帰京へ

JA8763

 目の前が白くなって目を覚ました。朝日が差している。最終日にしてようやくきれいに晴れ上がった朝を見た。今日は12時にクルマを返却するのでそれまでの勝負となる。朝、例によってターミナルの反対側からJACの格納庫を眺め、風向きを確認した後、一番最初に飛び立つ奄美行きのランウェイを見届ける。RWy34、何処で撮ろうかな。結局お馴染みとなった直角カーブで撮影する。羽田行きの初便、もはや珍しくなってしまったレインボーカラーのA300-600R、JA015D。隣には旧塗装のJA842Cも居てちょっと嬉しかったりする。
 今日は遅延予定も無く順調に飛び立ってゆく。種子島への初便はJA8788が、沖永良部へはJA8763が行った。留置場所からして今日もJA8717、JA8768はお休みらしい。一旦肥薩線を見に行く。今日もキハ28+キハ58が軽やかに坂を落ちてゆく様子を眺める。一度空港に戻る。実は道の駅ではない事が判明したよこでーろに寄り、トイレ休憩をかねて展望台から眺めをチェック。ちょうどMD-81が離陸してゆくところで、順光であれば気持ちよい写真が撮れそうだ。最もYS-11のサイズでは小さくなって厳しいだろう。
 先ほどと同じ場所に戻る。昨日宿で紹介された関西の人が居る。羽田からの初便が来るところだ。JA8978、新塗装機だ。まぁ仕方ないか。今日はいつに無くギャラリーが多い。クルマの駐車台数があれよあれよと言う間に増えていった。何故か宮崎ナンバーが多いけど、都城やえびの辺りからだと鹿児島空港の方が近いんだろうな。
 与論ゆきが離陸してゆく。JA8766。撮影者も増えた。昨日の地元の方とお話。写真も見せて頂く。非常に綺麗な写真だ。地元の利をまざまざと見せ付けられた感じ。
 福岡行きが離陸してこれで終了となる。地元の方には「またいらして下さい。秋から冬は本当に綺麗ですよ」と唆される。う〜ん、仕事が忙しい時期だけど去年も秋〜冬は鹿児島来てないし、捻り出して見ようかな、時間とお金。
 今晩の船、予約をしていなかった。予約センターが平日の昼間だけなので予約しそびれているうちに当日になってしまった。直接電話。特等以外は空いているって。前回小樽→新潟で二等寝台に乗った際に寝台の居心地が悪かったので今日は二等にする。クレジットカードは使えないとクギをさされる。ちょっと痛いな。
 クルマを返却すると12時。走行距離は250キロほど。4日クルマを借りた割には相当少ないけど、空港周辺をうろうろしただけと考えると良く走ったなという気になる。さて、今日は14時過ぎの肥薩線嘉例川から乗りたい。嘉例川までの足は確認しており、空港を13:55に出るバスに乗ればよい。本当は温泉めぐりのバスで入湯券付一日乗車券500円を購入する必要があるけどタクシーに乗るよりは安いから使うことにした。
 それまでは時間がある。最後まで粘るなら12:30の沖永良部、13:35の種子島があるから展望デッキから撮る事も出来るけどレンタカーを返した時点で気分が抜けた。取り敢えずランチビールがいいな。と言う事で気になっていたけどクルマがあるから行けなかったチェコ村なるところに行く。なぜ鹿児島でチェコと言うのは謎だけど、運営主体は酒造会社。地ビール進出でチェコに教えを乞うたらしい。
バレルバレープラハ&ゲン http://www.praha-gen.com/
 チェコ村まで空港から歩く。500mっーけどやっぱりキャリア引っ張りながらだときついね。レストランは混んでいる。ちょっと待って着席。チェコランチとボヘミアンブロンドというビール。ビールは泡まで美味しい。と言うか泡が自慢らしい。ランチ、サラダを出された時に、ドレッシングを飲んで下さいと言われる。メインはシチューだった。もう少し変わったものを食べたかった気もする。食事が終わると13時半近く。結構いい時間になった。帰りは空港までの送迎車に乗せてもらう。

