近くまで来ていたウルトラ兄弟の眼前で夕子とともにひとりのパン屋の青年が危機に陥る。そこでウルトラ兄弟は考えた。本来なら夕子だけに「大いなる力」を与えるかもしくは助成するつもりだったが、やはり女性ひとりでは心細いだろう。この際この青年にも「大いなる力」を与えておけば良いのではないか。ただベロクロンにタンクローリーで突撃してしまうような無鉄砲な奴だから、冷静沈着な夕子と共有して「大いなる力」を持たせるのが最も理想的であるだろう。その方が夕子の願いであるルナチクス打倒にも存分に力を発揮することができるだろう……(あるいは夕子・北斗・エースの三者の引き合わせはウルトラ兄弟の人智すらをも超越した大宇宙の神秘による運命の導きだったのかもしれないが)

 こうしてエースの合体変身は誕生した。つまり最初から月星人である夕子の事情によって生み出されたものだったのだ。従って夕子の事情によって合体変身が解消されてしまったのも必然であり、決して唐突ではないのである。


 本話ではルナチクスは中盤で倒され、後半9分間に渡って夕子と北斗及びTACとの別れがていねいに美しく描かれている。ここに至って星光子氏は演技に「少しは納得ができた」と語っている。あのまま最終回まで満足のできない形で星氏が夕子を演じ続けていたら、彼女にとってもファンにとってもやはり不幸なことであっただろう。今はそう信じるしかない……



<こだわりコーナー>

*冒頭、煌々と輝く中秋の名月の夜空や地上をパトロールするTACの面々のバックにかかる、ロマンチックにして風情ある場面にぴったりなクラシックの流用曲は、ドビュッシーの「月の光」だ。センス抜群! 1890年作曲のベルガマスク組曲の第三曲だとか。石堂脚本の段階での楽曲指示なのか山際監督の指示なのか? 当時は選曲も担当していた音楽の冬木透氏のチョイスか?

 ちなみに95年に東芝EMIから『ウルトラマン世代のためのクラシック入門』(ASIN:B00005GLNV)というCDが発売されたが、『ウルトラセブン』最終回のシューマンピアノ協奏曲をはじめ、第1期ウルトラや『怪奇大作戦』(69年・円谷プロ)に流用された曲ばかりで、「月の光」は収録されませんでした(汗)。

 〜後日付記:奇しくもはるか後年の『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060503/p1)第37話『星座泥棒』でも、このドビュッシーの名曲「月の光」がたっぷりと使われた。

 〜ブログ版付記:名曲「月の光」を無料で聴取したい方は、以下のサイトにてどうぞ。

  http://homepage1.nifty.com/PICCOLO/P-2-27.htm

 〜さらなる後日付記:ちなみに次作『ウルトラマンタロウ』第39話『ウルトラ父子餅つき大作戦』(脚本・石堂淑朗)に夕子がゲスト出演した際には、今度は夕子がピアノを弾きながら月から降りてくる場面から、タロウこと東光太郎(ひがし・こうたろう)とともに、うす怪獣モチロンのもとへと飛び上がる前まで、かなり長くベートーヴェン「月光」が流れている。石堂センセイ、やっぱりロマンチストかも。

 ベートーヴェン「月光」を無料で聴取したい方も、直上のサイトの別ページにてどうぞ。

  http://homepage1.nifty.com/PICCOLO/P-2-29.htm


満月超獣ルナチクスのモチーフは、月が題材ということでなんと白ウサギである。しかしそのアレンジにより醜悪さや凶悪さを感じさせるものとなっている。特に耳が枯れ葉のようなのが荒廃した印象を醸している。そして目つきが悪い(笑)。極めつけは、赤い眼球がそのまま連続して射出される目玉爆弾! しかも射出された直後の眼窩は空洞になっている!(気色悪い・汗) ただし大人になってから視聴すると、ルナチクスが両足でピョンピョンはねるところは意外と可愛い(笑)。

*超獣ルナチクスは年に1度、10月の満月の夜に地底から地表に接近するという。ふだんは地殻マントルの境でマグマを食している(!)。『A』世界ではかつては地球と同じような自然環境だったという地球から分離した妹星の月は、これにより熱を奪われ死の世界と化してしまったのだ。

