児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

奈良県「子どもを犯罪の被害から守る条例」の条文

http://www.pref.nara.jp/somu-so/kouhou/sub.htm
http://www.pref.nara.jp/somu-so/kouhou/h1707/gogai13-1-10.pdf
http://www.pref.nara.jp/somu-so/kouhou/h1707/gogai13-21-26.pdf

 子どもポルノの定義については、年齢以外については児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律のパクリなので、これまでの判例(ほとんど未公開)がそのまま使えます。
 自首による必要的減軽免除はいいアイデアだと思うんです。
 でも、自首しても、条例違反の罪は減軽されても、それと科刑上一罪の関係にある罪は減軽されないんでしょうか?

 最初のターゲットは、児童ポルノ販売・提供事件の購入者でしょうね。販売・提供犯人の捜査で証拠収集(特に被害児童の年齢)は完了してますから。奈良県内の購入者は条例の罰則施行までの、最寄りの弁護士に相談することを勧める。全国注目の中で逮捕されると恥ずかしいぞ。条例違反の捜査は奈良県警だけとは限らないから、他府県から購入した場合でも摘発されるし、どこの都道府県警に逮捕勾留されるかもわからない。
 http://www.naben.or.jp/
 なお、奈良地裁の処理件数や条例に対する奈良弁護士会の対応から推測すると、奈良弁護士会児童ポルノに詳しい弁護士はいないと思われ(奈良だけではないが)、奥村弁護士が奈良の詳しい弁護士を紹介することはできない。
 

http://www.pref.nara.jp/somu-so/kouhou/h1707/gogai13-21-26.pdf
第二条
1 子ども  13才に満たない者をいう
4 子どもポルノ 写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次のいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
ア 子どもを相手方とする又は子どもによる性交又は性交類似行為に係る子どもの姿態
イ 他人が子どもの性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触る行為又は子どもが他人の性器等を触る行為に係る子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
ウ 衣服の全部又は一部を着けない子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
十三条 何人も、正当な理由なく、子どもポルノを所持し、又は第二条第四号アからウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。
第十五条 第十二条又は第十三条の規定に違反した者は、三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
2 第十三条の規定に達反して前項の罪を犯した者が、自首したときは、同項の刑を減軽し、又は免除する。

参考までに、法律も。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
第2条(定義)
1 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの

 国レベルで条約の単純所持処罰条項を留保した場合に、自治体レベルではどうなんでしょうか?
 
追記
とりあえず、県庁が載せてる子どもの裸がどうなるかで、線引きわかるんじゃないですか?
http://www.kodomo.pref.nara.jp/13photo/thumbnail.php?id=152
http://www.kodomo.pref.nara.jp/13photo/thumbnail.php?id=134
http://www.kodomo.pref.nara.jp/13photo/thumbnail.php?id=102
http://www.kodomo.pref.nara.jp/13photo/thumbnail.php?id=69
http://www.kodomo.pref.nara.jp/13photo/thumbnail.php?id=56

追記
 提供罪、販売罪の事件では、購入者のリストも証拠で出てくるわけですが、当然ながら奈良県の方も見受けられます。
 タイトルから「子どもポルノ性」が明らかなものもあります。
 お気をつけ下さい。



