昨日,地方分権改革推進委員会が『第一次勧告』をとりまとめた.福田首相への提出は5月30日とのこと.当日の審議内容と同勧告に対する評価についは,「sunaharayの日記」さんでご紹介されることかと思われるので,本備忘録では,通常とは形式を換えて「特定の事項について,各報道機関がそれをどのように伝え,どのように評価しているのか」*1の観点から,各紙の報道状況をご紹介(五十音順.なお,ご紹介させていただく各紙は,新聞版もあわせて参照しました).
まずは,朝日新聞朝日新聞では,4面と15面で紹介.

 政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は28日、第1次勧告をまとめた。(1)国道や1級河川などで国の事業をできるだけ都道府県に移す(2)都道府県の359事務を市に移す(3)補助金で造られた施設の転用や譲渡を容易にする、が柱。国の権限や事業の移譲では、国の出先機関を見直す今秋の第2次勧告に決着を持ち越す例も多く、勧告でも「延長戦の様相」と総括している。
 政府は6月に全閣僚による地方分権改革推進本部(本部長・福田首相)で、同月中に閣議決定する「骨太の方針08」に書き込む内容を決める。農地転用の許可権限を都道府県に渡すことなど、関係省庁が同意していない項目の取り扱いが焦点になる。勧告では、保育所や老人福祉施設公営住宅の整備基準を自治体が条例で決められるようにすることを明記した。しかし、国道と1級河川は一部の事業を都道府県に移すが、具体案は「2次勧告までに得る」とした。国土交通省は、国が直轄管理する国道の総延長の15%程度、一つの都道府県内に収まる1級河川の約4割の移譲を提示しているが、分権委はその数値の上積みを求めている。国の基準病床数を都道府県が増減する件は「11年度までに結論」とするなど、政府内での論議に歩調を合わせた例も多く、勧告内容に具体性と迫力が欠ける点は否めない。一方で、都道府県から市町村への権限移譲は結論を明示した。人員や財源の移譲については今後勧告するが、権限移譲とあわせて実現すれば自治の現場は大きく変わる。このほか緊急提言として、道路特定財源一般財源化での地方への税源移譲や、消費者行政一元化での自治体への支援を求めた。(今村尚徳)

朝日新聞さんは,国道の維持・管理権限,一都道府県区域内で完結する一級河川管理権限の記載ぶりや結論の年度を例示し「勧告内容に具体性と迫力が欠ける点は否めない」との評価を示す.その一方で,都道府県から市町村への権限移譲に関しては,人員・財源の明記がないことを言及しつつも,「自治の現場は大きく変わる」との評価.そして,新聞版第2面では,保育所の施設基準の緩和,国庫補助対象財産の処分の弾力化が実施された場合の自治体側の対応として,立川市湯梨浜町の実例をもって紹介.これは,読売新聞と同様に,他紙ではない記事であり,「勧告の効果」を表す記事として非常に分かりやすい.また,新聞版15面の「私の視点」で,同委員会委員の露木潤一開成町長の手記が掲載されており,委員の認識として興味深い内容.

次いで,産経新聞産経新聞では,2面と5面で紹介.2面は勧告内容,5面は政治過程,委員会内の過程等に力点

政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は28日、国から地方への権限移譲などを盛りこんだ第1次勧告を決定した。焦点となった直轄国道の扱いについては、管理だけを都道府県に移すとしたこれまでの考えから、国土交通省の「整備と管理は一体」との主張を受け入れる方針に転換した。勧告は30日に福田康夫首相に提出され、政府は6月下旬予定の経済財政運営の基本方針(骨太の方針2008)に反映させる。
 分権委はこれまで、直轄国道の全路線の管理を、人員や財源の移譲を前提に都道府県に移管させる考えを強調してきた。ただ、国の出先機関の見直しを盛り込む第2次勧告が控えていることから、国交省との対立を当面は避け、国交省がいう「約15%の移管対象」をさらに上積みさせていく作戦に方針転換した。丹羽氏も会合後の記者会見で、「国交省が前に踏み出した方針をベースに今後交渉していく。(15%程度の移管を表明した)国交省の回答で終わりとは思っていない」と述べた。
1級河川の管理については、国交省は1つの都道府県内で完結する53水系の40%程度を移管候補に挙げた。これに対し分権委は、都府県境をわずかに越える12水系も含めた計65水系の移管を求めた。農地転用の許可権限をめぐっては、増田寛也総務相若林正俊農水相との間で折衝が続けられたが決着せず、分権委は従来の方針通り、国の関与を廃止して都道府県などに移譲することを盛りこんだ。また、政府が決めた道路特定財源の平成21年度からの一般財源化にあわせた緊急提言として、今年の税制抜本改正時に地方税財源の充実強化をはかるよう国に求めたほか、都道府県の359事務について市を中心に移譲するよう勧告した。分権委は今後、年内にまとめる第2次勧告で出先機関の整理だけでなく税財源の地方移譲についても議論する方針だ。来春には、政府が閣議決定する地方分権改革推進計画に反映させるための第3次勧告(最終報告)をまとめる。

