映画 「腰辨頑張れ」「夜ごとの夢」

生誕百年特集 映画監督 成瀬巳喜男
147)「腰辨頑張れ」(東京国立近代美術館フィルムセンター) ☆☆☆★★★

1931年 日本 松竹蒲田 モノクロ スタンダード 38分 
監督/成瀬巳喜男    脚本/成瀬巳喜男    出演/山口勇 浪花友子 加藤精一 明山靜江 菅原秀雄 関時男

148)「夜ごとの夢」(東京国立近代美術館フィルムセンター) ☆☆☆★★

1933年  日本 松竹蒲田 モノクロ スタンダード 64分 
監督/成瀬巳喜男    脚本/池田忠雄    出演/栗島すみ子 斉藤達雄 木島照子 新井淳 吉川滿子 坂本武

DVD 「昼下りの情事」「ターミナル」

112)「昼下りの情事・(ニューマスター仕様)」
113)「ターミナル」

昼下りの情事 (ニューマスター仕様) [DVD] ターミナル DTSスペシャル・エディション [DVD]
 共に新品1980円だったので購入。
 112)は「シャレード」と並ぶオードリーの最高傑作の1本。この《ニューマスター仕様》は、遂に「昼下りの情事」のオリジナルサイズでの収録を果たしたことが特筆されるもので、態々本作のスクリーンサイズのこれまでの過程が別紙に書かれていて、好感を持った。とは言え、自分も長らく「昼下りの情事」は初めて観たビデオがシネスコだったので、それがオリジナルサイズだと思い込んでいた。天地の切れ具合等に違和感を感じなかったからだが、本作に複数のサイズが存在すると知ったのは4、5年前の正月にNHK・BSで放送された際にスタンダードサイズ(ヴィスタだったかもしれない。テープがあるのだが出すのが面倒)だったので驚いていたら、流石にスクリーンサイズの帝王森卓也が早速キネ旬で、このオンエアがいかに画期的であるかを書いていて、そこで初めて成り行きを知った。この時期の作品はどちらをオリジナルサイズと呼ぶべきか判断に困るものが多い。ま、両方のヴァージョンを収録すれば良いのだが。ただ、こんなことをしていると、どう考えてもスタンダードでしかありえないものまで、トリミングされている!などと言い出す輩が出てくるから、見分けるだけの見識は持っておきたい。
 113)は無駄に長いスピルバーグにしては凡庸な作品だが、流石に無駄なキャメラの動きや意味の無いショットがないプロの作品に仕上がってはいる。

古本 「映画の学校」「大島渚作品集」「映画評論」

33)「映画の学校」双葉十三郎晶文社
34)「絞死刑 大島渚作品集」大島渚至誠堂
35)「映画評論 1960.10」(映画出版社)

 33)双葉十三郎の代表的著書だが、長らく絶版になったままなので古書店でしか目にすることがない。しかし汚れがキツイものが多いのでこれまで見送っていたが2000円で全く汚れの無い美品であったので購入。
 34)大島の脚本集は「日本の夜と霧 大島渚作品集<増補版>」を持っているが、あれは「愛と希望の街」「青春残酷物語」「太陽の墓場」「日本の夜と霧」「深海魚群」「青春の深き淵より」「叫び」「忘れられた皇軍」「ユンボギの日記」といった初期作が収録されていたが、今回は「日本春歌考」「無理心中 日本の夏」「絞死刑」が収録されている。「日本春歌考」なんて脚本なしのハコ書き程度のものでインしているのだから読めばわかる通り完成台本だ。一時期BGV的にまで何度も繰り返し観た傑作「日本春歌考」に比べて、「無理心中 日本の夏」は一度劇場で観てつまらなかったので以降再見していない。「絞死刑」は大島のベスト作品だが、本作の脚本は「世界の映画作家6 大島渚編」にも収載されているので目新しさはないが、やはり素晴らしい脚本だ。この書で注目すべきは、脚本よりも夫々の作品の撮影前にスタッフに向けて書かれた製作意図とも言うべき一文が収められていることで、大島のアジがやはり素晴らしく高揚させる。2500円。
 35)『新鋭シナリオ特集」と題して「日本の夜と霧」、吉田喜重の「血は乾いている」、今村昌平の「赤い殺意」等収録。400円。

読了 「映画に目が眩んで」

23)「映画に目が眩んで」 蓮實重彦(中央公論社) ☆☆☆☆

 あらゆる『量』に圧倒される。つくづく蓮實関連本は、ま、映芸のインタビューや「映画の神話学」程度は以前から読んではいたが、ここ2年ぐらいで一気に読んで良かったと思う。あんなものを18,9で読んでいれば間違いなくやられて、アノヒトやコノヒトみたいになってしまう。結局自分にとって蓮實重彦は、好き嫌いせずに何でも観ろと啓蒙してくれるヒトという印象だ。新作も旧作も、B級映画も何でも観ろと。その姿勢は絶対的に正しい。