追記 2012/09/21

奈良県子どもを犯罪の被害から守る条例逐条解説
第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
四 子どもポルノ写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次のいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
ア子どもを相手方とする又は子どもによる性交又は性交類似行為に係る子どもの姿態
イ他人が子どもの性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触る行為又は子どもが他人の性器等を触る行為に係る子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
ウ衣服の全部又は一部を着けない子どもの姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
(平一八条例一二・平一九条例二五・一部改正)
解説
4第4号は、この条例が規制する「子どもポルノ」の定義について規定している。
(1)「電子的方式」とは、半導体、例えばメモリ等に記録する方式で、同方式により記録される具体的なものとしては、USBメモリコンパクトフラッシュ等がある。
(2)「磁気的方式」とは、磁性体に記録する方式で、同方式により記録される具体的なものとしては、ハードディス夕、フロッピーディスク等がある。
(3)「電磁的記録・・・に係る記録媒体」とは、CD-ROM、DVD-ROM、フロッピーディス夕、コンビュータのハードディスク、携帯電話及びデジタルカメラのメモリ等、デジタル方式で記録される記録媒体をいう。
(4)「その他の物」とは、例えば、アナログ方式によるビデオテープをいう。
(5)「子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とは、子どもの姿態を視覚により直接認識することができるものをいい、文字や音声による描写である小説や録音テープは「子どもポルノ」には該当しない。
また、子どもの姿態は、実在する子どもに係るものに限られ、絵画、アニメ、コミック等に描写された想像上の子どもに係るものは、「子どもポルノ」に該当しない。
なお、「実在する子ども」の「実在」とは、子どもの姿態が描写されるに際し、その時、その場所に居た(存在した)ことを意味し、現在の生死及び年齢は問うものではない。
(6)本号アにいう「子どもの姿態」とは、
①子どもを相手方とする性交に係るもの
②子どもを相手方とする性交類似行為に係るもの
③子どもによる性交に係るもの
④子どもによる性交煩似行為に係るもの
の4つの姿態をいう。
例えば、性器等が描写されておらず、又はその部分にぼかしが施されているものであっても、「子どもポルノ」に該当する。
なお、「性交類似行為」とは、実質的にみて性交と同一視し得る態様における性的な行為をいう。例えば、異性問の性交とその態様を同じくする状況下における又は性交を模して行われる手淫・口淫行為、同性愛行為が該当する。
(7)本号イにいう「子どもの姿態」とは、
①他人が子どもの性器等を触る行為に係るもの
②子どもが他人の性器等を触る行為に係るもの
の2つの姿態をいう。
また、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」とは、いたずらに(過度に)性欲を興奮させ又は刺激するものであることまでは要しないが、単に性的な興味を引く程度のものでなく、それを超えるものでなければならない。
(8)本号ウにいう「子どもの姿態」とは、全裸又は半裸の子どもに扇情的なポーズを取らせたような姿態をいう。
全裸又は半裸の子どもの身体の上に、社会通念上人が着用する衣服とは認められないような透明又は半透明の材質により作られた衣装等を着用している場合も、「全裸又は半裸」に当たる。

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(子どもポルノの所持等の禁止)
十三条何人も、正当な理由なく、子どもポルノを所持し、又は第二条第四号アからウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。