 政府の地方分権改革推進委員会が28日に決定した第1次勧告は、従来の方針を一部転換した「名を捨てた妥協路線」ともいえる。権限移譲に抵抗する霞が関を強硬に批判してきた分権委だったが、1次勧告の段階で対立を先鋭化させるよりも、「本丸」と見据える国の出先機関見直しや地方への税財源移譲を検討する第2次勧告に照準を絞る作戦に転換した格好だ。ただ、当初の意気込みとは裏腹にメッセージ性に欠ける内容となったことに、委員の一部は不満を漏らしており、身内の意思統一も今後の課題になる。(酒井充)
■「譲歩」の背景
 分権委は、移譲に抵抗する関係府省にかなり強硬な勧告を出す−。霞が関の間では当初、こう思われていた。事実、丹羽宇一郎委員長(伊藤忠商事会長)は22日の記者会見で、直轄国道の権限移譲について「(整備までは移管せず)管理の移管で勧告していきたい」と述べ、あくまでも全路線の管理移譲で勝負する立場を強調していた。20日の講演では「役所は、できない理屈の大天才だ」「中央省庁におんぶにだっこではダメだ」と刺激的な言葉を連発させ、地方分権改革の理念を前面に出していた。ところが、28日の1次勧告決定後の記者会見では、整備の移管も条件に管理を移管する考えを表明した国交省を「分権委も本来そうしたいと思っていた。国交省は一歩踏み出した」と、“評価”した。この発言の背景には、国交省が拒否している「管理の移譲」にこだわれば、「決定的な対立」(分権委事務局)となり、今後2次勧告に向けた出先機関の見直しを進める際の支障になると判断したためだった。勧告では、直轄国道の管理枠拡大は今後、国交省地方自治体の協議に委ねるとした。しかし、「15%程度の移管」を国交省がどこまで広げるかは未知数のままだ。1次勧告も「さらなる移管を検討すべきだ」との表現にとどまり、国交省内ではさっそく「分権委は、道路の整備と管理は一体でないと効率も悪く意味がないという実態を知らない」といった挑発的な声も聞こえる。丹羽氏は「国交省地方自治体の交渉を十分ウオッチしていく。場合によっては追加で勧告することもある」と牽制(けんせい)してみせたが、説得性には乏しい印象を与えた。)
■身内から不満も
 1次勧告は関係府省に対し、平成20年度中に勧告の対応状況の報告を求めることも盛り込んだ。ただ「検討に着手」といった表記が目立つことに、委員からも「目標期限に乏しい」「具体的にどれだけ移管されるのか不安だ」との指摘が出るなど、不満もくすぶっている。最終となる第3次勧告の決定は来年春の予定で、1次勧告は「あくまで途中段階に過ぎない」(分権委関係者)との見方もある。1次勧告では、今後国会で焦点となる道路特定財源一般財源化にも積極的に関与していく姿勢を表明した。委員の猪瀬直樹東京都副知事は28日の会合で「税財源の問題を解決しないと(地方分権は)進まない。大胆に切り込みをしていくと予告する必要がある」と指摘。今後の地方税財源確保を目指し、1次勧告にも「国庫補助負担金制度の抜本的見直しを含めた新しい税財政制度を構築」との一文が盛り込まれた。一方で、若林正俊農水相がかたくなに反対する農地転用の許可権限移譲では、分権委は国の関与廃止を求める強硬路線を貫いた。若林氏は27日に増田寛也総務相と3回目の折衝に臨んだ際も、食糧の安定供給のためにも農政は国が責任を負うべきだとの立場から「私には私の意見がある」と突っぱねた。分権委はあえて高いボールを投げ続けることで改革路線を強調したともいえそうだ。来秋にも国会への提出が想定される「新地方分権一括法案」は、分権委の勧告を尊重して策定されることになっている。農地転用でも溝が埋まらなければ、「勧告の内容が強すぎて政府が対応できない事態になる」との葛藤(かつとう)を抱えた分権委は、今後も現実と理想のはざまで存在感が問われることになる。

