ザワークラウト(ドイツ風キャベツの漬物)のレシピ、作り方、注意点覚書

   
【注1】「ザワークラウト風」ではない、ちゃんと漬ける作り方です。「風」の作り方を知りたい方は、他をご覧ください。
【注2】いろいろ試行錯誤して、逐次部分的に書きなおしています。
2016/2最終更新


Wikipedia ザワークラウト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B6%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%88


左から
1. 塩もみから30分後くらい。だいぶ水が出ているが浸かるほどではない(クリックで拡大)。
2. 漬けてから3日目。左の写真よりさらにカサが減っている。この汁は全部キャベツから出てきたもので、水は加えていない。すでに酸味があり、浅漬けとして食べてもよい。
3. 一週間目。すでに少し食べているので、カサがさらに減っている。
4. 10日目。だいたい完成。瓶詰めに比べるとだいぶキャベツっぽく、歯ごたえがある。

作るメリット

○ビタミン類が豊富
加熱した野菜だと特にビタミンCはほとんど消えてしまう。野菜ジュースなどでも同様。
瓶詰めのザワークラウトも加熱殺菌しているので栄養は少ない(あとからビタミンCを添加しているものも多いよう)。
漬物なら加熱も水に流すこともしないので、ビタミンがそのまま残っているし、乳酸菌によりむしろ増えているらしい。
昔の人はそのために漬物を考えだした。


○保存が利く
生キャベツは買って数日で痛んでしまうので、特に単身だと1/4買っても余らせてしまうことが多い。
漬ければ丸一個でも冷蔵庫に入れれば数ヶ月は持つ。何か付け合せの野菜ないかな、といった時大変重宝。


○安い
瓶詰めだと600gで400円くらいか。水を減らしてぎっしりキャベツが詰まっていることを考えても、一瓶に一玉は入っていないと思う。キャベツは安い時で100円しないので、作った方がずっと安い。


○たくさん食べられる、おいしい
個人的にどうも生キャベツはあまり好きでない。
特にご飯に合わないのが問題。トンカツなどでもカツ → キャベツと来てご飯に行くと、何とも言えない違和感が口に・・・。生キャベツをご飯に乗せたソースカツ丼などは、個人的には論外である。
漬ければやわらかくなり味もあるので食べやすいし、ご飯にも合う。
縮んでいるので生野菜よりたくさん食べることができる。
日本の漬物と違って肉に合うというのもよい。


実際作ってみると瓶詰めと手作りはだいぶ味が違う。瓶詰めは何だか刺身のツマみたいで歯ごたえがない。

材料と容器

○キャベツ1個
発酵ものはある程度の量を作った方が成功しやすいよう。最低でも半個からといわれている。保存がきくしカサが減るので一個くらいは食べられると思う。

白菜でも同様の漬物は出来るらしい。同じアブラナ科の、かなり品種的に近い野菜らしいので、同じような菌が葉につくためと思われる。
(白菜は英語で"Napa cabbage"あるいは"Chinese cabbage" とすることもあるよう。後者はチンゲンサイを指すこともあるらしいけど、あまり表記が統一されていないよう)
白菜1/4程度を鍋の時よりは細めに切るとのこと。唐辛子を入れないキムチのようなものか?


○塩
キャベツの重さの1-2パーセントといわれている。
(ただし外皮や芯を含めた重さ。芯は結構重いので、芯を取ると大玉でも1kg位になってしまう)
中玉一個1kgにつき10g-20gくらい。大玉なら15-30gくらい。夏は痛まないよう多めにした方が良いよう。
(前に少なめでも良いのでは、と書いたけど、やはり少なめだと失敗するところまでは行かなくても、発酵の進み方が安定せず、酸味が強すぎたりアンモニア臭のような物が出たりすることがある。食べても特に問題なかったが、味は落ちる。おそらく塩分を嫌う乳酸菌類=発酵に不要な菌 が残ってしまうせいではないかと思われる。慣れないうちは2%くらいにして、慣れてきてから、どこまで減塩出来るか試してみた方が良いかも)


○香辛料
キャラウェイシードとかがよく使われるよう。お好みで色々。
全然入れなくてもよい。基本はキャベツと塩だけ。
水も一切入れる必要はない。というより水を入れると失敗しやすいので、原則入れてはいけない。


○容器
和平フレイズ 漬物 容器 角型 2L 保存容器 フレッシュランド FR-9280
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B001N2M9LC/
ステマではなく素のURLです)
こういう漬物器が使いやすいか。プラスチック製でバネで圧力をかけるのがやりやすい。
2リットル以上の大きさの広口の入れ物と、重石、間に挟む板があれば何でもよい。あまり外気に触れないよう、フタがあればなおよい。2リットル以上あれば大玉でも塩もみすれば十分入る。
容器に入りきらない時は、余った分は生キャベツとして食べてしまえばいい。
多めに作りたければ3リットル容器がよい。3リットルあれば中玉なら2個入る。
ジップロックに入れるやり方もよく紹介されているが、後述する通り、空気をまめに出せば問題ない。

