福島みずほ議員の質問主意書

↓一応、こちらからの続きです
http://d.hatena.ne.jp/lovelovedog/20040822#p1


原子力財団に関しては、次のような「質問主意書」があったのでご紹介。
↓財団法人日本原子力文化振興財団のプレスレリーズ「劣化ウラン弾による環境影響」に関する質問主意書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/160/syuh/s160011.htm

質問主意書

質問第一一号

財団法人日本原子力文化振興財団のプレスレリーズ「劣化ウラン弾による環境影響」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十六年八月四日


福 島 み ず ほ   


       参議院議長 扇   千  景 殿

                                                                                                                                                              • -

   財団法人日本原子力文化振興財団のプレスレリーズ「劣化ウラン弾による環境影響」に関する質問主意書

 文部科学省の所管公益法人である財団法人日本原子力文化振興財団(以下「本財団」という。)は、「プレスレリーズNo.111」として、「劣化ウラン弾による環境影響」という表題のパンフレットを作成し、平成十六年六月十五日付けで発行している。このプレスレリーズは、ジャーナリスト向けに発行されているもので、マスコミ報道にも大きな影響を与えるものであるが、「プレスレリーズNo.111」(以下「本プレスレリーズ」という。)は、劣化ウラン弾による健康影響及び環境影響は事実上皆無であるという内容で、その解釈には疑問が多い上に、兵器としての劣化ウラン弾の「安全性」を積極的に広報するものとなっている。
 国際的には、劣化ウラン弾放射能及び化学的毒性による健康影響を引き起こす非人道兵器であることが、国連機関等の中でも指摘され、議論となっているものである。千九百九十六年の国連人権小委員会は、クラスター爆弾生物兵器と並んで、劣化ウラン弾大量破壊兵器・無差別殺傷兵器とする決議を採択し、二千二年の国連人権小委員会においても、劣化ウラン弾は反人道的兵器とみなされている。少なくとも、劣化ウラン弾による環境影響が無いという国際的合意はまだ一度もなされていない。
 ところが、本プレスレリーズは、環境影響はないと断定するのみならず、劣化ウラン弾などの劣化ウラン兵器を妥当なものと解説し、その使用を積極的に肯定している。まるで、米軍による劣化ウラン弾の使用を積極的に支持し、擁護するのが目的であるかのような内容となっている。
 本財団寄附行為第三条によれば、本財団は「広く一般に原子力平和利用に関する知識の啓発普及を積極的に行」うことを目的として設立された団体とされている。劣化ウラン弾核分裂兵器ではないものの、放射性物質を軍事利用するものであることは明白であり、「原子力平和利用」の対極に位置するものである。その使用を積極的に肯定するようなプレスレリーズの発行は、本財団の本分を大きく逸脱した行為と言わざるを得ない。
 また日本は、広島・長崎の被ばくの苦しみを経験し、その上に立って非核三原則原子力の平和利用を国是としてきた。原子力基本法第二条は、「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限」るとの基本方針を定めたはずである。本財団が本プレスレリーズを通して、劣化ウラン弾使用の容認・支持を公然と表明したことは、非核三原則原子力の平和利用という国是に反し、国際的な流れにも逆行している。所管省庁である文部科学省及び政府の姿勢と責任が問われるべき重大問題であると考える。
 よって、以下質問する。

一、本財団の設立目的に照らして、本プレスレリーズは不適当な内容と考えられるが、政府はどのように考えるか、見解を示されたい。

二、本プレスレリーズは原子力基本法の精神からも逸脱したものと考えられるが、一と同様に政府の見解を明らかにされたい。

三、本財団は、文部科学省を所管省庁として、文部科学省経済産業省からの補助金等は年間十億円に上っている。国民の税金が財団収入の約六割を占めるが、その業務について、以下の項目に沿って明らかにされたい。

