【ODA見直し最終案めぐり認識対立】NGO側は「持続的な経済成長」を批判、岡田外相は「日本自身の経済成長のためにもODAを有効に使うべき」

2010年6月18日に行われたNGO外務省定期協議会・全体会において、岡田外相のODA見直しに関する「300日プラン」に基づいて外務省側が取りまとめた「開かれた国益の増進−世界の人々と共に生き、平和と繁栄をつくる−」と題された「ODAのあり方に関する検討 最終取りまとめ(案)」に関して、NGO側と外務省側で「開発協力の重点分野」としての「持続的な経済成長」をめぐり意見の応酬がありました。

 以下の記事によれば、岡田外務大臣は「日本自身の経済成長のためにもODAを有効に使うべき」と明言、民主党の2010年参議院選マニフェストにおける「総理、閣僚のトップセールスによるインフラ輸出 政府のリーダーシップの下で官民一体となって、高速鉄道原発上下水道の敷設・運営・海水淡水化などの水インフラシステムを国際的に展開。国際協力銀行貿易保険、ODAなどの戦略的な活用やファンド創設などを検討します」という基本スタンスを明確にしました。

 NGO側は、第一に、地球温暖化問題の深刻化など環境・資源的な限界性が明らかになりつつある中で、もはや、経済成長を前提としない「発展」のあり方が問われおりODAも「経済成長」を目的としないこと、第二に、資金が限られている中で「選択と集中」を行うとすれば、ODAは貧困問題の解決や格差是正、環境対策など「人間の安全保障」分野にこそ焦点を絞るべきであることなどを繰り返し主張してきましたが、「最終とりまとめ(案)」では「持続的成長」「成長戦略へのODAの活用」などが強調され、NGO側との認識の隔たりが明らかになりました。

 また、協議会の2日前に突然、最終案がNGO側に提示され、パブリック・コメントの募集など広く市民に一般公開されること無く、一部の限られたNGO関係者の意見を聞いたことを以ってNGOや「市民社会」からの意見を聞いたという非民主的な決定プロセスは、この間の民主的なODA政策形成のプロセスを著しく後退させるものであり、この点についても非難が相次ぎました。

 「開かれた」という形容詞が付いたとはいえ、「国益論」の台頭の中で原発・インフラ輸出など「国際援助ビジネス」へと大きく舵を切りつつある日本の援助政策に対して、ODAは何のためにあるのか、「援助」や「開発協力」をめぐる根本的な理念や目的を今一度問い直すことこそが求められているのでは無いでしょうか?

 管理人


(以下、国際協力NGOセンター〔JANIC〕HPより記事転載)

記事掲載HP
http://www.janic.org/news/oda_3.php


(写真:NGO外務省定期協議会・全体会の様子。2010年6月18日、外務省)
出所:JANICのHP
http://www.janic.org/news/oda_3.php


ODA見直し最終案 NGOが意見

日本のODA(政府開発援助)のあり方を検討するNGOと外務省の会議が18日、同省国際会議室で開かれ、外務省が示した最終とりまとめ案について意見が交わされました。

会議には岡田外務大臣と藤村外務副大臣のほか、NGO側からは約70人が出席しました。
NGOを代表して、JANICの大橋正明理事長が、最終案に掲げた開発協力の重点分野のうち「持続的な経済成長」を「環境(へのとりくみ)」に変えてほしいと求めたのに対し、岡田大臣は「ODAを経済支援に投入するのは重要」とした上で、「日本自身の経済成長のためにもODAを有効に使うべき」と述べ、ODAは人道主義に立つべきとするNGO側と、経済成長も重視する外務省との認識の違いを見せました。

このほか、NGO側からは、最終案がまとまった後の「政策の進め方の開示」や「公開の場での議論」を求める意見が出されました。これに対し、佐渡島国際協力局長は「近く外務省として(最終案の)検討結果を公表させていただく。今後も議論しながら中身をさらによくしていきたい」と述べ、今後の政策につなげていく過程で市民の意見を求めていく考えを示しました。

会議では、最終案が示されたのが会議の2日前で、十分な検討時間がなかったとNGOから不満の声があがったことから、岡田大臣の提案を受け、NGOの意見を今月24日まで追加募集することになりました。

この会議は、前回(4/13)会議を引き継いで開催されました。

岡田外務大臣ODA見直しを提案
http://www.janic.org/news/oda_1.php