嘉例川から大在へ

 温泉バスで嘉例川へ行く。もう一度あの炭酸泉に入りたい気分もあるし勿体無いけど仕方ない。嘉例川で下車する。特急はやとの風と接続を取る便だった。観光客が溢れかえっている。みんな列車の乗客かと思ったけど半分ぐらいは列車の出発を見送っている。クルマで訪れた観光客だった。その後の吉松ゆきを待つ。観光客が雰囲気が良いと沸き立っている中で列車が到着。乗車するのは自分ひとり。
 吉松ゆきはキハ40の単行。地元のお客さんが概ね1ボックス1〜2人。上り坂で喘ぎながらキハ40は進んでゆく。さっき飲んだビールが廻っているのか睡魔に襲われる。ウトウトしてはATSのピンポンピンポンってチャイムで目が覚める。少しずつ人が降りてゆく。先ほど見送ったはやとの風と栗野で再び行き違うと車内はがら空きになった。終点吉松に着いたときには自分を含めて僅かに二人。
 吉松で切符を買うつもりで窓口に行く。カードは使えないそうな。取り敢えず乗車券だけ現金で買おうかなぁと思ってたら窓口さんがカードなら都城か宮崎で買ってくれと仰る。そういう便法があるのか。こちらとしては有難い申し出なので仰る通りにする。乗り継ぎ列車は先ほどの車両がそのまま都城行きになる。それなら荷物を置いてくれば良かった。構内にはキハ58も居る。出来れば向こうに乗りたかった。
 吉都線、確か前に乗ったのは2000年の夏だったと思う。夕方宮崎から吉松へ直通する列車に乗った。その先、夜の矢岳を越えて人吉にまで行きその先の接続が無かったからバスで熊本へ。熊本からは再び普通列車で博多に着いたのは夜1時近くと言う強行軍。今考えると良くやるよなと思う。赤く染まった吉都線沿線の眺めは素敵だった。
 今度の列車はボックスに1〜2人ぐらい。見た目嘉例川で乗った時の肥薩線より混んでいる。混んでいると言っても十分座れる程度のお客さん。駅ホームの売店はシャッターを降ろして久しいらしい。最初に来たには駅弁売りのおじさんが居たけど、もう駅売りはやめてしまったのだそうな。改札外に出てみる。駅周辺は閑散としている。先ほどはやての風に乗って来た筈の人たちはどこへ消えたのだろう。駅の横にSL記念館が出来ている。町の作った施設で最近開業したらしい。資料館と物販店。軽い食事も出来るようだ。屋根をかぶって保存されているのはC5524。一つ一つを見ている時間は残念ながら無いけど、飲み物と手作りらしいパンケーキを購入。
 列車は軽やかに駆け出した。今度は下り坂なのだろう。夕方に近づき、景色が少しずつ赤みを帯びてくる。谷間に田んぼが広がる。既に田植えは終わっており意外なほど稲は成長している。右側には空港から散々眺めた霧島連山。撮影だけでなく温泉も良かったし、また来たいな、と取りとめも無く考える。えびのや小林でまとまった数の人が乗ってくる。地元の人らしく数駅で降りてゆく。案外と若い人も多い。ただ自分でハンドルを握るであろう年齢の人たちは乗って来ない。どこかの駅ですれ違った列車はキハ28とキハ58の二連だった。二両だと輸送力過剰なのか極めつけに空いている。
 都城に17時丁度に到着。宮崎ゆきは3分の接続。切符は宮崎で買う事にして乗り換える。吉都線から宮崎ゆきに向かう人も10人ぐらいは居て、吉都線〜宮崎と言う使われ方もするんだなぁと感心する。まだまだ捨てた物では無いらしい。都城からは817系の2連。この車両が宮崎に入っているのは知らなかった。今度は車掌も乗っている。途中検札がある。カードで買いたい旨を言ったらスルーパス。結構居るのかね、こういう乗客。途中、対向列車が遅れているとかで、5分ほど待たされる。その遅れを引きずったまま南宮崎日南線が接続待ちだって。こうやって遅れは広がってゆく。
 南宮崎から宮崎の一区間だけがなぜかワンマン運転になり宮崎着。さて切符を買わねばならない。改札口の姉ちゃんに乗車駅証明書を見せてカードで買いたい旨を言うとスルーパス。有難い処置だけど大丈夫か?って気にもなる。一応、窓口できちんと買いました、嘉例川→大在の片道切符。それに宮崎からの自由席特急券特急券津久見まで。駅の放送は特急には車内販売がありませんと繰り返し放送している。時節柄慣れない乗客が多いからなのか、車内販売が無くなって日が浅いのか、時間帯が遅いからたまたま乗務の無い列車なだけなのかは分からない。駅売店で購入をと言うお勧めに従い弁当を買ってホームへ。