産経新聞さんは,記事が充実.ただ,上記記事のうち,第一記事の新聞版のヘッダーはウェッブ版とは異なり,「道路移管は15% 地方分権委一次勧告国交省に譲歩」とある.そのためか,委員会では,国交省が主張された国道の「整備と管理は一体」という考え方を尊重し,その代わりに,今後は「約15%の移管対象」の上積みを想定されているとの見通しに若干力点がある模様.また,新聞版第5面(上記第二記事)では,農地転用の許可権限,直轄国道一級河川を取り上げ,府省と委員会との「主張の違い」が図化されており,分かりやすい.また,同記事,府省と委員会,委員会内での見解の相違に力点を置き記載されていることも特徴的.ただ,同記事最終文の「勧告の内容が強すぎて政府が対応できない事態になる」との言及は,同紙の主張か,又は,農水相の主張か,はたまた巷の声かよく分からないことは残念.

第三に,東京新聞東京新聞では2面と5面で紹介.2面は勧告内容,5面は政治過程と委員会内の過程等に力点.

 政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は28日、福田康夫首相への第1次勧告を決定した。30日にも首相に提出する。勧告では、直轄国道と1級河川の一部を都道府県に移譲するよう提言。都道府県の持つ359の事務事業を市を中心に移すことも盛り込んだ。政府はこれを受け、来月20日ごろに全閣僚からなる地方分権改革推進本部を開き、対処方針を決めるが、一部省庁は依然、抵抗しており、調整難航も予想される。焦点だった直轄国道について、分権委は全路線の管理権限を都道府県に移譲すべきだと訴えてきたが、対象区間を限定した上で、整備と管理の権限を一体で移すよう求めた。1級河川は、一つの都道府県内だけを流れる53河川の管理権限を都道府県に移すとともに、ほぼ1府県で完結している12河川も地元が要望すれば移譲すべきだとした。農林水産省が拒否している大規模農地の転用許可権限の都道府県への移譲も盛り込んだ。このほか(1)福祉施設の設置基準撤廃(2)公営住宅保育所の入居、入所要件の緩和(3)都道府県の教員人事権を中核市へ移譲−などが列挙された。また、道路財源の一般化への緊急提言として、地方税財源の充実強化を要請。消費者行政の一元化で、営業停止処分の権限を都道府県に移すよう求めた。

東京新聞さんも,同記事のヘッダーがウェッブ版とは異なり,新聞版1面は「国道の移譲整備・管理一体 分権委勧告 路線は限定的」とある.記載内容は,直轄国道一級河川,大規模農地の転用許可の移譲とともに,福祉施設の設置基準撤廃,公営住宅保育所の入居・入所要件の緩和,教員人事権を中核市への移譲についても例示.同記事では記載されていないものの,新聞版1面では,国庫補助対象財産の処分の弾力化についても言及.国庫補助対象財産の弾力化については,他紙では余り言及されないが非常に重要な勧告事項.また,ウェッブ版にはないものの,新聞版第2面では,地方分権改革が直面する状況を「前門の虎と後門の狼」として捉えることで,委員会が直面している厳しい現状を読み手にとって分かりやすいように解説(各府省と族議員を「前門の虎」,各自治体を「後門の狼」とする.「後門の狼」の視点については,読売新聞でも言及される重要な点).

第四に,日本経済新聞日本経済新聞では,1面と5面で紹介.1面は勧告内容,5面は知事会等からの反応や,専門家の見方を紹介するとともに,第二次勧告以降の課題を解説記事として掲載.