解説
【趣旨】
本条は、子どもに対する性的な犯罪を助長する行為の禁止を規定したものである。
【解説】
113歳未満の者を使用して作製された「子どもポルノ」は、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある「有害」、「危険」なものである。
また、「子どもポルノ」は、刑法第176条後段、同法第177条後段に規定される、性的同意が成立しない13歳未満の者に対する「強姦」又は「強制わいせつ」という性的犯罪行為等が記録されたものであり、これらを見たり、見る目的で所持等することは、その性的犯罪行為を容認し、支える行為である。
このように「子どもポルノ」の所持等は、子どもに対する性的犯罪を助長する行為であり、子どもに対する将来の性的犯罪の動機を抑制する観点からも有用であることから、これを規制することとしたものである。
子どもポルノ」の所持等を禁止することは、その流通経路の末端である「需要者」を減少させることにつながり、需要者の減少は、「供給者」である製造、販売等の行為者を減少させ、ひいては「子どもポルノ」の撲滅につながるものと考えられる。
2本条における用語の意義は、次のとおりである。
(1)「正当な理由」とは、正当な業務行為であるなど、社会通念上、相当と認められる事由があることをいい、具体的には、
①警察官、検察官、検察事務官及び裁判官が職務のために所持する場合
②医師、性噌好異常の研究を行う者及び性晴好異常者のケアを行う者が業務行為のため所持する場合
等がこれに当たる。
なお、上記以外の行為についても、社会通念に従い、各事案ごとに行う個別具体的な判断により、正当な理由があると認められる場合がある。
(2)所持」とは、「子どもポルノ」の保管について事実上の支配を及ぼしている状態をいい、自己のために所持するのか、第三者のために所持するかは問題ではない。例えば、自宅において自己の所有するパソコン、携帯電話及びフロッピーディスク等の記録媒体
に、「子どもポルノ」を保存する行為はもとより、県内において「子どもポルノ」を、携帯又は携行する行為が該当し、自宅において保管する行為も「所持」に該当する。
(3)「第2条第4号アからウまでのいずれかに掲げる子どもの姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管」とは、「子どもポルノ」を記録した電磁的記録を、県内に存する他人の記録媒体に保存して、自己の実力支配下に置くことをいい、例えば、県内に存する会社等自宅以外の場所の自己の所有物でないコンビュータに、「子どもポルノ」を記録した電磁的記録を保存する行為がこれに当たる。
3既存法令との関係
(1)児童ポルノ法との関係
第13条は、子どもに対する犯罪を未然に防止する目的のために、子どもに対する性的好奇心を刺激し、ひいては子どもに対する性的犯罪を引き起こさせるおそれがある有害・危険なものである「子どもポルノ」を所持等することを規制するものであり、一方、児童ポルノ法第7条(児童ポルノ提供等)第2項及び第5項は、児童に対する性的搾取及び性的虐待から保護(児童の権利を擁護)するために、有償・無償を問わず、児童ポルノの第三者への提供又は提供目的での所持及び製造等の行為を規制するものである。
このように、両者は、立法の目的、趣旨において異なるものであるが、「提供目的」のみで所持等しているような場合には、児童ポルノ法違反の罪のみが成立し、別途本条例違反の罪は成立しない。
子どもポルノ」を、自己の性的好奇心を満たす目的で所持等する行為と提供目的で所持等する行為が競合するような場合には、本条例違反及び児童ポルノ法違反の両方の罪が成立することがあり得る。
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【趣旨]
本条は、本条例の禁止行為に関する罰則について規定したものである。
【解説】
l第I項は、第12条又は第13条の禁止行為の実効を確保するため、違反者に対し刑罰を科すこととしたものである。
法定刑を「30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」としたのは、本県の他条例及び関連法令における類似の禁止行為に対する罰則や、刑法における他人の身体に直接害を及ぼす罪に適用される罰則の程度などを参考として定めたものである。
2第2項は、第13条に違反して「子どもポルノ」を所持し、又は子どもポルノに係る電磁的記録を保管している者からの当該「子どもポルノ」等の自主的かつ積極的な捜査機関への提出を促して、それらの回収等を図ることにより、「子どもポルノ」の撲滅を目指し、もって子どもに対する性的犯罪を抑止するため、自首した場合においては、必要的に刑を減免する旨を定めたものである。
なお、本項の規定により必要的な刑の減免が受けられるのは、第13条の規定の違反に係る第15条第1項の罪のみであり、例えば、「子どもポルノ」たる児童ポルノを所持していた場合における児童ポルノ法違反の罪については本項の適用はなく、刑法第42条第1項の規定によることとなる。

児童ポルノ製造罪と前提となる行為の罪数(製造罪は性交の罪に吸収されるか?)

 手持ちの未公開判例を整理しました。
 未公開なのになんで持ってるのか? 全部、弁護人だったからですよ。

阪高裁 平成14年9月10日
②被告人は,被害児童の撮影を自己の性欲を満たすために行ったものであり,しかも,被害児童は6歳であるから,暴行脅迫がなくとも,これを裸にして撮影した被告人の行為は強制わいせつの実行行為にあたるところ,強制わいせつ罪は親告罪であり,公訴を提起するには,被害児重ないしその保護者の告訴が必要であるが,本件においては被害児童の保護者は犯人を告訴しない旨供述しているのであるから,強制わいせつ罪より法定刑の軽い児童ポルノ製造罪で起訴して処罰することは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨に反し許されないのに,被害児童の保護者の告訴のないまま起訴した点において(控訴理由第7),・・・原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,というものである。しかしながら,・・・②についは,児童ポルノ製造罪の保護法益は上記第1記載のとおりであり, この処罰の目的は,個人の性的自由を保護法益とする強制わいせつ罪のそれとは異なることは明らかであり,児童ポルノ製造罪が強制わいせつ罪の構成要件の一部とはいえず,また,児童ポルノ製造罪が親告罪とされなかったのは,親告罪とすると,加害者やその背後の組織からの報復を恐れて告訴できなかったり,あるいは保護者に対する金銭的な示談で告訴を取り下げさせたりすることが通常の性犯罪以上に予想され,所期の目的が達成ができないためであり,従って,本件において,被害児童の保護者に被告人を告訴する意思がないのに本件公訴を提起したことは,強制わいせつ罪が親告罪とされている趣旨を潜脱することにはならない。