手順

○キャベツを千切りにする
上手い千切りの仕方は
http://www.youtube.com/watch?v=2CuQ4LbJUN8
など参照のこと。
お好みで大きめに切っても良いかもしれないが、発酵は当然細かい方が進みやすいので、慣れないうちは細かい千切りにしたほうがよい。といっても生キャベツを食べる時ほど細く切る必要はない。
キャベツは原則洗わない。キャベツ表面についている乳酸菌が発酵するらしい。洗うとビタミンCも流れてしまうので、外の皮を捨てるか外側だけざっと洗うくらいでよい。塩分と乳酸菌で殺菌されるので、衛生的には問題ないよう。


○塩で揉む
硬いので揉むというよりゴリゴリ潰すくらいでよい。どのみちクタクタに柔らかくなってしまう。シャモジなどを使ってゴリゴリ押し込んでカサを減らしていく感じでよい。
直前によく手を洗うこと。水が出てくるのでボールの中などでやる。
はじめに上から撒いておいて、しばらく置いてシナッとなってから揉むとやりやすいよう。

塩を水で溶かさないこと。キャベツから出てきた水に乳酸菌が含まれているので、水を加えると菌が薄まってしまい、発酵しにくく、変な菌が出やすくなる。


容器には入らないくらいの大量の刻みキャベツが出来るが、30分くらい置くと山ほどあったキャベツがしぼんで1/3くらいのカサになる。
キャベツから水が染みだして来るが、この水は漬ける時大事だしビタミンCなど豊富なので捨てない。


もし塩を入れすぎても、水を捨てて薄めることは決してしないこと。少しくらい塩っぱいと思ってもそのままにして漬けて、最後に漬かり上がってから水を足すなどして塩分を調節する。
塩加減と、塩もみで出てきた水で、漬かり具合の成否が決まるといっても過言ではない。


○漬ける
染みだして来た水ごと容器に入れ、ギュッと押し込み、圧力をかける。キャベツの外皮を上に載せるというレシピもあるが、フタのない樽などで漬けていた頃の名残りと思われる。漬物器ではなくても問題ない。表皮を使う時は、食中毒防止のため表皮だけはよく洗った方がよい。


圧力でキャベツを完全に浸水させ、空気に触れないようにする。
空気に触れると発酵がうまくいかないし、痛むこともある。


そのまま気温の変化の少ないところに放置。冬は常温、温かい時期はなるべく冷暗所か冷蔵庫に。
発酵初期は雑菌とのせめぎあいなので、どちらかというと温度の低い場所の方が乳酸菌が優位になりやすい。


1日くらいしたらもう一度手で押し込み、気泡を出すとよい。
ある程度浸水した状態になったら、圧力や重石は減らしてよい。液中からキャベツが出ない程度に。
寒い時期でも2-3日くらいすると酸味が出てくる。


この段階で腐敗臭の方が強いようなら失敗の可能性がある。
もっとも、上手く行っていても作成経過で若干の腐敗臭は出るので、あまり心配しなくてもよい。液に浸かって空気に触れていないか確かめ、もう少し様子を見る。

上手くいっていると1-3日目あたりから急速に葉の緑色が落ちていく。汁が白濁して泡が上の方に出ていることが多い。
乳酸菌が優勢にならず腐敗気味だと、緑色がなかなか落ちず、汁は透明に近い状態のままのようだ。
5日以上経っても酸の匂いが優勢にならないなら、失敗した可能性が高い。私も一度失敗したことがある。
特に温かい季節は、失敗したかもと思ってもすぐには捨てず、その後ずっと冷蔵庫に入れたままにすると、再び乳酸菌が活動しやすくなり、うまく発酵することもある。諦めず試してみる価値はある。


どうしてもうまく行かない場合も、あることはある。たいてい温度が高すぎた場合。
汁を全て捨てて、前回作った時の汁と入れ替えてしまうという裏技もある。その後はずっと冷蔵庫に入れてゆっくり発酵させる。


季節によるが、1-2週間くらいで完成。

暖かい時期に漬ける場合 2013/6 後記

真夏など、屋内の最低気温20度以上の季節に漬けるとやはり失敗しやすい。塩分を2%以上など濃い目にするという手もあるが、塩っぱいし、それでもうまくいかないこともあるので、冷蔵庫で作るのが遅いが確実。
乳酸菌は酵母などと違い、寒い場所でもある程度は活動するようだ。