*ルナチクスの名称は、英語のルナティック(精神に異常をきたしているさま。常軌を逸しているさま。『大辞泉』より)由来だと思われる。もちろんこの言葉自体もルナこと月由来の言葉である。

皆既月食下でバトルが繰り広げられる『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)第34話『ウルトラ兄弟永遠の誓い』の放映日には本当に皆既月食があったが、本話の放映日は中秋の名月の日ではなかったので念のため。


*唐突な展開であることは間違いなしのエピソードではあるのだが、しかし今見返すと、唐突なりにこの話もよく出来ていて面白い。月世界の滅亡の件といいその因縁といい夕子の執着といい、超獣の特殊な生態や設定といい特撮演出(月夜のバトルや地底でのバトル、火山噴火に地崩れなど)といい、月の人間として天女のように軽やかに舞うように走り、イエス=キリストのように湖面にも浮かぶ白衣のドレスを着た南夕子への神秘性あふれる本編演出といい……(その姿を見て、竜隊長をはじめTACの面々は夕子の言葉をスナオに信じたのだった)。

 かたやオープニングにも協力としてテロップされている神奈川県の西部は箱根の強羅温泉(ごうらおんせん)で宿の湯につかるオッサンたちの現金な描写も良い!(超獣が退治されるや、安心してまた一っ風呂浴びに行く! ここらへんの良くも悪くも庶民の俗人的なふるまいを描いて、神秘性の一方で地に足も着かせているのが石堂脚本の特徴だ!・笑)。

 ちなみに夕子がススキの原っぱの斜面を駆けるシーンの場所は、箱根仙石原(せんごくばら)。


 ふだんは天衣無縫で好き勝手にノリ至上で書いている印象が強い石堂脚本だが(それが良いのだけど・笑)、今回ばかりは設定編をそつなく30分にまとめて書いている。石堂脚本による同様の例には『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)第50話(最終回)がある。これは本来は最終回ではない予定だった話数を放映回数合わせで最終回にするよう要請されたものだったとか……


*本話に限らず一般の映画やTVドラマでもよくあることだが、夜間シーンが多いためか、いわゆる映画『アメリカの夜』(73年・フランスイタリア)形式にブルーフィルターをかけることでデイシーンをナイトシーンに見立てる演出が本話では施されている。DVDウルトラシリーズは一応加工や美化はしないで初号フィルムの再現を目指すというタテマエだけど、本話は昔は出演者の顔などが青暗くて画面が見づらいという印象を受けたものだが、DVDでは随分と色補正がされて顔色なども見やすくなっているように見受けられる……

 特撮班の方でも本編班と連絡ができていて、月夜のシーンは夜空を黒ではなく青として映像化している。

*第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』ではウルトラ兄弟の長男ゾフィーと違って地底に潜る技術がないとされたエースだが、本話では難なくルナチクスの潜む地底へ。まあそこはご愛嬌ということで(密かにドコかで訓練してたことにしようよ・笑)。


*夕子とTACの別れの場面に使用された美しい旋律は第52話(最終回)『明日(あす)のエースは君だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070429/p1)においてもエースと子供たちとの別れの場面に効果的に用いられているが、元々は幻の挿入歌『ゾフィのバラード』(作詞・上原正三 補作詞・冬木透)のために用意されたカラオケにメロディを加えたものである。

 なお『A』放映20年後の92年に日本コロムビアから発売された15枚組CD『TSUBURAYA PRODUCTION HISTORY OF MUSIC』において、特別企画としてこの『ゾフィのバラード』に水木一郎によってはじめてこの楽曲に歌入れが行われた(ゾフィー兄さんとアニソンアニメ特撮ソング)の帝王・兄貴こと水木一郎を掛けた人選だと思われる・笑)。現在は廃盤であるが、04年3月にコロムビアミュージックエンタテインメントから発売された『スーパーヒーロークロニクルシリーズ ウルトラマン主題歌・挿入歌大全集III』(ASIN:B0001DD21A)にもこの水木一郎版は収録されている。