1 本財団が行っている広報活動、新聞広告、講演会、発行している出版物などすべての活動について、活動項目ごとに詳細を示されたい。また、それぞれの活動項目ごとの二千四年度の予算についても示されたい。
2 本財団が発行するプレスレリーズについて、発行の目的、年間発行回数及び配布先を明らかにされたい。
3 本財団が発行するプレスレリーズの発行責任はどこにあるのか。また、編集体制はどのように組まれ、学術的な検証はだれがどのように行っているのかを明らかにされたい。
4 本プレスレリーズは、どのような目的や経緯で作成されることになったのか。また、だれが発案し、だれが作成を指揮したのか。その責任の所在を明らかにされたい。

四、所管省庁である文部科学省は、米国による劣化ウラン弾の使用について賛成するという立場なのか、その見解を明らかにされたい。

五、日本国内において劣化ウランは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)に基づいた厳重な管理が要求される放射性物質である。当然、劣化ウランを環境中に故意に放出することは犯罪的行為であり、政府自身が私の質問主意書(第百五十六回国会質問第四四号)に対する答弁書において、そのような行為が同法第七十六条の二違反の罪に該当し得るという見解を示している。このように、日本国内では厳格な管理が要求されている劣化ウランであるが、本プレスレリーズの解釈は、この法律の定めと明らかに対立するものではないか。また、日本国内では禁止でも、コソボイラク等では環境中に放出しても安全とする根拠はあるか。

六、多くの研究者・医者の調査やジャーナリストの報道等を通じ、イラクでは子供たちを中心にガン・白血病が増加し、異常出産が多発していることが伝えられているが、本プレスレリーズは、このような深刻極まりないイラクの状況を全く無視している。まず、その現実について、以下の項目に沿って政府の見解を示されたい。

1 政府は、これらイラクでの被害事実について、調査・検討を行ったことがあるか。
2 政府は、今後被害実態についての調査を行う考えがあるか。
3 政府は、これらイラクでの被害事実について、認めないという立場か。調査もせず認めないという立場であれば、何を根拠に否認するのか明らかにされたい。あるいは、既に政府は被害事実を認めているという立場であるなら、その原因は何であると考えているのか、その見解を明らかにされたい。

七、本プレスレリーズは、サマワへ派遣された自衛隊員についても、劣化ウラン弾による健康影響はないと主張する趣旨のようであるが、二千四年四月の「ニューヨーク・デイリー・ニュース」は、サマワから帰還した米兵の尿中から劣化ウランが検出されたと報じている。

1 同じサマワから帰還した自衛隊員について、尿中の劣化ウラン検査などの被ばく調査は行ったのか。行っていないとすれば、その理由は何か。
2 尿中から劣化ウランが検出されたということは、サマワの空気中を漂っていた劣化ウランを含む粉塵を吸い込む等の吸入摂取が考えられるが、同じサマワの空気を吸っていた自衛隊員に被ばくの恐れがないと判断するのであれば、その根拠は何か。
3 今からでも、帰還した自衛隊員について、尿中のウラン濃度の測定等、被ばくの有無を確かめるような精密な検査を行う体制を整えるべきではないか。

八、本プレスレリーズには、「劣化ウラン弾を拾って長期間持ち歩いたり、あるいは劣化ウランの粉末が溜まっている戦車内に入って、舞い上がった粉末を吸い込んで肺にたくさん取り込んだりする場合を除いて、それほど心配のない物質」という記述がある。この記述は、劣化ウランの微粒子が砂嵐によって広範囲に拡散する危険性を示唆するものでもあるが、それを人々が大量に吸入しなければ良いという解釈と読み取れる。これは、体内に取り込まれたアルファ核種による内部被ばくの危険性をあまりに軽視する解釈ではないか。政府の見解を示されたい。

九、本プレスレリーズは、「劣化ウラン放射線量は天然ウランの百分の一」とし、劣化ウランを「最も安全なウラン」と記述している。しかし、放射線量(被ばく線量)の計算の前提となる被ばく条件は具体的に示されていない。天然ウランの放射線量には、ラジウムラドンなど娘核種の存在を計算に加える一方で、劣化ウランについては、濃度、物理的・化学的形態や人体に取り込まれ被ばくさせる具体的な経路を無視するという恣意的な操作が行われている。このような操作は、科学的とはとても呼べないものであるが、政府はこのような解釈を容認するのか。

