けふのおひる

kogkog2006-03-04

実家で駅弁大会。
1 北海道/ 森駅 いかめし
2 同/深川駅 蝦夷かに釜めし
3 福島県/郡山駅 福島地鶏づくし
4 新潟県/新潟駅 焼きたらこトロ鮭弁当
5 長野県/長野駅 きじ焼丼


1以外、駅弁大会常連でないものから選びました。
5は'77年8月に出会っていらいの再開。雉ではないんですけど、素朴で良き鶏飯です。

食2題

一昨日麦酒宣伝について書いて思い出しました。近刊から。

 ラットを用いた我々の実験では、彼らは例えば清酒やビールをほぼ完璧に飲み分けることができる。(略)。
 我々の実験では、ラットが選ぶビールの銘柄と、人間が極限近くまで大量に飲んだときにまだおいしく飲めるビールの銘柄とがほぼ完全に一致した。

1 伏木亨「人間は脳で食べている」ちくま新書筑摩書房、2005年。ISBN:4480062734
最近多い題名釣り新書の例とは異なり、とりあえず概論書の体をなしてるかという気がしました。
おいしいという感覚を4つに分けて分析。すなわち、生理的な・食文化の・やみつきを誘発する・情報の・という4種。
ただ、書名の命題を十分に論証するにはもっと広汎な領域を対象とせねばなるまい。
1人間は脳で食べている (ちくま新書) 2魯山人の食卓 (グルメ文庫)
2 北大路魯山人魯山人の食卓」グルメ文庫、角川春樹事務所、2004年。ISBN:4758431310
この著者を読むのは初めてにして全篇にわたり我が意を得たりの連続。たとえば。

好きなものでなければ食わぬと、決めてかかることが理想的である。
 (略)。偏食が災いするまでには、口のほうで飽きが来て、転食するから心配はない。

我が余生はこれでいこう。

やまとしうるはしからず

戦艦大和関係文献集。以下本文/


保育園年長組のとき、空き箱の工作でフネを作りました。先生がいうには、
「kogちゃんよくできたねー。何のフネ?センカンヤマト?」
そうか、「センカンヤマト」というフネがあるのか。フネを作ったら「これセンカンヤマトだよ」といえば大人に受けるのかー、と学習したことでした。


小学4年くらいで1.3を読みました。口語訳とは知らず。文語の1.2を読んだのは高2のおわりころでしたか。
学徒出陣で少尉任官した著者が大和特攻から生還、殆ど1日で書き上げたそうです。
占領軍の発禁処分をくらったりして、テクストの異同など諸説あるようですが。
今読み直してみたら、文語や漢文訓読調の様式美が著述の内容に影響を及ぼしていないかという点が気になるかもしれません。


1. 「戦艦大和ノ最期」
 1.1 初版、吉田満創元社、1952年。
 1.2 角川文庫版、吉田満戦艦大和角川書店、初版不詳。改版、同、1995年。ISBN:4041281016
 1.3 口語版、吉田満・寒川光太郎「戦艦大和のさいご」少年少女世界のノンフィクション、偕成社、初版不詳。現行版1983年。


東シナ海で艦の残骸が発見されたのが'85年夏。報じた「NHK特集」をビデオテープに収めてあったはずですが、書庫内行方不明。
海底探索を扱った2.1を当時入手したような気もするけど定かでなく、新版で加筆もあるというので2.2を改めて講読しました。
寄稿の中には大和特攻肯定ともとれる論調もあり。巻末の文献集は戦中の史料や戦後の雑誌なども網羅し貴重と思います。
辺見じゅん氏が角川春樹氏の御姉上とは初めて知りました。


2. 「戦艦大和発見」
 2.2 文庫版、辺見じゅん・原勝洋・編、ハルキ文庫、角川春樹事務所、2004年。ISBN:475843123X
 2.1 初版、辺見じゅん「Yamato!戦艦大和発見!極秘誕生から探索までの全て」Kadokawa books、角川書店、1985年。


大和発見と同じころ文庫化された「男たちの大和」上下巻は購入したまま未読。これも書庫内行方不明です。
同名の映画作品が公開されましたね。未だ見てないんですけど。"koblog"2/19付によると、こばさんの涙腺もゆるんだ由。
3は原作者が映画をもとに小説にしたてたもののようです。乗組員が上陸・帰郷した折の情景が心を打ちます。


そもそもなぜ「男たちの」大和なのか?kuyuさんの「いんさいどあうと・あうとさいどいん」'05/12/22付及びコメント欄で話題になりました。
関連拙稿「大和特攻ほか、史実に関する認識」1/10付
じつは「女たちの」もあったのですね。4.1を改題して文庫化したものです。大和関係は10篇中2篇。改題はカドカワ商法の一環か。
肉親を残して死ぬ者と残される者をともに淡々と描いています。戦闘における生命の危機と銃後の日常をともに見つめるのはつらい。
しかしここから目をそらしてはなるまい。