仕込んでからすぐに冷蔵庫に入れてしまう。
2週間くらいかかってしまうが、痛む心配なく確実に作ることができる。
庫内があまり冷えないように出来ればそのほうがよい。野菜室などあまり冷たくならないところがあるならそこに入れる。


それほど暑くない時期なら、漬けてから1-3日くらい冷蔵庫に入れ、乳酸菌が優位になり雑菌が繁殖しにくくなるようにし、その後常温に出してもよい。
半日冷蔵庫に入れ、半日常温に出すといったことを繰り返し、発酵を早めるなど、気候により柔軟に対応してもよい。

カビ? 2015/2追記

容器の周り、汁の少し上あたりに白いカビ状のモヤっとしたものが付くことが多いけど、これは特に有害ではないよう。むしろ発酵がうまく行っている時にこのカビ状のものがよく出るよう。
(塩の結晶でもないようなので、やはり良性のカビではないかと思う。白カビチーズのような味がするのが不思議)
同様に汁の上にカビ状の膜が張ることもあるが、有害ではないカビのよう。
専門家ではないので「これは良いカビ」とは断言できないが、少なくとも今まで私が食べてきて、体調を悪くしたことはない。

乾燥した冬キャベツの場合 2016/2追記

冬キャベツには非常に水気の少ないものがあり、塩でもんでも充分浸水しないことがある。
その場合もすぐには水を加えないで、容器に入れて1-2日冷蔵庫に保管する。その後さらにゴリゴリと強く押し込んでみる。
数mmでも浸水すれば問題ないので、浸水したら常温に戻す。
今まで経験はないが、どうしても浸水しない、非常に乾燥したキャベツの場合は、やむを得ないので浸水させるための最低限の水(煮沸消毒して冷ました水)を加えるしかないか。浸水させないで痛めるよりは、浸水させる方を取るべきだと思う。

重石を乗せる意味

漬物で野菜から水が出てくるのは圧力をかけているからではなく、塩の浸透圧による。昔NHKの番組で塩をまぶさず数百キロの重石を乗せて漬物を仕込んでも、全然水が出なかったという実験があった。


ではなぜ重石を乗せるのかというと、効率良く水分を染み出させるという理由もあるが、野菜から出てきた汁に浸して空気から遮断するという理由が大きい。
漬物で働く乳酸菌は嫌気性(酸素を嫌う)。
一方、野菜を腐敗させる菌は酸素を好むので、空気が間に入った状態だと乳酸菌が働きにくく、腐敗しやすくなる。
重石を載せていれば野菜から気泡が出てきても絞り出され、ほぼ空気に触れず漬物液に浸した状態を保てる。

食中毒

浅漬けで最近O157が問題になったが、それらは調味液で味を付ける漬物もどきで、乳酸菌で発酵する伝統的な漬物ではないらしい。


「生もの」と考え管理しっかりと 浅漬けO157食中毒再発防止
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121019/trd12101907490001-n1.htm

減塩志向も影響?


 伝統的な漬物は、塩分や発酵によって雑菌や大腸菌などの増殖が抑えられることもあり、保存性が高い。一方、今回の食中毒の原因となった浅漬けは野菜を調味液に漬けただけで、塩分濃度が低く、発酵もしていない。


 食品衛生コンサルタントの西村雅宏さんは「昔は、浅漬けといえど塩分濃度が高く、細菌の影響を受けにくかった。今は消費者の減塩志向もあり、塩分濃度が低い。そのため細菌が増殖しやすい。このことを理解していない事業者は少なくない」と指摘する。

酸性弱い「浅漬け」、O157減らない実験も
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=63388
浅漬け Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%85%E6%BC%AC%E3%81%91
漬物で食中毒!!って・・野菜ですよね?
http://oshiete.goo.ne.jp/qa/7653494.html


長期に漬ける漬物では、これらの菌はたいてい乳酸菌により死滅するようで問題なさそう。
もっとも保証は出来ないので自己責任で。
大腸菌は土の堆肥から付くらしいので、表皮は捨てるか、使う場合は表皮だけはよく洗う。中までは洗わないこと。


あと基本的に漬物は冬の保存食で、それは洋の東西変わらないから、夏に作るのはそもそもあまりよいことではないのかも。自然の野菜が手に入るのだし。


ASIN:B00BFXBD8Y:image:small
http://www.amazon.co.jp/dp/B00BFXBD8Y/
テレビでドイツ語 2013.4月号
ザワークラウトの作り方が載っていた。これによると今ではドイツでも市販のものを使うことが多く、自宅で作る人はあまり多くないよう。現代日本で糠床を作る家があまりないのと似たようなものか。