十、本プレスレリーズは、「放射線は地上一m離れたところから測定するものであり、そのような測定では劣化ウランは検出されない」ことをもって、「通常の測定方法では環境レベルと同じ」と結論づけ、劣化ウランは安全であるとしている。これは、アルファ核種による被ばくの特性を無視した、あまりに非科学的解説である。土壌中のアルファ核種の存在を、一メートル離れたところで検出するためには、そこに何トンの劣化ウランの塊が必要か示されたい。

十一、日本国内の原子力施設において、プルトニウムやウランのような放射性物質によって、ベータ・ガンマ線をほとんど無視しうるようなアルファ核種による汚染が考えられる場合でも、地上一メートルからのベータ・ガンマ線の測定のみをもって安全性を確認することになっているのか。

十二、原子力安全委員会報告書「原子力発電所等周辺の防災対策(平成十二年五月改訂)」によれば、プルトニウム及びアルファ核種の野菜・肉等における摂取制限を、大人十ベクレル毎キログラム、乳幼児一ベクレル毎キログラムとしている。また海外でも一般に、子供の摂取制限の方が大人より厳しくなっている。ところが、本プレスレリーズは、子供の放射線感受性は高いが、食物摂取量・呼吸量が少ないので、劣化ウランの影響は大人と同じであると記述している。国内の安全規制を尊重すべき本財団は、大人と子供では放射線の影響が違うことを知らせ、子供への注意を促す立場にありながら、全く逆の解説を行っているのである。政府は本財団の、このような解説をそのまま容認するのか。

十三、以上、本プレスレリーズの内容の様々な問題点を指摘した。これだけ誤りが多く、なおかつ本財団設立の目的からも離れた本プレスレリーズは、速やかに回収され、廃棄されるべきだと考えるがいかがか。

十四、本プレスレリーズに関連して、本財団の関係者に対し、何らかの処分を行うべきではないか。また、本財団の存在そのものを再検討すべきではないか。

  右質問する。

答弁書が出るまでにはさらにひと月ほどかかると思うので、メモとして。
「財団法人日本原子力文化振興財団」の「プレスレリーズ」に関して、疑問などがある場合には、政府ではなく「財団法人日本原子力文化振興財団」に聞けばいいと思うんですが。


去年の7月にも、福島みずほさんは以下のような「質問趣意書」を出しているので、政府の「答弁書」と併せて転載しておきます。


イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問主意書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/156/syuh/s156044.htm

質問主意書

質問第四四号

イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成十五年七月二十五日


福 島 瑞 穂   


       参議院議長 倉 田 寛 之 殿

                                                                                                                                                              • -

   イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問主意書

 川口外務大臣は、二〇〇三年六月二十五日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会において、「米軍は、今回イラクでそれを使ったかどうかということについては何も言及をいたしておりません。劣化ウラン弾の問題につきましては、これは国際機関でいろいろ調査をしておりますので、我々としては、その国際機関の健康への影響の調査、これを見守ってまいりたい」と答弁し、その他の委員会や場面でも同様の発言を繰り返している。
 しかし、イラク現地に入った専門家やジャーナリストの報告、米軍の文書、報道などを総合的に判断するならば、米軍がイラク戦争劣化ウラン弾あるいはウラニウム弾を使ったことは明白と考えざるを得ない。また、UNEP(国連環境計画)などの国際機関は、劣化ウラン弾あるいはウラニウム弾が使われた場合は、それを放置するのではなく、使用地点、使用量を確認し、劣化ウラン弾の残骸を撤去し、汚染地点の土壌の除去やアスファルトなどによる覆いなどで汚染の拡大を防ぎ、周辺の住民への健康被害調査をすることを要求している。米英軍が対イラク戦争で、大量の劣化ウラン弾あるいはウラニウム弾を使用したことが事実であるならば、イラクの人々や現地に入る人たちの健康被害を最小限に食い止めるための手立てを早急に講じなければならない。よって、以下質問する。