辺見じゅん
3 「小説 男たちの大和角川春樹事務所、2005年。 ISBN:4758410585
4. 「女たちの大和」
 4.2 文庫版、ハルキ文庫、角川春樹事務所、2005年。ISBN:4758431965
 4.1 初版、「レクイエム・太平洋戦争-愛しき命のかたみに」PHP研究所、1994年。


「提督たちの」もありました。
大和特攻艦隊を率いて艦と運命を共にした提督の生涯を、同世代の敵将スプルアンスとともに描いた5。
歴史小説の範疇のようで、取材は、史実は、などというのは野暮かもしれません。
伊藤は戦前ワシントン駐在武官として情報将校スプルアンスと親交を結び、離任時に「日本はわが国の挑発に乗ってはならない」と囁かれたとか。
伊藤艦隊の出撃を知ったスプルアンスは、大和は主砲で葬るのが礼儀として麾下戦艦部隊に迎撃を命じたが、伊藤が沖縄への航路を欺瞞するため西転したとき、戦艦では深追いになることをおそれて已むなく空母機動部隊による攻撃を容認したとか。
6の主人公臼淵大尉は海軍兵学校出の若手将校で、大和特攻で爆死。出撃前、艦内で吉田少尉ら学徒出陣組と交わされた激論が上掲1.に書き残されています。


5 今野敏「提督たちの大和-小説 伊藤整一」ハルキ文庫、角川春樹事務所、2005年。ISBN:4758432074
6 長谷川卓「死ニ方用意-小説 臼淵大尉」ハルキ文庫、角川春樹事務所、2005年。ISBN:4758432112


5・6とも、将校のリーダーシップとして示唆に富む内容を多く含みます。
挫折はいいが絶望してはならぬ、とか、浅薄にみえるくらいの人生訓さえなぜか心に迫ってきます。
私生活や家族との関係を読むのはやはりやりきれなく悲しい思いがします。


ところで、政治的経済的ビジネス的戦訓を得ようというブーム便乗型というべきものもあります。
7など、専門家でない著者が十分な検証もなく資料をかき集めて書いたさまが伺われるようです。
たとえば、開戦時の日本の海軍力として戦艦2隻とか重巡0隻とか云々っていう論拠には目を疑いました。それって戦中就役した数ではないのかな。
この100年の米世界戦略と日本のとるべき道など説かれても鼻白むばかり。


7 中見利男「巨大戦艦大和はなぜ沈んだのか-大和撃沈に潜む戦略なき日本の弱点」パンドラ新書日本文芸社、2005年。ISBN:4537253436


最後に、「下士官たちの」。
著者は旗艦重巡愛宕乗組、レイテ海戦劈頭で敵潜に撃沈され、艦隊司令部とともに漂流したところ救助され大和に移乗、艦橋見張員として戦闘中重傷を負い生還、仏印終戦を迎え、翌年引揚という壮絶な経験をつぶさに語っています。
この著者ならでは語り得なかった事実も多いと思います。レイテ海戦に関して私の読んだ文献は五指に余ると思いますが、8.・9.で初めて知ったことも多くありました。
愛宕沈没の救助にあたった駆逐艦岸波は司令部を収容した後、多数の漂流者を見捨てて現場を離脱したとか。
狭隘なサンベルナルジノ海峡を夜間突破した折、大和と長門が異常接近、見張の任にあった著者の急報で接触を回避したとか。
サマール沖砲戦では、米空母の撃沈された海面付近を大和が航行したとか。漂流する米兵を狙った機銃掃射が艦長命令で中止されたとか。
ただ、2作目の9.では、自らの体験と伝聞が不分明な点残念です。


レイテ湾突入を目前に栗田長官の下した反転命令は海戦史の謎とされています。当時重巡利根艦長として敵空母砲撃の先陣をきった黛元大佐に著者が再会を果たし、反転は妥当なものであったと意見が一致したという挿話なども9.で紹介されています。
'85年ころは往時の佐官がなおご健在だったのですね。著者もご長命で、'02年に文庫版へのあとがきを著しています。
そういえばかつて新聞社会面の1段訃報欄に栗田元長官の名を見つけて、ご存命であったのかと驚愕しました。'77年秋でしたか。


小板橋孝策
9. 「下士官たちの戦艦大和
 9.1 初版、光人社、1985年。
 9.2 文庫版、「同-戦艦大和下士官たちのレイテ海戦」光人社NF文庫、光人社、1999年。ISBN:4769822243
8. 「戦艦大和いまだ沈まず」
 8.1 初版、 光人社1984年。
 8.2 文庫版、「同-艦橋見張員の見た世紀の海戦」光人社NF文庫、光人社、2002年。ISBN:4769823495


3小説男たちの大和 4.2女たちの大和 (ハルキ文庫) 5提督たちの大和―小説 伊藤整一 (ハルキ文庫) 6死ニ方用意―小説臼淵大尉 (ハルキ文庫) 7巨大戦艦大和はなぜ沈んだのか―大和撃沈に潜む戦略なき日本の弱点 (パンドラ新書) 8.2戦艦大和いまだ沈まず―艦橋見張員の見た世紀の海戦 (光人社NF文庫)