 『ゾフィのバラード』初使用例及び、ウルトラ5兄弟勢揃い時のBGMへのフレーズ引用などのうんちくについては、『A』第5話『大蟻超獣対ウルトラ兄弟』評(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)を参照のこと。

 〜ブログ版付記:「ゾフィのバラード」歌入りバージョンを聴取したい方は以下で。

 ・「ゾフィのバラード」

   http://www.youtube.com/watch?v=w0OAwh56gk8&NR

 ・「ゾフィのバラード」水木一郎ライブバージョン

   http://www.youtube.com/watch?v=2eDAwewFVvc&


*78年秋にキングレコードから発売されたLPレコード『サウンド・ウルトラマン パートII』(『ウルトラセブン』海外版主題歌やBGM、第2期ウルトラ作品の名場面や主題歌カラオケなどで構成されていた)にこの第28話の音源が収録されたが、なぜか本話のサブタイトルが『さようなら夕子よ 妹よ』と表記(誤記)されていた。

 それより物議を醸し出したのが、『ウルトラマンレオ』第26話のサブタイトルが『ウルトラマンキングのおくりもの』と題して収録されたことだった。当時の出版物では第26話は『ウルトラマンキング魔法使い』として表記されていることが多かったが、再放送で実際に『おくりもの』のサブタイトルを確認したという声も存在し、その後第26話はプリントによってサブタイトルが2種類存在するという事実が判明した。

 ただし竹書房の『ウルトラマンクロニクル』(97年・ISBN:4812402697)の『レオ』放映リストでは第26話は『おくりもの』の方を採用し、欄外で「26話は一部プリントでは『ウルトラマンキング魔法使い』と表記しているが、同じ竹書房の『ウルトラマン画報〈上巻〉』(02年・ISBN:4812408881)では全く逆になっているなど、未だに一部で混乱を招いている(出版社は同じでも外注したライターが違うからだろうが・笑)。正式なサブタイトルは果たしてどちらなのであろうか?


*ラスト、南夕子の帰還に、姿を見せない月星人たちの合唱や祝福の笑い声がかぶるが、第24話『見よ! 真夜中の大変身』の妖女の笑い声と同様ではないものの同趣向であり、これはマタンゴや悪魔ッ子(『ウルトラQ』)やペロリンガ星人(『ウルトラセブン』)の笑い声がミックスして使われている。『マタンゴ』(63年・東宝)に使用するために東宝効果集団によってつくられた、キノコの怪物・マタンゴの声AタイプとBタイプの混合である。


*『テレビ探偵団』(86〜92年・TBS)で女優・南野陽子がゲスト出演した折、本話が「南野さん想い出の作品」として紹介されたこともあった。


*視聴率22.2%


(了)

(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



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オリオン星人オリオン星人 2006/11/25 17:29 初めまして
夕子降板の考察、興味深く読ませて頂きました
特に「第3クール以降の強化策」は感慨深いですね
ただ…何となく変だなと思う所を2,3点
エース後半から田口、石堂両氏の脚本担当回が増えるのですが
果たして彼等が前半、夕子及び二人の交流をどう描いていたかな?と
彼等の脚本だと夕子は尽くチョイ役なんですよね
特に田口氏は邪魔だと思ってる節がありますし、石堂氏の場合は「田舎者」「あぶれ者」が主役ですから北斗ですらチョイ役
この二人がメインライターとして漕ぎ出す第3クール以降(市川氏は14話で降りてしまっている)
果たして「星司と夕子の心情が流れ、生きたドラマ作りを心がけたい。」を目指す脚本家が居たのかどうか?
エースのDVD13巻にある制作回顧録でも橋本氏は「僕に言わせると夕子降板は熊谷、石堂組の独走(他の意見を聞かず、ひとりよがりの活動をすること)」
山際氏も「来週から一人で変身するんだ!って誰が決めたんだよ(笑)石堂さん勝手に決めるなよ(笑)」
これらの発言に加え、熊谷氏の目指す童話路線(ネット上にも熊谷氏の発言が有りますが)
どうも一部のスタッフには男女合体変身、それに伴う男女のドラマは鬱陶しいと考えが有ったように思えます
それはエース後半まさに熊谷氏の望んだ通り、TAC隊員より子供達、田舎者、馬鹿な大人が主語の童話っぽい話
これが乱発された事からも夕子降板は必然だったように思えます
メインライターである田口氏より、前半助っ人参加っぽい斉藤氏の方が作品のコンセプトを理解してましたね