名古屋高等裁判所金沢支部
平成14年3月28日宣告
第2 控訴趣意中,訴訟手続の法令違反の論旨(控訴理由第4及び第23)について
1 所論は,原判示第2ないし第4の各行為は,被害者らの真摯な承諾なく抗拒不能の状態でされたもので,強姦,準強姦,強制わいせつ,準強制わいせつ罪に当たるとし,いずれについても被害者らの告訴はなく,親告罪たる強姦罪等の一部起訴は許されないから,本件起訴は違法であって訴訟手続の法令違反があるという(控訴理由第23)。
 しかしながら,児童買春罪や児童買春処罰法7条2項の児童ポルノ製造罪(以下,単に「児童ポルノ製造罪」という。)は親告罪ではなく,しかも強姦罪等とは構成要件を異にしていて,児童買春罪等が強姦罪等と不可分の一体をなすとはいえず,原判示第2ないし第4が強姦罪等の一部起訴であるとはいえないから,告訴欠如の如何を論ずるまでもなく(最高裁昭和28年12月16日大法廷判決・刑集7巻12号2550貢参照),所論は失当である。

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日宣告
2 児童買春罪,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪との関係等について(控訴理由第1ないし第6,第16,第18及び第21)
(1)所論は,児童買春罪と児童に淫行をさせる罪とは,行為態様で区別され,後者が成立しない場合に前者が成立するという補充関係にあるとし,本件犯行のように多額の代償を約束して同意を得て性交ないし性交類似行為をするのは児童の純然たる自由意思によるものではなく,児童に淫行をさせる罪に当たり児童買春罪は成立せず,本件各犯行に同罪を適用したことには法令の適用の誤りがあるなどという(控訴理由第1)。
 しかしながら,児童買春罪は,児童買春が児童の権利を侵害し,その心身に有害な影響を与えるとともに,児童を性欲の対象としてとらえる社会風潮を助長することになるため,これを処罰するものであるのに対し,児童に淫行をさせる罪は,国内における心身の未熟な児童の育成の観点から,児童に反倫理的な性行為をさせることがその健全な発育を著しく阻害するためこれを処罰するもので,その処罰根拠を異にし,しかも両罪の規制態様にも差異があることからすると,被告人自身が淫行の相手方になったと認められる場合にあって,その際通常伴われる程度の働きかけを超えて未成熟な児童に淫行を容易にさせ,あるいは助長,促進するといった事実上の影響力を与え淫行をさせる行為をしたと認められるようなときには,両罪に該当することもあり得ると解される。したがって,児童買春罪は常に児童に淫行をさせる罪を補充する関係にあるとする所論は前提において失当である。加えて,多額の対償の供与の約束をして性行為に同意させることが直ちに児童の自由意思を失わせるものとはいい難く,関係証拠によれば,先に述べたとおり(前記第2の1),本件各児童買春行為は対償の供与の約束により児童がその意思によって応じたものと認められるから,法令の適用に誤りはなく(もとより本件事案が訴追裁量を逸脱した起訴であるとは認められない。),所論を採用することはできない。
(2)また,所論は,児童ポルノ製造罪についても,同様に,児童に淫行をさせる罪と補充関係にあって,原判示第3の2の行為は同罪に該当するとし(控訴理由第3),さらにこれを前提として原判示第3の1の児童買春罪と同第3の2の児童ポルノ製造舞とをいずれも児童に淫行させる罪1罪と評価すべき旨主張する(控訴理由第6)。
 しかしながら,児童ポルノ製造罪と児童に淫行をさせる罪とではその構成要件が明らかに異なり,補充関係にあるなどとは到底いえないから(児童買春罪と児童に淫行をさせる罪との関係については(1)で述べたとおりである。),所論は前提を誤っていて失当である(なお,以上に述べたところからすれば,児童買春罪,児童ポルノ製造罪が成立するときには常に児童に淫行をさせる罪が成立するとし,児童買春罪,児童ポルノ製造罪を独立の罰則として制定する必要は全くないなどとする主張(控訴理由第16)も理由がないことは明らかである。)。そして,関係証拠によれば,原判示第2ないし第4の各行為については,児童買春ないし児童ポルノ製造罪が成立すると認められるから,上記各行為につき,証拠上児童に淫行をさせる罪が成立することは明らかであるとし,裁判所には検察官に対し訴因変更を命じ又はこれを促すべき義務があるのにこれをしなかったことに訴訟手続の法令違反(審理不尽)があるなどとの主張(控訴理由第18)も失当であって採用できない。