政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は28日、農地転用の許可権限を国から都道府県に移譲することなどを盛り込んだ第1次勧告をまとめた。国が直接管理する道路(直轄国道)や一級河川の一部の整備・管理の移譲も明記した。勧告を踏まえた各省庁の対応について、政府の地方分権改革推進本部(本部長・福田康夫首相)は6月20日をメドに公表する。また、分権委は秋の第2次勧告へ向け国の出先機関の統廃合や地方への税源移譲などの議論を始める。各省庁の抵抗が激しい分野も多く、調整は難航必至だ。

日本経済新聞さんは,農地転用の記載を例として『第一次勧告』がまとまったことを紹介.他紙では,国道,河川を例示とする内容が主であることからすれば,日本経済新聞さんの独自性ともいえる.なお,新聞版第1面の記事では,ウェッブ版の内容を敷衍した内容となっており,国道,1級河川,福祉施設の設置基準,都道府県から市町村への権限移譲についても言及.特に,地方分権推進委員会が整理していた直轄国道の具体的対象を参照しつつ,同勧告の記載ぶりについては「当初はもっと幅広い権限移譲を想定していたとみられ,第一次勧告の段階で後退したとの見方もある」との「見方」があることも紹介.ただ,新聞紙上での言及の限界か,その「見方」の主体が同紙か,委員会委員か,はたまた巷の声かよく分からないことは残念.新聞版第5面の記事では,全国知事会会長及び知事会関係の意見として,自治体側としては一定の評価があるとはしつつも,権限移譲の具体的内容,結論の提出時期が2008年度中であることなどから「調整不足に不満を漏らした」「踏み込み不足」との見解があることも紹介.「権限移譲を裏打ちする地方の税財政基盤の強化と,国の出先機関の廃止・縮小を実現できなければ,一次勧告が示した内容ですら実現が危うくなる」との指摘は重要.なお,新聞版第3面の「きょうのことば」の欄に,同委員会を紹介されている.同欄内に「分権委の勧告に強制力はないが,政府には尊重する義務がある」と記載.この表現ぶりは,地方分権改革推進法第10条の理解としては妥当なのだろうか.政府見解としては,地方分権推進法第11条第1項のように規定はないものの,尊重義務はあるとの考えが示されてもいるが,どのように理解すべきなのだろうか*2.『勧告』の性格を規定するものであるため,興味深い.

第五に,毎日新聞毎日新聞では,2面と5面で紹介.2面は勧告内容,5面は国交省を中心とした交渉結果と今後の政府対応を紹介.

政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長)は28日、国から地方自治体への権限移譲に関する第1次勧告を決定した。国が直轄する国道について、整備・管理の権限を少なくとも15%以上都道府県に移譲するよう求めたほか、都道府県が許認可権限を持つ64法律の359事務を市町村に移譲することを明記した。勧告は30日に福田康夫首相に提出され、政府は6月中に経済財政改革の基本方針「骨太の方針08」に反映させる。勧告は冒頭で「地方自治体を『地方政府』に高めていく」と宣言。「政府に対し、地方政府の確立に向けた地方分権改革の推進を最重要課題と位置づけ、強力に取り組まれることを改めて望む」と求めて、分権に消極的な関係省庁をけん制した。勧告が国から地方自治体への権限移譲を求めたのは計17分野42項目。河川分野では、国が管理する1級河川のうち(1)都道府県の中で流域が収まる水系(2)わずかに他の都道府県に流域がかかる水系−−の計65水系について、管理権限を原則都道府県に移すよう提言。保育所など福祉施設の設備基準も、全国一律となっている最低基準の見直しを求めた。また、道路特定財源一般財源化が閣議決定されたことを踏まえ、税源移譲を含め自治体の税財源の強化を要請。消費者行政一元化に関し、事故が起きた際に立ち入り検査や改善命令、営業停止処分などを行う権限も都道府県に移譲するよう求めた。【石川貴教】