一 劣化ウランは人体に有害な影響を与えるアルファ放射能である。また重金属として人体に対する化学的毒性も持っている。このような物質を環境中にばらまき、一般住民に無差別に被害を与えることは、国際法上も許されない。例えば、一九九六年国連人権小委員会は、劣化ウラン弾は非人道兵器・大量破壊兵器であると決議している。また欧州議会も今年二月、劣化ウラン弾使用禁止の決議を行っている。政府は、これら決議を承知しているか。また、これらの決議を尊重すべきものと考えているか。

二 川口外務大臣は、二〇〇三年六月三十日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会において、「劣化ウラン弾については、国際機関で調査、先ほど申しましたけれども、WHOがし、あるいはUNEPもしております。そして、それぞれの機関の報告において、劣化ウラン弾の人体及び環境に対する影響はほとんどないという結論であったということです。」と答弁している。しかし、最も新しい調査結果であるUNEP・PCAU(国連環境計画・紛争後評価ユニット)のボスニア・ヘルツェゴビナ調査団の報告書(二〇〇三年三月)は、「劣化ウラン弾を集めて処理すること」「汚染地点はアスファルトかきれいな土で覆う」「汚染地点の地図を作る」「健康被害を調査する」などを勧告している。政府はこの国際機関の勧告を承知しているか。また、この勧告を尊重すべきと考えているか。

三 日本国内では、劣化ウランは「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(原子炉等規制法)に規定される核燃料物質として特別な管理の下に置かれている。核分裂性が低いとはいえ、れっきとした放射性物質であり、輸送・貯蔵などの取扱いについても、厳重に法律で定められている物質である。日本で、この劣化ウランを故意に散布した場合、これは犯罪とはならないのか。また輸送中等の過失により、劣化ウランを散布した場合、その劣化ウランはそのままその場所に放置しておいても問題ないとされているのか。

四 二〇〇三年七月一日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会で、参考人として意見陳述した藤田祐幸氏は、委員会で配付した参考人意見陳述書の中で、イラクでの現地調査において、イラク計画省の「建物の周辺で多数の劣化ウラン弾を発見しました。劣化ウラン弾にとってコンクリートは紙のように柔らかいため、ウラン弾は発火せず、弾頭のまま散乱しておりました。建物の中にはさらに多量の弾頭が散乱していることが想像されます。測定すると六マイクロシーベルトほどの放射線を放出しており、環境放射線の百倍ほどの値を示しておりました。」と述べている。藤田氏は、ほかにも多数の劣化ウラン弾頭を発見し、高い数値の放射線を測定している。また、劣化ウラン砲弾で撃ち抜かれた戦車の貫通口から高い数値の放射線を確認している。藤田氏だけでなく、日本や米英の多くのマスコミ関係者、ジャーナリストがイラクに調査入りし、いずれも劣化ウラン弾を発見し、高レベルの放射線を確認している。例えば、米紙クリスチャンサイエンスモニター紙五月十五日に掲載されたスコット・ピーターソン記者による「劣化ウラン弾から千三百倍の放射線を確認」という記事などがある。米軍がイラク戦争において劣化ウラン弾を使用したことを証明する数々の証拠事例について、政府はこれを否定するのか。否定するのであれば、その理由は何か。

五 当事者である米国でも、国防総省及び米軍当局が繰り返し劣化ウラン弾の使用を認める発言を行っている。米軍のジム・ノートン大佐は、イラク現地で、イラク戦争直前の三月十四日のブリーフィングにおいて、劣化ウラン弾タングステンよりも有効なので使うという使用予告とも言える発言を行った。また、三月二十六日の記者会見でも、米中央軍のブルックス准将が、イラク戦争での劣化ウラン使用を認める発言を行った。この発言は、現に米軍がイラクで侵攻作戦を展開中に、その現地司令部による、この侵攻作戦に関する記者会見の場での発言である。この作戦で使用する米軍の兵器への劣化ウラン使用についての質問に、ブルックス准将は「我々の兵器(our munitions)」と答え、その「わずかな部分」としながらも劣化ウランの使用を認めたものである。同じ質問で、イラク市民への影響についてどう考えるかと問われたのに対し、「我々が作戦を遂行するやり方は、戦闘行為を目的とするものとしては安全」と答えている。さらに、同じ記者会見の別の質問で、なぜ今回も劣化ウランを使い続けるのかと問われたのに対し、使っていないと答えるのではなく「我々が使うものは安全と信じる」と答えている。
 複数の日本の主要な新聞社や通信社も、ブルックス准将の発言を劣化ウラン弾の使用を認めたものと報道した。しかるに川口外務大臣は、このブルックス准将の発言を「米軍の保有する劣化ウラン弾」に関するもので使用については言及していないと繰り返し答弁している。これらの発言が劣化ウラン弾の使用を認めたものではないと、川口外務大臣が主張する根拠は何か。