児童ポルノ製造罪と前提となる行為の罪数(観念的競合か併合罪か)

 これは金沢支部が詳しい。

名古屋高等裁判所金沢支部平成14年3月28日
(3)所論は,原判示第3の1の買春行為がビデオで撮影しながら行われたものであることから,上記児童買春罪と原判示第3の2の児童ポルノ製造罪とは観念的競合となるともいうが(控訴理由第21),両罪の行為は行為者の動態が社会見解上1個のものと評価することはできないから,採用することはできない(なお,所論が原判示第3の2の児童ポルノ製造罪の罪数に関して主張する点(控訴理由第4)は,そもそも本件では被撮影者は1人しかいないのであるから,問題とならない。)。

名古屋高裁金沢支部平成17年6月9日
6 罪数関係の誤りの所論について(控訴理由第8)
所論は,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係にあるか,社 会的に見て一個の行為であるから,牽連犯あるいは観念的競合となり一罪であ るのに,原判決は,これを併合罪としてしており,罪数判断を誤っている,と いうのである。しかし,児童買春の際に児童ポルノが製造されるのが通常であ るとはいえないから,児童買春罪と児童ポルノ製造罪とは,手段結果の関係に あるとも社会的に見て一個の行為であるともいえない。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の裁判管轄に関する判例

 最近、家裁に起訴される事例も見受けられますけど、
 児童福祉法の特別法かもしれないが家裁管轄ではないということでいいですよね。

 判例はこういってますが、弁護人は、児童福祉法違反(淫行させる行為)と児童ポルノ製造罪とが別々に立件された場合は、最近の地裁の裁判例(家裁で審理しちゃった)を指摘して、管轄違いを主張してくださいね。被告人に不利になることは絶対ないし、併合の利益が奪われていることは裁判所も認めていますので。実務の感覚として、別々に裁くのはおかしいと思わないか?

東京高裁平成15年6月4日
第1 管轄違い(刑訴法378条1号)の論旨について(控訴理由第1)
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下単に「児変異春・児童ポルノ禁止法」又は「法」という。)は,児童福祉法の特別法であるから,少年法37条1項の適用を受けるので,本件は家庭裁判所の管轄に属する事件であるのに,地方裁判所に起訴されたものであるから,管轄違いであるというのである。
しかしながら,たとえ,所論のいうように,児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪が,少年法37条1項所定の罪の特別法的性格を有するとしても,同項に限定列挙された罪には該当せず,法律に家庭裁判所の権限に属させる旨の特別の規定がない以上は,その第一審の管轄裁判所は地方裁判所又は簡易裁判所である(裁判所法31条の3第1項3号,2項等)。

阪高裁平成15年9月18日
(1)不法に管轄を認めた違法の主張(控訴理由第20)について
所論は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下,「児童買春児童ポルノ禁止法)」という。)は,児童福祉法の特別法であり,児童買春児童ポルノ禁止法の罪は児童の福祉を害する行為であるから,少年法37条1項の適用を受け,家庭裁判所の専属管緒とされる事件であるのに,地方裁判所に起訴された本件各罪についてこれを看過してなされた原判決には不法に管轄を認めた違法がある,というものである。
しかしながら,少年法37条1項は限定列挙であり,また,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪を家庭裁判所の権限に属させるとする法律の規定も存しないから,児童買春児童ポルノ禁止法違反の罪についての第一審の管轄裁判所は地方裁判所又は簡易裁判所であることは明らかである(裁判所法31条の3第1項3号,2項,24条2号,33条1項2号)。

嘉手納基地の米兵を逮捕 10歳女児に強制わいせつ容疑

 少なくとも、3項児童ポルノ製造罪(「姿態をとらせて」)については認めてることになるよな。
 犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図(性的傾向)の反映として写真を撮るというのも、「わいせつ行為」だから、こっちも否認になってない。 

http://www.asahi.com/national/update/0703/SEB200507030013.html
同容疑者のカメラ付き携帯電話に女児を写した写真が残っていたため、強制わいせつ容疑で緊急逮捕した。
 調べに対し同容疑者は「上着をたくし上げるようには言ったが、胸を触ってはいない」などと否認しているという。