【今日の駅弁】椎茸めし \720 宮崎駅弁当株式会社

 割と古くからある弁当だった思います。かしわ飯の上に椎茸。漬物。玉子焼。煮物類。肉団子。デザートのゼリー。かしわ飯は美味しいし、煮物もうれしい。椎茸、もうちょっと肉厚なのを食べたかったな。 
 列車がやって来る。真っ赤な485系だ。外装も内装もすっかり変わっているが年齢は隠しきれない感じだ。餓鬼の頃から散々眺めて来た485系、乗る事だって多かった485系。っーか修学旅行、小・中・高と全部485系で出かけている事にいまさらながら気づいてしまった訳ですが、目の前に今居る485系に懐かしさはあまり感じない。哀れさの方が大きいかな。
 下り特急が遅れており出発が数分遅れる。長距離列車が遅れを持ち込んでいるようだ。車内は空いている。大よそ20〜30人ぐらいの乗車だろう。少し遅れて18時40分過ぎ、出発する。鉄道唱歌のオルゴールにどきっっとする。さすがにこれには懐かしさを覚える。夕景の宮崎がだんだん暮れなずんでゆく。佐土原、高鍋なんて駅で早速降りてゆく乗客もいる。25キロまで300円、と言う特急料金の設定は大きいらしい。太平洋が辛うじて見える。暗い中で並の白さが目立つ。ついでリニアモーターカーの実験線跡。何か別の実験をやっているような話も聞いたけど、既に暗く、高架の影が分かっただけだ。
 日向市ですっかり暗くなる。道路沿いの大型店のネオンだけが分かるようになる。延岡で下車多数。車掌も交代だそうな。乗って来るのは3人ほど。延岡を発車すると外の明かりも見えなくなる。時折駅が浮かび上がるだけ。空いた車内を重い空気が支配している。真っ暗な中を走り続ける姿に夜汽車の雰囲気。485系だった津軽とか、14系の八甲田。無くなってもう13年か。はまなす能登に乗っておきたいなとふと思う。ごみを捨てに席を立ったときに試しに1両に何人居るか数えてみた。14人。5両編成の全体では何人だろう。50人ぐらいかなぁ?
 宮崎で手に入れた時刻表を見ていて気がついた。嘉例川はやとの風に乗っていれば、吉松乗り継ぎで人吉から大分へ向かう九州横断特急に乗れる。大分に着くのは20時半。えらい遠回りな印象だけど案外と早い。予め知っていればそうしたかも知れない。まぁ後の祭り。
 ようやく佐伯に着く。宮崎から2時間近く経っている。10人ぐらい乗って来たので賑やかになる。次はようやく津久見。まだ先は長いけど。津久見で後続の普通列車を待つ。駅の案内が下り特急遅れを告げている。まず485系の3両が現れる。ついで普通列車が到着。457系だ。ここで急行型に乗れるとは思わなかった。列車は極め付けに空いておりボックスに腰を落ち着けるとやっぱり夜汽車のような雰囲気になる。大在って何処だったかなと少し緊張しながら過ごす。

シャトルハイウェイライン

 大在に着く。駅前にコンビニが見えてここで買い物をしようかとも思うけど見送る。タクシーにフェリーターミナルと言ったら混乱する。大丈夫かなと思ったけどシャトルハイウェイラインのと言ったら分かってくれた。道は空いているけど信号が長い。船の姿が見えもうすぐだなと思った後にメーターが上がり始め、こじんまりとした受付に着いた時には\1,200になっていた。廻りに買い物出来そうな所は無く、ターミナル自体も自販機しかない。買い物は大在駅で済ませるべきらしい。
 乗船手続き。待合室は混んでいる。さすがにゴールデンウィークだけど空席はあるようで、予約無しで来ても大丈夫みたい。渡された切符、二等なのに部屋番号が書いてある。場所が指定されているらしい。403号室(13)だって。(13)ってなんだろ。歩きの人は船内まで車で運ぶので案内があるまで待てとの事。23時10分ごろ案内。ワゴン車で運ばれる。今日は乗客が多いから2往復。船の中まで運ばれる。今日はシャトルおおいた。荷物を抱えて階段を上がり船室へ。二等の座敷。枕や毛布といった簡単な寝具が用意されており寝具の上に番号札がある。(13)はその場所を示しているらしい。今は無いミッドナイトのカーペットカーみたいな感じ。性別やらなにやらで部屋を分けているようで単身の男性のみを一箇所に押し込めたらしい。部屋に窓が無く、正直落ち着かない。これなら一等に6000円余計に払う価値ってあるかもね。
 ロビーで飲む人、歯磨きする人、浴室に行く人、買い物する人、交錯して落ち着かない中、船が動き出す。少し揺れる。酒とつまみを買ってくる。酒は多少高め、ジュースとつまみは市価。案外と物価が安い。船の中で溜めた恥辱を書ききってしまいたいけど部屋にコンセントがないなぁ。バッテリー切れになるまで粘って終了。発泡酒500ml缶1本はなんとも無かったけど2本目で強烈に眠くなる。今日は終了だな。