六 米軍の同盟軍である英軍当局自身が米軍による劣化ウラン弾の使用を認めている。例えば英ガーディアン紙は、四月二十五日付けのポール・ブラウン記者の記事で、英国国防省スポークスマンが英軍の劣化ウラン弾使用を認め、その使用場所と使用量の詳細を公表するとともに、米政府にも劣化ウラン弾の使用場所、使用量を明らかにするよう希望すると発言したと書いている。英国自身が劣化ウラン弾使用を認めるとともに米軍による劣化ウラン弾使用を認めている。政府はこの事実を知っているか。この発言を踏まえても、米軍が劣化ウランを使用していないと主張するのか。主張するのであれば、この英国国防省スポークスマンの発言が事実ではないとする根拠を示されたい。

七 米中央軍空軍(USCENTAF)は四月三十日付けで「Operation IRAQI FREEDOM−By The Numbers」という報告書を司令官モーズレイ中将の名で公表した。この報告書の中で、米中央軍空軍は三十ミリ弾三十一万一千五百九十七発を使用したことを認めている。米空軍には三十ミリ砲弾を発射する航空機はA−一〇攻撃機しかなく、この攻撃機の発射する機関砲弾はアメリカ科学者連盟によれば、五発中四発が劣化ウラン弾である(この混合比はコンバットミックスと呼ばれる)。そして一発の劣化ウラン弾は〇・二九九キログラムの劣化ウランを含む。これによれば、米中央軍空軍がA−一〇攻撃機から発射した劣化ウラン弾だけで約七五トンの劣化ウランを含んでいることになる。また、この件について前出の五月十五日付けクリスチャンサイエンスモニター紙のスコット・ピーターソン記者は、中央軍のスポークスマンの公表としてA−一〇が劣化ウラン七五トンを使用したことを認めたと述べ、このことを裏付けている。これらの文書からA−一〇攻撃機だけ取り上げても七十数トンの劣化ウランを使用したことは明らかであると考える。政府はこれを認めるか。もし認めないとすればその根拠を示されたい。

八 前出の参考人招致で、藤田祐幸氏はバグダッドでの硬化目標貫通型誘導爆弾(通称「バンカーバスター」)の爆撃クレーターの中で、通常値の一・五倍の放射能を検出したことを指摘している。このことは貫通型誘導爆弾にも劣化ウランあるいは非劣化のウラニウムが使われている可能性を示している。アフガニスタンではカナダのNGOであるUMRCウラニウム・メディカル・リサーチ・センター)によって、米軍の爆撃地点の風下側の住民の尿から通常の二百倍もの高濃度のウラニウムが検出され、爆撃のクレーターからもウラニウムが検出されている。これは米軍が従来の対戦車兵器以外に、貫通型誘導爆弾でも劣化ウラン、あるいはウラニウムを使っていることを示している。このことによって従来の数倍のウラニウムを環境中にばらまき、住民に健康被害を与えている可能性が大きい。政府はこのような事実を知っているか。

九 英軍当局及びUNEP・PCAUなどの国際機関が述べているように、重大な健康被害を及ぼす可能性がある劣化ウラン弾が使われたならば、その汚染除去と住民への健康被害防止のために、劣化ウラン及びウラニウムの使用量、使用場所、使用兵器の種類について、米軍に公表させる必要がある。政府は、このようなデータの公表と、汚染除去作業、住民への健康調査などを行うよう米国に要求すべきであると考えるが、どうか。もし、それを否定するのであれば、その理由を示されたい。

