隠し剣秋風抄

藤沢周平「隠し剣秋風抄」を読んだ。山田洋次さん監督作品「武士の一分」の原作「盲目剣谺返し」を含む短編集。
山田洋次さんはこれまで藤沢周平さんの作品を2作映画化してきたが、それまでまったく読もうとは思わなかったし、映画も観ていない。ただ今回の「武士の一分」はざっと聞いたストーリーになんだか惹かれて原作を読みたくなった。

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)

原作では非常に短い一編。映画そのものは観ていないのだが、あおりの宣伝などを見る限りではまったく違う印象であると思う。主人公、三村新之丞も映画で描かれているイメージとは全然違う。全体的に菊地秀行さんの「幽剣抄」シリーズと非常に良く似た雰囲気があって楽しめた。
映画を観ていないので正確なところはわからないが、宣伝通りの作品(これまでの山田洋次さんの作風)であれば、この映画を気に入った人が読むと少しずれを感じるかもしれない。逆に僕のようなタイプの剣客もの好きにはたまらない一冊だと思う。
下級武士の哀しみというのがひとつの根底にあるように思うけれど、僕はこの作品に描かれているような、また「幽剣抄」にあるようなそれがとても気に入っている。もしこれが泣ける映画になるとしたらそれは僕の好きな部分とは少しずれている気がする。

007/カジノ・ロワイヤル

ダニエル・クレイグ主演で大幅にイメチェンを計り、新たにはじまった007、「カジノ・ロワイヤル」を観た。
http://www.sonypictures.jp/movies/casinoroyale/
時間が余って今観に行くなら僕はこれを勧める(娯楽映画として)オススメ。
内容としては超映画批評に書いてあることが僕の感想にかなり一致している。
http://movie.maeda-y.com/movie/00840.htm
僕はもともと007のファンなので贔屓目にみているかと懸念していたが、相方*1もかなり気に入っていたようなのでファンにも一般受けにも良いと思う。ただQは出てこないし、所謂ビックリドッキリメカも出てこないのでああいう感じがなきゃだめというファンにはあれかも。
原作は未読だが、記憶によればカードゲームとはバカラの事だったように思う。映画の中ではバカラではなくフロップ・ポーカー(テキサス・ホールデム)が行われていた。ルールが一般的に認知されているからだろうか。
今回のボンドは本当に良く走る。ピアース・ブロスナンのキザなボンドと比べて、残酷なスパイであり、それでいて超人じみていないボンドはカッコ良い。前田有一さんが書いているとおり、冒頭の追跡シーンは鳥肌もの。映画館で観る価値がある。最後もファンを納得させる終わりかたで良かった。

*1:むりやり観させた「ワールド・イズ・ノット・イナフ」に対して、「セットがちゃっちい。オースティン・パワーズって案外忠実なパロディだったんだね」というコメントを返した人。

玩物草紙

澁澤龍彦さんの後年のエッセイ「玩物草紙」を読んだ。

玩物草紙 (中公文庫)

玩物草紙 (中公文庫)

澁澤さんの本には小編をまとめたものが多いが、こちらは一本一本のエッセイが日常に関する所感だったり、過去の記憶から手繰られてくるもので、澁澤さん自身に触れることができるような珍しいものだと思う。
背表紙の写真も河出文庫のサングラスをかけたみうらじゅんさん風な写真ではなく、眼鏡で物越しやわらかそうなものでなんだか良い意味で不思議な気分になった。

バカの壁

バカの壁 (新潮新書)

バカの壁 (新潮新書)

養老孟司さんの新書「バカの壁」を今さら読んだ。うちに帰ったら置いてあってうかつにも読みはじめてしまったので。あまり感想なし。

千年女優

今敏監督の「千年女優」を観た。2度目。「パプリカ」を観た後で観ると共通している部分の多いことに気がつく。ただこの後、カジノ・ロワイヤルを観に行ったので面白さがぼけてしまってよくわからん。

神秘学オデッセイ

高橋巌さんと荒俣宏さんによるスーパーマニアック対談。

神秘学オデッセイ―精神史の解読 (1982年)

神秘学オデッセイ―精神史の解読 (1982年)

そもそも本それ自体のデザイン(中身の)が僕好みだったので外れることはないなと思っていたが、実際面白かった。知識がおっつかずに理解できない部分も多かったし、僕の意見とあわない部分もあったけれどもとても勉強になって面白い。
社会の教科書(かそれともそれについてくる図録集みたいなやつ)のような感じもあって、ここから興味のわいたところを掘り下げるというのは中々良い気がする。といういくつも気になるトピックが矢のように流れていった。もっと若いときに読みたかったな。
古書で買ったのだが帯付きで、その帯に「普通の本5冊分の内容!」と言ったようなことが書いてあった。中々うまいこと内容を表現している気がする。
なんとなく澁澤龍彦さんの「秘密結社の手帖」から「ハヴァリア幻想教団」(イルミナティ)に関する小節だけ読み直した。

江戸の誘惑

江戸東京博物館で行われていた「ボストン美術館所蔵肉筆浮世絵展 江戸の誘惑」を最終日に観に行った。その日も比較的早い時間に行ったのだが、結構混んでいた。

http://www.asahi.com/boston/

当初は最終日だし混んでいると嫌だなと、止めようかと思っていたが、鳥山石燕の「百鬼夜行図巻」*1も含まれていると聞いて行かざるを得なくなった。内容も中々良くて、他にも「鳳凰図屏風」を含む葛飾北斎の肉筆が数点と豊国の「三代目中村歌右衛門」など中々見ごたえがある。僕にとって北斎は「冨嶽三十六景」よりも肉筆浮世絵の方が印象強かったのでこれを観られたのはうれしい。また娘である応為の作品も美しくて素敵だった。
順番に並んで観るものでは無いのだが、間に人をはさまずに良く観るためには並ばなくてはならない。そのとき僕の前を移動していたのが、美術か美術史かに関わるらしい女子大生2人組だった。彼女たちが「この色使いが」とか「デザインが」と言った話をする中、僕は行きしなに澁澤さんの本を読んでいたせいか、しきりに「この素足が見えているところが良いね」とか「足の指の曲がり方がエロい」と言っていたらとても嫌そうな顔で見られた。
家に帰って林美一さんの本が無性に読みたくなったのだが、引越しの際に売ってしまったことに気がついた。近場の古本屋へ4軒ほど探しに行ったのだが、目当てのものは見付からなかった。残念。

*1:「続・妖怪図巻」に載っている。

山田家の人形焼き

そういえば江戸東京博物館にてお土産がてら宮部みゆきさんお勧めと書かれた人形焼きを購入して食べた。あん入りとあんなしのミックス。
これは山田家の「本所七不思議」をモチーフにした人形焼きでどうやら有名らしい。食べてみると普段安い人形焼きしか食べていない僕にはとてもおいしくて中々びっくりした。狸の形がまた乙女(?)心をくすぐる。また食べたい。
http://e-sumida.gr.jp/yamadaya/