katoku99katoku99 2006/11/25 19:44 ↑(2006/11/25 17:29)。『メビウス』レオ・ゲスト編が1分後に始まるという時刻に(笑)、コメントをありがとうございます。執筆者に代わって編者がお礼を申し上げます。
> 石堂氏の場合は「田舎者」「あぶれ者」が主役ですから北斗ですらチョイ役
……ハハハ、各所においてもそう評されているようですが、その通りだと思います(そこがまたイイんですけど・笑)。
> エースのDVD13巻にある制作回顧録でも橋本氏は「僕に言わせると夕子降板は熊谷、石堂組の独走(他の意見を聞かず、ひとりよがりの活動をすること)」 山際氏も「来週から一人で変身するんだ!って誰が決めたんだよ(笑)石堂さん勝手に決めるなよ(笑)」
……そう、この発言との矛盾問題が起きるんですよネ。まあコレを真相の決定打にしてもよかったんですが、熊谷・石堂の一存だけで決まったというのも(汗)。まぁあの時代だから絶対ナイとも云い切れないのがアレですが(笑)。
> 夕子は尽くチョイ役なんですよね 特に田口氏は邪魔だと思ってる節がありますし、
……チョイ役の定義にもよると思いますし、個人個人の主観・見解ももちろん尊重する所存ですが、と断った上で執筆者ともまた異なる編者個人の感慨を述べさせていただくと(笑)、個人的には田口氏は初担当の#3前半で夕子にスポット、2本目の#6でも北斗が小山と息子の仲睦まじさを見て「うらやましいなぁ……。俺にはね、親父の記憶がないんだ。まだ赤ん坊のときに死んじまったんだ(照笑)」と述懐したのを夕子が夜間警邏中に夜空を見上げて好感度UP的に反芻するシーンもありますし、『タロウ』『レオ』でのヒロイン描写(特にジレンマ編やアトランタ星人編)などもありますので、そーいう路線であればそーいう方向でものしてみせたろうという予想もしております(汗〜まあ石堂センセは色恋はやる気なさそうだけど・笑)。
 あとオトナなりティーンになると夕子の出番の少なさを残念に感じるようにもなるけれど、一方で子供にとっては変身する片割れヒロインというだけでも各話のドラマ的にはともかく特権的存在感はあったと思うし、子供のころは一方で男女合体変身やヒロインの活躍が内心はともかく(笑)対外的には気恥ずかしかったりもするものなので、これくらいの節度あるデシャばらない存在で結果的にはよかったんではないかな、という気もしています。あくまで結果的にであって、スタッフがそこまで自覚的に作っていたワケではないと思いますが。同じようにティーン以降になると同じく女性隊員である美川隊員の美しさや華がわかってきてハマるけど(笑)、子供のころだとオバサンとは云わないけど歳上すぎてその魅力が理解できてなくて、逆に南夕子のクールな黒髪おかっぱ姿の清楚な少女性ある姿の方により女性性を感じたりもするもので。その点でもやはり子供番組としてもヒロインは南夕子(星光子)が適任だったのではなかったかと……。
 コメントの趣旨とはズレた返答をしつつあり、スミマセン。もちろんご指摘を否定するつもりはありませんし、参考にもなりました。また何かございましたら、ご気兼ねなくご指摘よろしくお願いします。(2006/11/25 19:45)