政府の地方分権改革推進委員会丹羽宇一郎委員長)が28日にまとめた第1次勧告は、農地転用の許可権限の移譲や、全国一律になっている社会福祉施設の設備基準の見直しなどで各府省に分権を強く迫っている。半面、最大の焦点となる直轄国道の管理権限では国土交通省と決定的な対立を回避した。今秋の第2次勧告で、地方整備局など国の出先機関の廃止・縮小を目指しているためだが、戦線の先送りで、府省側に巻き返しの猶予を与えたとも言えそうだ。【石川貴教】
地方分権は進めなければいけないと思っている」。冬柴鉄三国交相は19日、首相官邸増田寛也総務相町村信孝官房長官との会談後、余裕の表情をみせた。昨年11月の中間報告に盛り込まれた直轄国道の管理権限の都道府県への移譲に抵抗していた同省は、この日の閣僚折衝で、整備と管理を一体で権限移譲する方針に転じた。整備権にも踏み込むことで改革への協力姿勢を示しながら、「整備には財源が必要で、実際には地方は乗ってこない」と計算した「くせ球」だった。第1次勧告が実現すれば、街路樹の整備や道路の除雪などを自治体が独自に行える路線が増え、住民の利便性は高まる。ただ分権委は最終的に重要な空港・港湾を結ぶ区間も権限移譲の対象に加えたものの、なお8割以上の国道では国の関与が残る可能性がある。これでは地方整備局の廃止・縮小に向けた前提が崩れかねず、分権委は自ら手足を縛った感もある。整備や管理に必要な財源問題の具体策も第2次勧告に先送りされた。道路特定財源の09年度からの一般財源化を見据えた議論は委員の意見が一致せず、「税源移譲を含め地方自治体の税財源を充実強化する方策を講じる」とはっきりしない表現になった。一方、分権委は、農地転用の許可権限を都道府県に移譲することで、自治体が地域の実情に即した開発に乗り出せると期待する。しかし、農水省も強硬だ。若林正俊農相は「食の安全」を盾に拒否。自民党農水族も「効率だけで国と地方を分ける分権は国をつぶす」と抵抗した。丹羽氏は会見で、直轄国道を巡る権限移譲について「風穴は開いたが終わりではない」と評価したうえで、「公務員改革を断行した。地方分権改革も絶対やってもらえる」と福田康夫首相の指導力に強い期待感を示した。
◇政府、来月に対処方針
 今回の地方分権改革推進委員会の取り組みは、地方分権一括法を施行(00年)した第1期改革に続く第2期と位置付けられている。国が地方自治体に業務を代行させる「機関委任事務」の廃止が第1期の目玉だったのに対し、第2期では、国から地方への権限や税財源の移譲が焦点だ。分権委は第1次勧告で国の役割を限定し、年内に出す第2次勧告で、役割を終えた出先機関の廃止・縮小を目指す。政府は第1次勧告を受け、6月に当面の対処方針を策定し、「骨太の方針08」に盛り込む。第1次勧告がどこまで反映されるかが、第2次勧告の成否を左右することになる。推進委は来春、地方の税財源のあり方に関する第3次勧告を出す予定。その後、政府は10年までに分権推進計画をまとめ、「新地方分権一括法案」を国会に提出する。

毎日新聞さんは,新聞版第2面では,そのヘッダーでは国道権限の移譲に関して力点を置きつつも,『第一次勧告』の特徴としては,権限移譲に関しては17分野42項目にあることを紹介.あわせて,『第一次勧告』第4章にいう「現下の重要二課題」と位置づけられた,道路特定財源一般財源化と消費者行政の一元化を紹介.特に,後者の消費者行政については余り他紙では言及されていないことから,枚に新聞の特徴か.上記記事の第二記事(新聞版第4面)において,「8割以上の国道では国の関与が残る可能性」があるとして,『第一次勧告』以降で明確化されるであろう,地方整備局の廃止.縮小論議を進める上では「分権委は自ら手足を縛った感もある」との懸念も示されている.また,産経新聞と同様に,各府省と委員会との議論の経過について,直轄国道一級河川,農地転用,そして,福祉施設の整備基準を取り上げて表化.産経新聞では,「中間的なとりまとめ」の記載も対比できる(なお,新聞版第4面の表には「中間報告」とありますが「中間的なとりまとめ」の表現が適切かと思われます).

最後に,読売新聞.読売新聞では,1面,2面,13面で紹介.1面は勧告内容,2面は,知事への緊急アンケート結果の紹介,15面は実現のためのハードルと「勧告が実現」することでの効果を紹介.恐らく,同紙が今回の報道では最も充実した内容.