  右質問する。

これに対する政府の答弁は以下の通り。

参議院議員福島瑞穂君提出イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問に対する答弁書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/syuisyo/156/touh/t156044.htm

答弁書

答弁書第四四号

内閣参質一五六第四四号
  平成十五年八月二十九日

内閣総理大臣 小 泉 純 一 郎   


       参議院議長 倉 田 寛 之 殿

参議院議員福島瑞穂君提出イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

                                                                                                                                                              • -

   参議院議員福島瑞穂君提出イラク戦争における米英軍の劣化ウラン弾使用に関する質問に対する答弁書

一及び二について

 千九百九十六年八月二十九日に国際連合人権委員会の下に設けられていた差別防止・少数者保護小委員会が、劣化ウランを含む兵器等、大量破壊兵器又は無差別に影響を与える兵器の製造及び拡散を制限するよう各国に求めること等を内容とする「人権、特に生命に対する権利の享受のための必須条件としての国際平和と安全に関する決議」を採択したことや、本年二月十三日に欧州議会が、欧州連合加盟国に対し劣化ウラン弾等の使用の一時停止を求めること等を内容とする「不発弾及び劣化ウラン弾の有害な影響に関する決議」を採択したことは承知している。また、国際連合環境計画が、同年三月のボスニア・ヘルツェゴビナにおける劣化ウランに関する調査報告書において御指摘のような勧告を行っていることは承知している。しかし、政府としては、劣化ウラン弾の影響について国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておらず、国際機関等による調査の動向を引き続き注視していく考えである。

三について

 劣化ウランは、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二条第二項に規定する「核燃料物質」に含まれるものとして、同法による規制の対象となっている。
 まず、犯罪の成否については、捜査機関が収集した証拠に基づいて個別に判断すべき事柄であるが、あくまで一般論として申し上げれば、日本国内で核燃料物質を故意に散布した場合において、例えば、核燃料物質をみだりに取り扱うことにより、その原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又はその放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に危険を生じさせたと認められるときは、同法第七十六条の二違反の罪に該当し得る。
 また、製錬事業者等が過失により核燃料物質を散布した場合については、同法第六十四条第一項及びその関連省令に定めるところにより、速やかに汚染の広がりの防止及び汚染の除去等の措置をとることが求められる。

四について

 本年七月一日の衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会における藤田祐幸氏による参考人としての意見陳述の内容については承知している。また、イラク共和国(以下「イラク」という。)内において劣化ウラン弾を発見し、又は高レベルの放射線を確認したとの内容の報道についても承知している。しかし、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)が今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

五について

 本年三月十四日のノートン大佐の会見及び同月二十六日のブルックス准将の会見については承知している。お尋ねのブルックス准将の発言については、米国の軍隊の保有する弾薬のうちに劣化ウランを使用した弾薬がわずかにあることを述べたものであって、米国が今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したことを述べているものではないと理解している。

六について

 本年四月二十五日付けのガーディアン紙の記事及びグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)政府が自国による劣化ウラン弾使用を認めていることは承知しているが、英国政府は、米国の軍隊が使用した兵器については米国の問題であるとの立場であると承知しており、英国が米国の軍隊による劣化ウラン弾使用を認めたとは承知していない。

七について

 米国の中央空軍が本年四月三十日付けで公表した「数量で見るイラクの自由作戦」と題する報告書の中に、イラクの自由作戦において合計三十一万千五百九十七発の三十ミリ機関砲弾が使用されたことが記載されていることは承知しているが、米国が劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

八について

 米国が今回のイラクに対する軍事行動において、一般に「バンカーバスター」といわれているレーザー誘導装置を付けた地中貫通爆弾であるか否かを問わず、劣化ウラン弾を使用したか否かについては承知していない。

九について

 米国政府に問い合わせを行った結果、米国は今回のイラクに対する軍事行動において劣化ウラン弾を使用したか否かについて、今後とも明らかにすることは予定していないと承知している。また、劣化ウラン弾による健康被害等については国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておらず、国際機関等による調査の動向を引き続き注視していく考えである。