オリオン星人オリオン星人 2006/11/26 11:23 御返事有難うございます
指摘されると確かに田口氏も結構意識して描いてたのですね
「鳩を返せ!」でも基地で一人悩む北斗に声を掛ける場面も有りました(横顔の影が先行して登場する映像が素晴らしい)
御指摘を受けるまで田口氏の「蟹の呪い」(今野隊員ですら影が薄い)「青春の星」が個人的にイマイチだったのに加え
後半長坂氏を迎えたダン少年編以降、嬉々とした田口氏十八番の少年教育&青年成長っぽい展開を見て
仮に美川隊員の描写が夕子だったとしても、田口氏の本音は
硬派な(男女のドラマが軟派と決め付けるのも何ですが)少年成長物語をやりたかったのではないかな?と
その路線は熊谷氏の願望であった童話路線ならむしろ都合が良く、少年少女を中心に据え、物語を進める事が出来る
田口氏のスタンスは(フライング気味ですが)そんな感じではないかと考えていました
>子供のころは一方で男女合体変身やヒロインの活躍が内心はともかく(笑)対外的には気恥ずかしかったりもするもの
メインの視聴者である子供達の発する、この微妙な想いも田口氏は受け取っていたのかもしれませんしね
こちらの考察を読んだ後、DVD13巻にある制作回顧録をもう一度見直してみたのですが
石堂氏「何か知らないけど僕が勝手にその話を独創(自分一人の考えで物をつくり出すこと)し出したんだよね」(他人の設定を読まないと豪語する彼らしい)
橋本氏「そうそうそう、そうゆう感じあんだよね だから僕から言わせると石堂・熊谷組の独走(橋本氏の意図する意味はコッチだと思う)なんだよね」
この件に関しては橋本氏以外に山際監督も突然の事に驚きを隠そうとせず、
夕子役の星さんも台本を渡され、その内容に驚いたと御自身のサイト内で仰っていますし、
後半田口氏の脚本にも美川隊員の夕子らしい描写(行動を常に共にし、必死になって北斗を庇う)が出てくる
これらを総合して考えると「第3クール強化案メモ」は各スタッフの共通意識として存在はしていた、が
常々やりにくいと思っていた一人の脚本家の突飛な思い付き+童話の中でも「かぐや姫」だけは是非やりたいと思っていた熊谷氏
両者の思惑が合致した結果、あれよあれよトントン拍子に事が決まっていった
自分には今これが最も真相に近いような気がしてなりません

オリオン星人オリオン星人 2006/11/26 11:29 すいません
橋本氏が熊谷氏に発した
「お互い頭が軽くなっていましたしね、そこに付け込まれてw(この独走を認めてしまった)」
石堂氏「(笑)」
このコメントも印象深いです

katoku99katoku99 2006/12/31 13:41 ↑(2006/11/26 11:23・29)。ご返答ありがとうございます。
> 後半長坂氏を迎えたダン少年編以降、嬉々とした田口氏十八番の少年教育&青年成長っぽい展開を見て
……このへんについても異論はないです(笑)。ヒロインも描けるとは思いますが、適性はそちらにあると思います。でも今観ると田口氏の『黒い蟹の呪い』や『青春の星 ふたりの星』も面白いしよくできていると思いますけど(笑)。また直前ならぬ最初のコメントへの亀レスになりますが、
> 前半助っ人参加っぽい斉藤氏の方が作品のコンセプトを理解してましたね
……これも夕子に関する限り、ご慧眼だと思います。ヌルいマニア連中間では斉藤正夫氏にもまだ評価の光が当っていませんが、#19キンガクッパー編や#25スフィンクス編などは、明らかに夕子をクロースアップ、彼女を肉付け・魅力的に描こうとしていましたからね。
 でも、夕子の帰還については……製作者の表層意識の思惑(おもわく)を超えていて、ともに7月7日七夕生まれの宿命を持つふたりは、織姫と彦星の伝説のように別離に至り(年に1回は再会するも)、人々に未練や不条理の想いをいだかせて記憶を残しつづけるのが、人智を超越した星の下の運命だったのです。と云ってゴマカシて終わりにしてみたいと思います(笑)。(2006/11/26 15:35)

みどりみどり 2007/01/02 23:05  目からうろこのAの新説でした。常々、ずっと悩んでおりました。何故、Aは二人に力を与えたのだろうかと。けど、確かに夕子に力を与えたかったのだと考えると全てが納得。そう考えると、大変書きやすいので、このお説を基調に小説を書いていきますね。ありがとうございました。

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