 政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は28日、第1次勧告を決定した。国から都道府県への直轄国道の整備・管理一体での大幅な移譲(数千キロ・メートル)や一級河川の管理権限移譲、都道府県から市などへの359件の権限移譲が柱だ。道路特定財源一般財源化する際の地方への税源移譲を含む税財源強化も盛り込んだ。30日に福田首相に提出する。
最大の焦点となっていた直轄国道(約2万1500キロ・メートル)の移譲については、〈1〉一つの都府県内に起点、終点がある〈2〉都道府県庁所在地や人口30万人以上の市を結ぶ区間以外の区間〈3〉重要な港湾・空港と重要都市を結ぶ区間――などを移譲対象とした。一級河川は一つの県内で完結する53水系のほか、隣県に流域が及ぶ12水系についても、自治体が希望する水系は移譲するよう求めた。分権委はこれらによって、11月の第2次勧告で、国土交通省の地方整備局(8局)の縮小につなげる考えだ。農水省が「食料の安定供給のために必要」として拒否している4ヘクタール超の農地転用許可権限については、優良農地を確保する新たな仕組みを構築したうえで、都道府県への移譲を明記した。一方、都道府県から市への権限移譲では、特別養護老人ホーム保育所などの設置認可・指導監督権限のほか、宅地開発、商業施設などの開発行為の許可を盛り込んだ。消費者行政関係では、国から都道府県への立ち入り検査権限の移譲などを明記した。政府は1次勧告について、6月20日をメドに、地方分権改革推進本部(本部長・福田首相)で対処方針を決定。同月下旬にまとめる「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2008」に反映させる考えだ。

読売新聞さんは,直轄国道一級河川の管理権限を例示とし国から自治体への権限移譲,都道府県から市町村への事務権限移譲,そして,道路特定財源一般財源化と地方への税源移譲が同勧告の特徴であることを紹介.なお,同記事にある「分権委はこれらによって、11月の第2次勧告で、国土交通省の地方整備局(8局)の縮小につなげる考えだ」との分析については,新聞版第1面では記載されていない.新聞版第2面にある,緊急アンケートでは,国道・河川の管理権限移譲に対する知事の意向が紹介.回答は35知事.19知事が直轄国道の整備・管理権限移譲を受けるとして,一級河川については15名との結果.また,勧告全体への評価は,14名が「大いに評価できる」,20名が「多少は評価できる」ともある.知事は依然様子見の模様か.また,新聞版第13面では,保育所の施設基準の緩和,公立小中学校の教職員の人事権移譲,一級河川の移譲を例示し,金沢市佐賀県の実例をもって紹介しており,これは,朝日新聞と同様に,他紙ではない記事であり「勧告の効果」を表す記事として非常に分かりやすい.読売新聞では,『第一次勧告』を受けての政府側の動向に懸念を示しており「先はまだ長い.政府が一次勧告の段階で後ろ向きな姿勢を示すようでは第二次地方分権改革は出はなをくじかれ,地方自治体の不信を招くことになるだろう」との見解を示している.

各紙ともに,自治業界に限定されがちな話題を「生活者の視点」に配慮してか,又は,「分かりやすさ」に重点をおいているためか,道路,河川,そして,農地転用等の争点の紹介に注力していることは共通点.そのため,当該勧告内に埋め込まれているポレーミッシュ論点自体が看過されてしまうのではないかという懸念もないことはない.下名の観察対象である「都道府県と市町村間関係」に関して見てみれば,その記載において,「この勧告は第1次地方分権改革において「地方六団体の総意」として要望のあった改革を進めたために不十分に終わった都道府県から市町村への権限移譲を今回実現しようといしているもの」(3頁)という表現がある.この問題提起による論争性は,当該表現では一般の方にはその含意が読み取り難い部分ではないかと思う.

*1:森田朗『制度設計の行政学』(慈学社,2007年)550頁

制度設計の行政学

制度設計の行政学

*2:地方自治制度研究会編『逐条解説 地方分権改革推進法』(ぎょうせい,2007年)140〜141頁

逐条解説 地方分権改革推進法

逐条解説 地方分権改革推進法